2試験対策!?
「草刈さん顔色悪くない?」
七海の目の下にはハッキリとクマが浮かんでいる。昨日は気づかなかっただけ?……そんなことないよね。
「少し夜更かししてしまいまして。それよりも、家に帰ってからメッセージのやり取りとかしても大丈夫です? 昨日少し疑問に思ったことがありまして」
なんだかしゃべり方も少しふわふわした感じ。
「あ、私もテストの見直ししててさー。わかんないとこ聞こうと思ってたんだった。眠ったらスッカリ忘れてたよ」
「そうだったんですね。でしたら今後は時間とか、遠慮なさらずにメッセージを送って下さい。私も昨晩は遅くまで起きてましたし、もし遅くても寝てればたぶん気づきませんし。それでわからないこととは?」
何だったかすでに思い出せない。我ながら鳥頭だわ。
「はは、忘れた。テストは家にあるから帰ったら連絡するね」
「わかりました。お待ちしてます」
七海に小さな笑顔が浮かぶ。とても可愛い笑顔。もしかしなくても無表情じゃなければこの子、メッチャ美少女なのでは?
マジマジと七海の顔を見つめる。現在化粧はしてないすっぴんだな。それで外に出られる素材の良さがうらやましい。肌荒れなんかもなく整っていてポテンシャルはかなり高そう。
ベースカラーはあとで色あわせしてみようかな。眉毛、整えたりしないのかな……整えたいな。睫は……長い!しかも瞳は上下にうっすい私と比べてまん丸でおっきいし、薄い水色で日本人離れしてる。どっか外国の血でも入ってるのかな。顔は純和風って感じだけどなぁ。鼻は低め……けど主張少ない方が整えやすいし、唇は薄めだけどきれいな形だから少しボリューム感出して……
「あの……向井さん? さっきから視線が気になるんですけど。私の顔に何かついてますか?」
おお、思わずガン見してしまったぜ。
無表情だが人を疑うような声音。その通り、顔についてるパーツを見てたんだよ。てか、七海のわずかな声色の違いで少しずつだけど感情の変化が掴めるようになってきたかも。
「あ、ごめん。ちょっと草刈さんの顔いいなって。草刈さんてメイクとかする? 良かったら今度お化粧させてほしいな」
七海は顎に手を当て少し考えてから
「どんなお世辞ですか?お化粧はほとんどしません。わかっているとは思いますが、普段学校や買い物や図書館以外で出歩くこともないですし。多少はメイク道具もありますが実際に使ったことはほとんどありません。それにこんなのが化粧して誰か得しますかね」
あー、この子は自分のポテンシャルに全く気づいてない。気づいてほしい。ここに美少女がいることに。私もだけど学校の連中の目も節穴だ。
「あの、勉強に関係ないですしこのお話は……」
言いかけた彼女を手で遮り。
「これは私の勉強よりも大切なことです。草刈さん。ここに実は美少女がいます。本人も周りもはそれに気づいておらず無関心です。ある人がそれを見つけました。さて、あなたがその人ならどうしますか?」
七海は顎に手を当てる。考えてるときのクセかもしれない。
「これは何かの思考実験か心理テストでしょうか。もし私なら……きれいだなと思って終わってしまうと思いますが……それで何か?」
私は大袈裟にブンブンと頭を横に振る。
「ふっふっふっ。才女でもわかりませんか。正解は……ダイヤの原石を見つけたら磨きたくなる!」
力強く拳を握ってドンと机を叩きつけた。七海がビクリと肩を揺らした。
「一体なんの話をしてるんですか?」
かなり困惑してるなコレは
「ちょっと手を出して」
七海の手を取り肌の色を見る。透き通ったきれいな肌。だけど意外に血色は良い。
もはや理解不能な状況なのか、ことばでは困惑しつつも言われたままにしている。
「あの? そろそろ……」
「ちょっとこっち向いて目を閉じて」
バッグからメイク道具を出す。本当は持ち込み禁止なのだけど女の子の必須道具……のはずだよね。
「5分だけちょうだいね」
答えも待たず、ぱぱっと思いつくまま手早くナチュラルメイク。彼女の場合は下手に盛らない方が絶対に可愛い。
ああ、目の前で美少女が作り上げられていく様はこんなにも高ぶるものか
「できた! 絶対かわいい! 鏡見て」
手鏡を渡す。彼女は自分の顔をマジマジと見ている。
「……あの、なんて言ったらいいのかわかりません」
といいつつも手応えあり!少し喜んでいるのが七海歴3日目の私にはわかる!
