第十話 技術開発大好き希望ちゃん (ノゾミ視点) (後編)
「内緒話は終わりですの?」
「あ、はい、えぇっと、メンテナンスよりは先を急ぐ方が良い、みたいな話になりました」
「ふむふむ。……なるほど、王都からの使者を警戒して、ですわね?」
「そうです。すごいなぁ。ヨウスケさんも、ノゾミさんも、すぐ察しちゃう……」
「私のは単に先を読むのが癖になってるだけですわ。後は、これまでに読んだ本の数でしょうか。ヨウスケさんのは何でしょうね……現場力?」
「馬鹿で間抜けでスケベでお人好し。確かにそうだけど、それ以上に行動力というか、問題に直面した時の判断速度と現場対応力がもの凄い。あと、妙にしぶとくて小器用。死んでないよ、絶対に生きてる。こっちに戻って来たら、側近にスカウトするつもり」とはリョウの言だけど。
……私を天才と呼ぶ人も多いけど、実際の天才はリョウの方なのよね。私は良いとこ秀才だわ。そのリョウがそこまで言うのは、正直珍しいのだけど。実際にヨウスケさんに会って思ったわ。あぁ、確かにこれは対応力の鬼だと。変に小器用だと。
それに、実際に、リョウ達を守るため命を落としたと思っていたら、生きて戻るくらいには、しぶとかったわけだし。……いやね、戻って来ると思わなかったわけじゃないのよ。ただ、楽観的じゃ、マリンちゃんを守れないじゃない。
マリンちゃんに甘い? そりゃ当然でしょうよ。こんな可愛い子、ほっといたら百合の花も枯れるってもんよ。
私がこの世界に来た事に意味があるのなら、重要なファクターである事は想像に難くないし。
……リョウが惚れた子だし、ヨウスケさんが守ろうとした子の一人だし、ね。そりゃ守るわよ。
どうやらマリンちゃんは、武門貴族の庇護下に居るようだから、急いで私が近づいたら、かえって危険。むしろ、私の方が、確実にお荷物になる。と、まずは自身の証明がてらに、独自勢力を作ることに集中したのよ。
お金稼いで、落ち目の商会買収して、シュミッツ社に企画を持ち込んで、ビーガードを一緒に開発しようと口説いたりして。ヒモ付きメイドが送り込まれるの警戒して、ドワーフのグラナを雇って、ストリートチルドレンのココ、マミ、ワンコを拾って育てて……。商会の方には多少は入り込んでいるでしょうけど、それはまぁ仕方ないわね。
なんにせよ、後半は楽しくなっていたのは否定しないわ。こっちの世界に来て半年もしたら、眠れない夜も、家族の写真を見る機会もだいぶ減っていたし。
で、そろそろマリンちゃんに会いに行こうと準備してたら、英雄復活の報よ。
真偽不明だったけど、もし本当なら、と、わりと強行軍したわ……。誰よりも先に合流したかったし、ね。
さて、ヨウスケさんも降りて来たわね……何を話してたのかしらね、シールドライノさんと。
「信頼するなら……アウレリオンかシールドライノかな。ノクスファルクは……信用は出来るけど、信頼となると忠実すぎるのが危うい。ニクスシルヴァも直接戦闘以外でなら十分に頼れる。ローレライは……なんだろう。幼いというか。甘いというか」というのがリョウの評だったわね。
一度ゆっくり話してみたいわね……シールドライノさんとも。
「亜空間コンテナ内に我々を召喚か?……なるほど。面白い発想をするな、ノゾミは。理論的には行けるぞ、むしろ、通常空間への召喚より現界するのは楽だろう。コンテナの破損? 無いな、逆だ、破損させられるほどのエネルギーは出ない。おそらく光柱も発生しない。……S級ビーガードのステルス召喚か……これは、秘匿するべき情報だぞ、ノゾミよ」
と、シールドライノさんのお墨付きをもらったので、じゃぁ試しましょう。と、私が取った宿に移動している。
「大丈夫か? 壊れても弁償とか出来んぞ?」とヨウスケさんは心配してるけど。お金ねぇ。
「魔王討伐の報奨金とか、貰ってないお金あるでしょうに。爵位も貰えるはずですわよ」
「まじで? マリン何かもらった?」
「あ、はい、貴族にとりたてる、子爵の位を。って話はありました。けど、ずーっと先送り状態にしてますね。ヨウスケさんが戻ってから伺います、って。とりあえず、なんかの勲章と金貨はたくさん貰いました」
まぁ当然なのよね、それくらいの報奨は。魔王を封じたのに爵位も貰えないんじゃ、騎士や軍人のやる気無くなるもの。王家や上位貴族としても、首輪をつけたいでしょうし。
とはいえ、子爵は普通じゃ貰えない爵位よね。……マリンちゃんが未婚女性だから、でしょうね。婿入り先が増える、嫁にすれば回収できる。とか考えて、貴族の反対は少なかったんじゃないかしら。
「ちなみにヨウスケさんは伯爵内定済と聞きましたわ。……いわゆる死後追贈、二階級特進なノリと思って良いと思います」
「マジか。そんなん貰ったら、立ちションも出来んくなっちまうなぁ」
「昭和の盗塁王ですか。まぁ、この国だと、贈る、受け取る。という儀式が無いと正式叙爵ではないそうです。けど――」
一般的に伯爵はかなり高位ですわよ。公爵はこの国では実質、準王族のようなので上から二番目です。おそらく異例中の異例ですわ。そもそも貴族の地位は、そうポンポン貰えるものではないはずですもの。……まぁ、地球とは地位の扱いが違う可能性もありますが。
でも、調べた限りでは、この国の伯爵は、要職につける地位ですわ。あるいは軍事に口出しできる可能性もありますわよ? どうします?
