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現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
第3層“結” 4層への道

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第88話 穿門鬼《せんもんき》

是非、ブックマークか評価を。

私にガソリンをください!!

雄叫びを上げながら、直哉は武虎の背を追う。

先行する武虎に向おうとしている穿門鬼(せんもんき)目掛け、直哉は一気に加速する。


――身体強化:剛。


全身から魔素が激しく迸り、筋肉の一つ一つが限界を越えて活動する。

地面を蹴った瞬間、直哉の視界が跳ね上がった。


「っ……!」


跳躍。

常人離れした高さで、直哉の身体は宙を舞い、武虎の頭上を越える。


視界の先には、穿門鬼(せんもんき)だ。

穿門鬼(せんもんき)は、細見で筋肉質の餓鬼だ。

鳥のような逆関節の足で、両手は肘から先が禍々しい剣へと変質している。


――来る。


直哉がそう判断した瞬間、穿門鬼(せんもんき)は咆哮と共に両腕の剣を振り上げた。

左右から同時に迫る、斬撃。

空気そのものを切り裂くような速度と質量。


「――甘い!」


空中で、直哉は口角を吊り上げる。


「2本の剣で有利とか思うなよ!

俺はな、

――(イチカ、いくぞ!)

3本だ!!」


(『了解。分体生成(アバター)展開します』)


次の瞬間、直哉の肩甲骨あたりから魔素でつくられた腕が生えてくる。


腕が、増えた。

合計4本。


直哉の腕は、いつものようにバットを握る。

そしてアバターの2本の腕には、それぞれバール。


四腕の構え。

異形に対して、異形で応える。


「――光よ!!」

叫びと同時に、直哉は律印(エフェクター)を起動する。


次の瞬間、眩い光が炸裂した。

バットは、まるでビームサーベルのように白銀の光をまとう。


その様子に、穿門鬼(せんもんき)も身構える様子をみせる。


「三・刀・流だ!!」

叫び返しながら、直哉は踏み込んだ。


厨二病補正なのか、いつもよりも動きが軽い。

視界が澄み、敵の挙動がはっきりと見える。


穿門鬼(せんもんき)の両腕の剣を、バールで弾く。

金属音が重なり、火花が散る。


「っしゃあ!」


* * *


――違和感。

次の瞬間、穿門鬼の動きが変わった。


さっきの力任せで直線的な斬撃とは違う。

1歩、跳ぶ。

2歩目で半回転し、床を蹴った反動を殺さず、そのまま刃を振り下ろしてくる。


「……っ?」


直哉は反射的にバールを重ねるが、剣は正面から来ない。

斜め上から、舞うように。


まるで――踊っている。


穿門鬼(せんもんき)はその相貌に似合わぬ軽やかさで、跳躍と回転を繰り返しながら刃を振るってくる。

一撃ごとに着地点を変え、間合いをずらし、直哉の視線を揺さぶる。


「っ、なんだこいつ……!」


金属音。火花。

バールで弾くが、完全には止めきれない。

次の刃が、想定より一瞬早く、横から迫る。


直哉は半歩遅れてバットを振り上げ、かろうじて受け止めた。


「チッ……リズムが……!」


(『落ち着いて対処してください。

動きは変則的ですが、スピードはそれほどではありません』)


穿門鬼(せんもんき)は止まらない。

跳ねる。回る。斬る。

大地を蹴った反動が、そのまま次の攻撃に繋がり、一瞬ごとに位置が変わる。


直哉は一度、深く息を吸った。


「……なるほどな」


直哉は肩の力を抜く。

相手の刃ではなく、重心を見る。


床を蹴る瞬間。

跳躍の頂点。

着地の、ほんの刹那。


「そこだ!」


穿門鬼(せんもんき)が跳び上がった瞬間、直哉は一歩、前に出た。

分体生成(アバター)の片腕が、バールで着地点を叩く。


――ガンッ!


着地の脚がわずかにぶれる。


「もらい!」


直哉はその隙を見逃さない。

跳躍から繋がるはずだった斬撃を、バットで真正面から打ち払う。


白銀の光が弧を描き、剣を弾き飛ばす。


穿門鬼(せんもんき)は即座に回転し、体勢を立て直そうとする。

だが――遅い。


「ルミナス・スラッシュ!!」


実際には、ただの全力スイングだ。

しかし、律印(エフェクター)が生み出した光のエフェクトが、バットの軌跡になり、まるで空間を引き裂くような演出を加える。

直哉の一撃は、穿門鬼(せんもんき)を真正面から叩き抜いた。


――ドンッ!!