「かわいいー! ふふ、私ったら罪な女」
パシャッとスマホで写真を撮る。
「あ、勝手に、その、撮らないでください。今は恥ずかしいです」
両手で顔を隠す仕草。
「何言ってんのよ、草刈さん。今のあなたならクラス、ううん。学校中の男子の視線を我が物にできるわよ」
立ち上がってグッと拳を握り力強く主張。
「わかりました。でも今は向井さんの勉強が大切です。そっちに集中しましょう」
「……確かにそうだよね……すみません。調子に乗りました」
予想外に冷たい返答に私はゆっくり座りペンをとる。
「……向井さん。その……お化粧ありがとうございます。でも今は勉強に集中してほしいです……向井さんが無事に再試験合格したらメイク教えてください。私、今までこういうことを教えてもらえる方とかいなくて……」
私はブンブンと縦方向に何度も頭を振った。
勉強を続け日が傾き出す頃
「今日はこんなところでしょうか。今日までは基礎をやりましたが、明日からは本格的にテスト対策をしていこうと考えてます」
ゆっくり筆記用具やノートを片付けながら七海が語り出す。
「先生や過去再試験を受けた方の話をリサーチした結果ですが、どうやら再試験は前回の試験とほとんど同じ問題が出るようです」
「もしかして私のためにそこまで調べてくれたの?」
七海は黙ってうなづく。
「運任せになりますが回答丸暗記でもいけるのではないかという報告もあがってます。向井さんのやる気や能力によっては最悪そのパターンも考慮に入れてます」
顎に手を当てる彼女の考えてるときのポーズ。話す言葉を選んでいるのだろうか。そして真顔で私を見ながら、
「それから英語の解答用紙見せてもらいましたが、本当は多少は英語できますよね? 試験中寝てるんですか?」
言葉に少しトゲというか、呆れたようなニュアンスが含まれている。
私は首を横に振る。
「全然! オンラインゲームでたまに外国人と当たる時便利だから少しできるだけ。それにほら、日本人だって日本語話せても国語の点数とれるとは限らないじゃん」
「国語と英語はそもそもやってる内容が違いますから。オンラインゲームですか。面白いですね。ゲームがもとで英会話がそこそこ成り立つように学べるなんて新しい発想です」
「でもやっぱ少し喋れてるくらいじゃテストはできないよ。私の場合はほとんど単語並べてるだけだし」
過剰に評価してくれるのは嬉しいがそんなに実力なんてない。
「私は英語に関しては心配はそれほどしてませんよ。あ、そろそろ出ないといけない時間ですね。今日はその……ありがとうございます。お化粧していただけて……」
うつむいて照れてる? 語尾もゴニョゴニョと消えゆくような言い方だったし。
「私もありがとね。そうそう、草刈さんまた笑ってみてよ」
ふと思いついたことをきいてみた。
「なんですか急に……」
といいつつも美少女の顔が醜悪な笑いに変わる。
「それ? 笑顔かなー……?」
思わず笑ってしまう。
「私的には100点満点の笑顔のつもりですが?」
明らかに困惑してる顔になる。
「鏡で見たことある?」
「ありません」
「もう一回笑ってみて」
彼女が笑顔? になった瞬間パチリと撮影。
「また……写真撮るなら言ってください」
これはちょっと怒ってるかな。けど私は笑いがこらえきれない。美女の庫の顔。名作だわ。
「あははは!コレ、見て」
「え……これ私ですか?」
画像を見てさらに戸惑う七海。
「うん。この顔破壊力ありすぎ! 絶対人に向けてやったらダメだよ。あははははは」
「……はい」
しゅんとする七海。
私がスマホの七海の笑顔? を見ながら馬鹿笑いしてたら見回りの先生がやってきた。今日もなぜか私だけ怒られたけど、その後七海の顔を見て驚いていたことで私の笑いは止まらなくなった。




