第十一話 猫尽くしと代表者会議
「じゃぁね。がんばってね、にゃんこちゃん」
「がんばるにゃ~」
名残惜しそうに手を振るマリンと一緒に、プチリンと別れて街の中を進む。プチリン、街の子供たちにも人気なようだな……まとわりつかれていやがんの。マリンもメロメロになってたしなぁ。
……中身はたぶんベテラン警備兵なはずなんだが。いやまぁ、それ言ったら、地球でも夢の国ことディズ……おっと、人にぶつかるところだった、スンマセン。
で、なんだっけ。あぁ、中の人の話か。新型機の操者だし、中身はベテランのオッサンなはずなんだよな。いや待てよ、ビーガードって女性操者でも、乗りこなせば男性操者を普通に倒せるから、女性警備兵の可能性も、無くは無い……か? 実際、居たしな、過去の戦場にもとんでもなく強いババアが。バングのオッサンとはまた質の違う強さのババアだったなぁ。
それに何より、中の人がどうこうはともかく、機体人格はビーガードコアに宿ってるから、機体=本人な感じは強いよな、だから、地球の着ぐるみとは、また違うか。……あぁ……着ぐるみか、そうか、なるほどな。
「やるなぁ、ノゾミ。着ぐるみ文化が無いもんな、この世界。そこにあんな、動いて喋れるマスコット的なの出したら、そりゃ受ける」
「え? ……あ、そ、そうそう、狙い通り! ですわ!」
「……ヨウスケさんに指摘されて初めて気が付いたんですね。なんだか想定以上に受けてるなぁ。とか思ってたっぽいです」
「マリンちゃん私には容赦ない! ですの!」
「てへペロ♪」
「可愛いですわねこんちくしょう!」
「仲良さそうで何より。しかし、猫のおまわりさん、か。こっちの世界で迷子になるのは、仔犬ちゃんになるのかね」
「その『猫のおまわりさん』というキャッチコピー、いただきですわ! くふ。ハウンド社が豆柴ハウンドとか出してきても、先行利益はこっちのものですわぁ」
「商魂逞しいこって。でも豆柴ハウンドも、いいかもな。そりゃ街中ではプチリンの方が良いだろうけど、野外活動では豆柴ハウンドの方が頼れそうだし、住み分け出来るんじゃね? 数が居れば大型魔獣やディーガードにも対抗できそうだから、商隊護衛とかに人気が出そうじゃん、荷卸しとかにも便利そうだし」
「なるほど……戻ったらハウンド社に……めもめも」
「さすがですね、ヨウスケさん。……やっぱり、大手玩具メーカーの営業係長……課長になったんでしたっけ。営業課長の息子、だからでしょうか」
「どうだろうな? 自分じゃわからん」とマリンに返す。まぁ、ただ、流行ってほしいとは思っているよ、この『軽ビーガード』。
流行れば都市の警戒網は細かく強くなるし、機体間通信で情報は更に早く届くようになるし。そうなりゃ、危険に対する備えを更に強固に出来る。街外活動する機体が増えて、更に警戒網が強くなれば……もしあのクソヤロウみたいな脅威が来ても、犠牲者が減らせるじゃん。
……まぁ、犯罪に使われる事もあるだろうから、良いことずくめでは無いだろうけど。
にしてもノゾミ……こいつ、自分の持つ技術を公開するのに、自制しているフシがあるよな? ……だって、こいつの知能なら、強いだけの兵器ならもっと簡単に作れそうじゃん。……こっそり作って、自分だけ持ってる可能性あるけど……たとえば『魔導式自爆ドローン』とか平気で考えそう……今度聞いておくか。
お、宿が見えて来た。つーか、宿というよりホテルだな……久しぶりにベッドで眠れそうだ。が、まずは召喚実験か。
「エロイムエッサホイサ、彼方より此方へ、来たれシールドライノ!」
「え、えっと、ふんぐるい、むぐるうなふ、来たれローレライ!」
無理に真似しなくてもいいのよマリン。それにそれ、縁起悪そうだし。失敗したら正気度失いそうというか。
ともあれ、今夜の宿に着いて、亜空間コンテナ内召喚実験であるが……あっさり成功した。まじか。派手なエフェクトもなく、砂粒が集まってシールドライノに、水粒が集まってローレライになったのだ。
……今までの……俺の苦労は……。
「あぁ! ヨウスケさんが膝から!? しっかりして下さいヨウスケさん! 大丈夫です! ほら、そもそも亜空間コンテナ自体がレアですから!」
「ダイジョウブ、ヨウスケツヨイコ、ナイテナイヨ」
「ヨウスケさぁんっ!?」
「……本当に大変だったのですわね、街中での召喚が……取りあえず私もフェリシアに乗りますわね。作戦会議というか、お話合いといきましょう」
