第90話 関門突破
是非、ブックマークか評価を。
私にガソリンをください!!
焼けた地面は赤く爛れ、湿った熱気がまとわりつく。
戦いの余韻が濃い広場で、俺は大きく手を振った。
「陽平ー! 無事かー!」
木刀を杖代わりにしていた陽平が、ゆっくり顔を上げる。
「……はぁ……なんとか……生きてる!」
その言葉に安堵しながら俺は駆け寄る。
「よかった……陽平! お前、マジですげぇよ!」
「えっ……な、なにが急に!?」
俺は陽平の肩をガッと掴んだ。
「水の蛇!! 木刀から出したあれ!!
あれめっちゃカッコいいだろ! しかも最後氷の蛇になってたしさ!」
「そ、そうかな……?」
「あんなのテンション上がりまくりだよ!!」
陽平は耳まで真っ赤だ。
「う、うん……まぁ、あれが僕の能力だよ。水操。
壱式から捌式まであって、今は肆式までしか使えないけどさ」
「8種類もあるのか!? ロマンがすげぇ!!」
「ロマン優先な部分は否定しない……」
陽平が苦笑していると――
何か思い出したように、こちらをまじまじと見る。
「でも神谷君。君のほうこそ、最後のあれ……なんだったの?」
「あれ?」
「ほら、“動きを止める”って言った直後に灼門鬼の炎が消えたじゃないか!」
「あー、あれか」
俺は胸を張って答える。
「あれはな……空気の“時”を止めたんだよ!」
陽平は思わず素の声を漏らす。
「空気の時……?」
「そう、あれだ。空気のな、ぶんし的なアレをアレしたんだよ」
「分子的なアレをアレ……?」
(『空間の分子を動かなくさせた、ですよ、直哉』)
考えることを放棄した直哉は、イチカからの言葉をそのまま陽平に伝える。
「えーっと、だな。
さっきの炎が消えたやつ? これは、空気の“動き”を止めたんだ。
酸素が動けないと燃えないし、熱も伝わらない。
だから燃えなくなる。
……って思って、やってみたらできた!」
「“やってみたらできた”で済ませられる能力じゃないよ……!」
「もともと、俺の必殺技って時を止めるってのがコンセプトでさ、最近かなり練習してるんだ。
なんかわからんけど、結構適性が高いみたいで、成功率がいいんだよね」
「へー、よくわからないけど、凄いね」
陽平は、目を見開きながら。
「それにさ……難陀が氷の蛇に変わったのには驚いたよ」
(『分子が動いていない空間は、絶対零度です。
そこに水が入ると、水分子が活動を停止し、超急速凍結現象が起きたのです』)
「えーっとな。それもアレだよ。
分子が動かないところだと、水も氷になっちゃうのよ。
まぁあれは俺も予想外だった。
でも、あの氷の蛇もかっこよかったな!!」
陽平は目を丸くする。
「……なるほど。それで氷蛇に……」
「で、難陀って?」
「それも僕の技の名前だよ。
僕の技、水操だけど、八大龍王の名前を使ってるんだ」
「八大龍王!? めっちゃカッコいい!!」
「ロマンは大事だからね」
陽平が少し照れながら笑う。
* * *
「……いってぇ……!」
背後から武虎の声が聞こえた。
「お、トラ!」
振り向くと、肋を押さえて武虎が歩いてきた。
体のあちこちが酸でやられたかのように、爛れている。
そのすぐ後ろ――
空から、ふわりと影が降りてくる。
真弓だ。
「……おつかれ」
声をかけてくる1秒前まで、完全に浮いていた。
「えっ……真弓さん、今……空飛んでたよね!?」
「……うん。飛べる」
武虎が真弓へ向き直り、痛みに顔をしかめながら笑う。
「助かったぜ。
お前がまとめてくれたから、俺の断裂猛襲で消し飛ばせた」
真弓は頷く。
「問題ない。……武虎、結構やられてた。大丈夫?」
「あぁ。時間経てば治るさ。慣れてる」
「なら、よかった」
俺は武虎の肩を叩いた。
「トラもすげーよ!!
断裂猛襲、あれ倍ぐらいになってたよな!?
しかも、あの檻!! 敵をギュッとまとめるやつ!」
武虎が苦笑する前に、真弓がぽそっと言った。
「……あれは私の魔弾」
「デッドリーロック……?」
陽平が解説する。
「姉ちゃんの必殺技だよ。百発百中の魔素弾!」
「百発百中!? マジで!?」
「うん。撃った魔素弾を――自由自在に操れる」
「すご!!」
俺は思わず尊敬の眼差しで真弓を見る。
真弓はわずかに照れたように目を逸らした。
「……そんなに褒められると、困る」
* * *
武虎が両手を腰に当て、胸を張った。
「なんにせよ、これで先に行けるな!」
陽平が頷く。
「でも、さすがにこのまま突っ込むのはキツいよね」
「だよなぁ。魔素も体力もすっからかんだし」
真弓が小さく手を上げる。
「……帰る。無理は、しない方がいい」
武虎も頷いた。
「そうだな。4層はもっとキツイだろうしな。
今日は上がろう」
陽平が少し心配そうに言った。
「次来た時って……またあの4体、出るのかな?」
「さぁ……ダンジョン次第だな」
武虎が肩をすくめる。
「でも、今日のでパターンはわかった。
レベルも19に上がったし、次はもっと上手くやれるだろ」
「おっ、トラもレベルあがったのか、俺も16に上がったぜ!」
レベル:15→16
体力:61→67
筋力:63→70
敏捷:74→82
器用:52→52
知力:51→51
特殊能力:現象伝導、時穿つ瞳、瞬閃四連撃
特殊能力:分体生成
内在魔素:534→587
内在魔素:332→365
「え、2人とも上がったの?
僕も18に上がったよ」
「……私も20になった」
「レベル16であの動きか。神谷は相変わらずだな」
「確かに、僕より動き早い気がしますよ」
「……そうね、なかなか」
「それにしても4人全員か。
幸先いいな!」
4人は自然と顔を見合わせ、笑った。
* * *
「でさ……真弓さん」
「……なに?」
「やっぱり……飛んでたよね?」
「ええ。飛べる」
武虎が説明する。
「翼界だよ。
三界のひとつ。親父が言ってたろ?」
「そんなすげーのがあるのか!!」
武虎は鼻を鳴らす。
「まぁ、俺も使えるんだけどな。
でも断裂猛襲の修業優先してたから、下手でよ。
あんま使わねぇんだ」
陽平も首を振る。
「僕はまだ使えないんだ。
八大龍王の修業優先で」
「なぁ! 俺も空飛びたい!!!」
真弓はひと言、淡々と。
「なら、4層行く前に――
みんなで翼界の修業、する?」
武虎が笑う。
「いいじゃねぇか。やるか!」
陽平も頷く。
「僕もやりたい!」
俺は拳を突き上げた。
「よっしゃ!!」
今日の勝利は通過点。
技は成長し、仲間は増え、できることも増えた。
次は空へ、そして4層へ。
* * *
科学的なツッコミはなしでお願いします(笑
きっと魔素的な何かで、できちゃった感じなんです。




