1.5 初めての勉強会の夜
「こちらからメッセージを送ってもいいものなのでしょうか」
ガラステーブルの前に正座し、草刈七海はスマホを睨みつけながらつぶやいた。勉強会を終えたあと、向井ヒナの連絡先を交換した時のことを思いだしてスマホを胸に抱きしめる。
かなり恥ずかしかったが自分から連絡先をきけたことは七海にとっては大きな一歩だった。それに今までにないくらいたくさんお喋りができたことも気分を高揚させていた。
再びスマホの画面の向井ヒナという表示を見る。
「特に用事があるわけではありませんが……」
今日の勉強会はどうでしたか? 何かわからないことありませんでしたか? そんな他愛のない一言を伝える。そんなことすら七海にとってはハードルが高い。言うなれば高難易度コンテンツ。
「まあ明日勉強会ですし、その時に聞いてみましょう」
そう思いスマホをテーブルに置き、傍らの教科書を開く。それが七海の毛嫌いする、『面倒なことは後回し』だとしても。
今日の内容はあれで良かったのか。明日は何を教えようか。
向井ヒナに関しては今回数学と英語が赤点だった。そして他の教科もギリギリの状態だったことを思いだしていた。
ただ、赤点科目の2つを来週の再試験に合格させることが当面の目標だ。そうすると勉強時間は足りるだろうか。放課後だけでは足りないかもしれない。
頭をフル回転させている七海の目にテーブルの上のスマホが入る。
「やはり聞いてみましょうか」
スマホの向井ヒナの名前を睨みつける。いっそ、向井ヒナからメッセージが来ないだろうか。何か一言わからないことでもあれば、それを伝えてくれればいいのに……。これも七海が毛嫌いする『人任せ』なことには彼女は気が付かない。
「向井さんは今何してるんでしょう」
今日教えた内容を復習しててくれたら最高だ。そして再試験に向けての対策を考えてくれれば……
答えがでない妄想を繰り返しながら夜は更けていく。




