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瑠璃色の贖罪  作者: あんばたみや
いちばん近いのに、遠い人
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 私には、幼馴染がいる。保育園から一緒の、伊織。といっても、小学校からは別々だ。


 私は、聖蘭学園へ初等部から入学。いわゆる、お嬢様校ってやつらしい。父のたっての希望で、穏やかな校風の学校へ進学した。

 伊織は、白鷹学園。私も知っている有名な進学校だ。名前からしてなんだか違うなって、最初に思った。伊織から聞いたとき、母は驚いていたけれど、父は、少しだけ渋い顔をしていた。

 保育園の年中から、お受験のために始めた書道教室。そこがずっと一緒だったから、仲良くなった。

最初は、ただ隣の席になっただけだった。いつも少し緊張した面持ちで教室に入ってきて、私の隣に座る。どの席に座ってもいいはずなのに、なぜか、いつもそうだった。

 たぶん、たまたま。

 なんとなく気になって、話しかけてみたら、思っていたより、ずっと話しやすかった。ちゃんと聞いてくれるし、ちゃんと返してくれる。ときどき、私の知らない面白い話もして笑わせてくれる。それが、なんだか安心して、気づいたら、自然と話すようになっていた。


 小学校の受験は、正直怖かった。家の空気も少し違っていて、ずっと緊張しているみたいで。私も、少し不安定だったと思う。そんなときも、伊織はいつも隣にいた。私の話に耳を傾けて、静かに寄り添ってくれた。「大丈夫だよ」って簡単には言わないけど、大丈夫になるように、一緒に考えてくれる。それが、心地よかった。

 なんとか、たぶんギリギリで合格して、聖蘭に通うことが決まったとき、「書道、大変だったらやめてもいいよ」って、ママに言われた。でも、やめたくないなって思った。たぶん、伊織に会えなくなるのが、嫌だったから。


 週に一回、同じ机で同じ時間を過ごす。それだけなのに、その時間があると、少し落ち着く。

だからなんとなく続けていた。でも、その書道教室も、私が小学校三年生のときに、なくなってしまった。先生が地方へ引っ越すことになったから。少しだけ困った。もう伊織と会えないのかな、って思ったから。でも、そうはならなかった。

 最初は、勉強を教えてもらうため。私の家のリビングのテーブルで、算数の問題を一緒に解く。私が分からないところを聞くと、ちゃんと説明してくれる。わかるまで、待ってくれる。それが、すごく、ありがたかった。


 気づけば、週に2回、3回と、会う日が増えていった。あるとき、伊織に聞いたことがある。

 「私ばっかり教えてもらってて、伊織の勉強の邪魔になってないかな。」

 そのときの伊織は、一瞬、時が止まったみたいに、固まってしまって。やっぱりそうなのかな、って思って、「じゃあ、やっぱり——」って言いかけたら、


 「俺も、瑠璃に説明することで理解が深まるし、瑠璃と一緒にいると、すごく心地がいいから勉強も捗るし、全く負担じゃないよ。むしろ、いつもありがとう」

 優しい顔で、でも少しだけ早口で、言っていた。伊織は、やさしい。すごく、すごくやさしい。


 でも、たまに。少しだけ遠い気がする。どうしてだろう、って思うことがある。私は、そんなに遠くにいるつもり、ないのに。それが、いつも少しだけ寂しい。



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