鈍く、しかし確かな衝撃音。

穿門鬼(せんもんき)の体が宙に浮き、吹き飛ばされる。


* * *


「よっしゃああ!!」


だが、勝利を確信するには早すぎた。


瓦礫を跳ね飛ばしながら、穿門鬼(せんもんき)が立ち上がる。

その口から、怒りと憎悪を混ぜたような雄たけびが放たれた。


「――――ッ!!」


次の瞬間、異変が起きる。


両腕だけではない。

穿門鬼(せんもんき)の両足が、音を立てて変形を始めた。


骨格が歪み、筋肉が裂け、やがて――

脚部までもが、巨大な剣へと変わる。


「……四刀流、だと?」


直哉が呟いた瞬間、穿門鬼(せんもんき)が雄たけびを上げ、逆関節の足を大きく伸ばし、後方へと跳躍した。


「……っ!」

直哉は思わず息を呑む。

距離が一気に開き、緊張の空白が生まれる。


空中で穿門鬼は両腕と両脚を振り回し、剣閃を次々と放つ。

斬撃が弧を描き、直哉へと襲いかかる。


変幻武器タクティカル・フォージモーニングスターモード展開、砕陣発動』

イチカの声が脳内に響き、モーニングスターが唸りを上げ、赤いオーラが渦を巻く。


「ぬおおお、飛ぶ斬撃、かよ!」

直哉は迫る剣閃にモーニングスターを振り抜く。

刃と棘がぶつかり合い、一瞬拮抗する。

だが、砕陣を纏ったモーニングスターは力強く剣閃を打ち砕き、火花と衝撃音を撒き散らした。


「だっしゃあ!」

直哉は次々と襲いかかる剣閃を迎え撃ち、砕きながら少しずつ慣れていく。


(『次は左下から! その後、右肩上!』)

「わかった!」

直哉は身体をひねり、蜻蛉飛び(フリップ・ターン)で軌道を変え、剣閃を紙一重でかわす。

そして、迎え撃つモーニングスターで次の斬撃を粉砕する。


着地した穿門鬼(せんもんき)は、緩急をつけて直哉へと迫ってきた。

軽やかに跳躍したかと思えば、強く踏みしめて回転、そして剣閃を織り交ぜる。

その動きは舞踏のように滑らかでありながら、殺意を孕んだ暴風そのものだった。


「……速ぇ!」

直哉はバットで正面の斬撃を弾き、バールを交差させて横からの刃を受け止める。

だが、かわしても次の剣閃が飛んでくる。攻撃の嵐は止まらず、防御を削り続けた。


左右の腕の剣、左右の足の剣。

四肢の刃を器用に、しかし振り回すように叩きつけてくる。

その連撃は暴風の渦に似て、直哉を巻き込み、押し潰そうとする。


「っ……くそ!」

直哉は必死に抵抗し、バットで正面の斬撃を弾き、バールを交差させて横からの刃を受け止める。

だが、かわしても次の剣閃が飛んでくる。攻撃の嵐は止まらず、防御を削り続けた。


(『後ろ、かわした剣閃が戻ってきます!』)

イチカの声が脳内に響く。

直哉はその指示に従い、蜻蛉飛び(フリップ・ターン)で軌道を変え、後ろからの斬撃を紙一重でかわす。

剣閃が髪をかすめ、風圧が頬を切った。

「助かった……!」


* * *


避け続ける直哉に対し、穿門鬼(せんもんき)の動きは荒々しくなり、苛立ちが攻撃に現れる。

剣閃は乱雑に飛び散り、暴風のように戦場を覆う。


直哉は汗を飛ばしながらも、必死にその嵐を切り裂く。

「くそっ……しつけぇ!」


「ギュォォォオオー!!」

穿門鬼は独楽のようにその場で高速回転を始め、四肢の剣が円を描きながら四方八方へ斬撃を飛ばす。

斬撃の嵐が暴風のように直哉を包み込み、かわしても次の剣閃が飛んでくる。

「……巻き込まれる!」

直哉は必死に防御を続け、バットで弾き、バールで受け止める。


「……負けるかよ!」

直哉は剣閃の嵐を紙一重でかわしながら、敵との距離を詰めていく。


そして、直哉が間合いに入った瞬間――。

不意を突くように、鋭いくちばしが伸び、直哉の顔面を狙った。


「やっぱりそのくちばしに何かあると思ったぜ!」

時穿つ瞳(クロノス・ハック)発動』

イチカの声が脳内に響き、直哉の左目に幾何学模様が浮かび上がる。


世界が粘性を帯び、水中のように鈍く流れ始めた。

穿門鬼のくちばしが突き出される軌道も、時間が遅延したことで鮮明に見える。


直哉は身体をひねり、紙一重で必殺の一撃をかわす。


「――光よぉぉぉぉぉっ!!」

律印(エフェクター)が起動し、直哉の武器に白銀の輝きが奔る。

グレートソードモードの刃が光を纏い、白い軌跡が戦場に線を引く。


「これで終わらせる……瞬閃六連撃(アクセル・バースト)ッ!!」

分体生成(アバター)で追加された2本の腕も攻撃に加わり、直哉の4連撃と合わせて、合計6連撃が放たれる。


ズガガガガァァァァァンッ!!


神速の6連撃が穿門鬼(せんもんき)を切り裂き、轟音と衝撃波が戦場を揺らす。

斬撃の嵐は途切れ――次の瞬間、穿門鬼(せんもんき)は光に包まれて崩れ落ちた。

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