亜空間コンテナ自体がレア、か。確かにそうだ。過去を振り返っても、そばに亜空間コンテナがあった事例なんてほぼ無いし、うん、気を取り直そう。
……よし。もう大丈夫。さて、代表者会議というか、作戦会議というか……まぁ、打ち合わせといきますか。
「小芝居は終わったか?」
「おう、お待たせ。んで、ライノ、例のデータの編集は?」
「終わっている。送信しても?」
「あぁ、それな、ノゾミの機体に……フェリシアにだけ送信してくれ、そこから他に回すそうだ」
「了解した」
そんな会話をしながら、ライノに乗り込む。マリンもローレライに文句を言われながら乗り込んでいる。
「マリン、あれやめて。なんか良くないもの呼び出す奴でしょ、あれ」
「う、うん、ごめんねローレライ。……でも、知ってるんだ?」
「知らない。でもわかる」
「わかるんだ?」とライノに聞くと、ローレライの特性だろうな。と言われた。マリンとローレライは歌で繋がってるから、精神感応がうんちゃらかんちゃらとか。「つまり、深くわかり合っているって事だな」と問えば「……まぁ、そうだ」と言われたから、その解釈で良いのだろう、きっと。
あぁ、そうそう、代表者のうちの一人であるピザンは、此処には居ない。が、電話で打ち合わせ時間を伝えたので、太守さんちでジークエーバーに乗ってるはずだ。
「さて、それで、お前にだけ通信開けば良いのか、ノゾミ」
《えぇ、いちいち送信受信テストも必要ありません。各機体の通信や位置情報、許可をしてもらえれば機体状態も集約して運用しますわ》
「やっぱそれ、戦闘指揮車みたいな運用機体なのか」
《そうですわ。では、グループ会話オープンです。ここからの発言はグループメンバー全員に伝わるので、ご注意を》
《ピザンだ……通信塔や専用設備なしで、部隊間のみの通信を可能に、か……これだけで戦術が変わるぞ、クドウ嬢。……以降、戦時通信規定に従い、ノゾミ嬢と呼称する》
《まだ試作機ですけどね。完成品のお買い求めの際はクドウ商会へ。ご予約も承ってますわ》
抜け目ないねぇ、ノゾミも。でも実際、少数精鋭部隊に一機居たら、便利だもんなぁあの機体。……いや、便利どころじゃないか。あれでプチリンの潜入破壊工作部隊とか連携させたら、嫌らしいなんてもんじゃすまねぇよなー。
ピザンなら、というより、軍人ならその辺にもすぐ気が付くだろう……まぁ、とりあえず今考える事ではないか。
「こちらヨウスケ、最初の議題は俺から行くぜ。ノゾミ、各機へデータを回してくれ」
《了解ですわ。ではリシア、仮想サーバー展開、各機にダウンロードを促して下さいな》
《かしこまりました、仮想サーバー展開。通信中の各機、こちらからデータのダウンロードを。……申し遅れました、私はフェリシア、どうぞリシアとお呼び下さい。故あって、ノゾミお嬢様の乗機を務めさせていただいておりますが、本来は王妃護衛隊の所属のB級ビーガードコアでございます。どうぞよしなに》
「あいよ。よろしくな、リシア」と応える。……にしても、B級? これだけ流暢に喋って自我も感じさせるのに、B級なのか? A級進化間近なのか?
……あぁ、王妃護衛隊所属と言ってたか。つまり実戦の機会がほとんど無かったからB級なんだな、きっと。
きっつい戦いを切り抜けると進化する事があるらしいんだよな、ビーガードコア。実際、魔王幹部戦に参加した機体が進化したって話も、そこそこあったようだし。……この辺の進化条件って仮説はたくさんあるけど、ハッキリしたのは無いんだよ。まぁ、証明するのは難しいからなぁ。
ライノですらよくわかってないんだよなぁ……ライノ曰く「私の場合は戦いの中で、気が付いたら進化していた。……あくまで予想だが、進化へ至る道は複数あると考えている」だそうだが。
しかし、王妃護衛隊所属という事は、フェリシアの名はノゾミが付けたんじゃないんだよな。そんな名前の踊る化け猫な格ゲーキャラ居たから、そこから取ったと思っていたけど、違ったか……言語理解スキル通るかな? お、通った……へぇ。そーゆー花があるのか。幸運という意味もあると。幸運が希望を乗せてやってくる、ね。うん、良いコンビじゃん。
……しっかし、言語理解系スキル便利だねぇ、これ持ったまま地球に帰れたら、翻訳者としてだけで喰っていけるな。