そう、軽く脅してみる。調子に乗りやすいタイプにも見えるから、一応ね。さて反応は……。
「まーじーかー……お金だけ貰えたりせんかな? 貴族とか面倒なの勘弁だなー……名誉伯爵とか無いんかな? 貴族のちょっかい跳ね除けられる程度の権力ならありなんだがなぁ」
ふむ。欲は否定しない。でも、変に気負わない、楽で居たいのスタンスは崩さない。最後のは……ちらっとマリンちゃん見ながら言ったわね。なるほど、なるほど。
遊間ヨウスケさん。信用出来るとか、信頼して良いとか、そういうタイプではないわね、この人は。いわゆる良い人、友達で居ると楽しいってタイプだわ。
心の中で、ノゾミポイントをまた一つ進呈しながら、門をくぐり防壁の中に入ると、かわいらしいデザインの小型ビーガードが迎えてくれた。
「外出券を拝見しますにゃ。……おかえりにゃーん」
「ほいただいまー……ってちょっと待てい。何この、なに?」
ふふ、驚いてる驚いてる。イタズラ成功って所かしら。
3メートルに届かない全高、白黒ハチワレ猫なカラーリング、猫型ビーガードのリンクスをデフォルメしたようなデザイン、肩にはもちろん、パトライト。
「うふ、工藤商会とシュミッツ社との合作、都市防衛・警備・防犯用小型ビーガード、プチ・リンクス。略してプチリンですわ!」
大きく強い、大事よね。でも、逆の需要もあるのよ。つまり、小・少・軽・短・美。偉大なおやじさんの言葉だわ! 小さなビーガード、大きな未来! ハウンドが一番売れてる? なら、犬より愛される猫を! って企画を持ち込んで、シュミッツ社を口説いたのよ!
日本人なら、まず魔改造! 定番は小型軽量化でしょう!? 既存技術の組み合わせで、開発期間半年と少し! 使ってもらえばわかる便利さ! 路地にも入れる、架線をくぐれる、細い水路なら飛び越えられる!
これを3機ほど、コンテナに入れてきたのよ。個体識別名は01ニャコム、02ニャルソック、03セントニャル!
……みたいな事を。割と自信満々で説明したわ。だって我ながらよくできてると思うもの!
「いやいや、既存技術の組み合わせでも、開発期間半年はすげぇよ!? 操縦席まわりはほぼゼロベースだろうに」
あ、ちゃんとそこ見抜くのね。確かにそこが難点だったわ。色々試して結局、人間の動作を増幅して、そのまま機体の動きに反映する。みたいな感じで操縦する形になってるの、いわゆるマスター・スレイブ方式ね。だから普通のビーガードとは乗り味は全然違うのよねー。ただ、直感的に動かしやすい。と、習熟訓練の期間は短く済むのはメリットでもあるのだけど。
……「パワーローダー式」って私が呼んでたら、それが定着しちゃったけど。まぁ良いでしょう。子供を守るための戦いにバフ付きそうだし。
是非とも女性操者に「その子から離れなさい、アバズレ」とかキメてほしいわ!
「かわいい……」
「おおう、マリンがメロメロに……いやでも、確かにかわいいな」
「ありがとにゃ~ん。ぐるるぅ~♪」
あと、なんか、ビーガードコアが勝手に『可愛い動作や言葉遣い』を学習してるんだけど……これって何なのかしらね。
謎だわ。




