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現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
第3層“結” 4層への道

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第89話 合体技

是非、ブックマークか評価を。

私にガソリンをください!!

――爆ぜる。


水と炎がぶつかるたび、白い蒸気が爆発的に吹き上がる。

視界は揺れ、地面は焼け、空気が沸騰するように歪む。


陽平は木刀に纏う水を握り直し、荒い息を整えた。


「……っは……まだ、いける……!」


目の前には、灼門鬼(しゃくもんき)

全身に走る黒いひび割れの奥で、赤熱した光が脈動している。

呼吸するだけで火花が散り、熱が地面を黒く焼く。


陽平の身体を包む、水の膜――沙羯羅(しゃがら)の加護。

だが、すでに薄くなっていた。


(出し惜しんでる暇はない……!)


灼門鬼(しゃくもんき)が吠え、胸の裂け目から炎が奔流となって吐き出される。


水操(ミズノ・シラベ):壱式――難陀(なんだ)!」


陽平の木刀から伸びた蒼い蛇が、牙を剥いて突進する。

灼門鬼(しゃくもんき)の炎槍と水蛇がぶつかり合い、視界が白い壁に変わった。


――ボフッ!!


蒸気が爆発し、視界を塞ぐ。

陽平は即座に後退し体制を整ええる。


(……持久戦は無理だ。魔素の減りが早すぎる)


そんな時だった。

――視界の端を、黒い影が走った。


「大丈夫か!!」


直哉だ。

猛スピードで灼門鬼(しゃくもんき)に接近し――


「オラァッ!!」

白銀の光を纏ったバットが唸る。

だが。


――ジュボッ。

灼門鬼(しゃくもんき)の炎が横薙ぎに吹き出し、直哉の腕へ迫る。


「うわっ!? 熱ッ――!」

焼け焦げる臭い。

直哉は慌てて後ろへ跳び、腕を庇う。


(……ッ! まずい!)


陽平は木刀を握りしめ、叫んだ。

水操(ミズノ・シラベ):弐壱 跋難陀(ばつなんだ)!!」


次の瞬間、陽平の木刀から水が消えた。

そして直哉の目の前に水の蛇が顕現する。

水の蛇は空中でとぐろを巻き、炎から水の盾のように直哉を守る。


水の蛇の盾は、炎が触れれば、ジュッと音を立てて蒸発し、熱を遮断する。

「……すげぇ。助かった……!」


陽平はほっと息を吐く間もなく、木刀を構え直した。

「神谷君! 接近しすぎると焼かれる!」


「……分かった、俺は援護にまわる!」

直哉は更に距離を取り、深呼吸して意識を集中させた。

(『発動準備、整いました。いつでもどうぞ』)


「――識界(しきかい)

直哉を中心に1メートル超の魔素領域が広がる。

「くそ、まだまだ狭いな!」


(『識界(しきかい)に指向性を与えます』)


イチカが魔素の放出をコントロールし、円形だった識界(しきかい)が――

まるで槍のように、直哉から正面へ向けて伸びる直線へと変化した。


その範囲は約4メートル。

(ナイスだ、イチカ! これなら……!!)


直哉は陽平へ叫んだ。

「陽平、俺があいつの動きを止める! お前は全力で叩け!!」

「動きを止めるって――わかった、任せたよ!」


(イチカ、どこを“止め”れば一番効く?)

(『……初の試みですが、灼門鬼(しゃくもんき)周辺の空気の分子の動きを止めましょう』)


(ぶ、ぶんし……?)

(『難しい説明は省きます。――“風の流れを止める”と思ってください』)

(わかんねぇけど、わかった!)

(『ただし、広すぎると魔素が枯渇します。

対象は上半身の1メートル四方。

そこに限定して風の流れを止めてください。

それでも1秒で100以上の魔素を消費します。

タイミングを合わせて……1秒以内で終わらせてください』)


「陽平、奴の頭だ!

上から全力で攻撃してくれ!!」


「わかった、信じる!

――身体強化:剛、水操(ミズノ・シラベ):壱式 難陀(なんだ)!!」


ギュルン、と木刀の周囲で水が膨張する。

水蛇が大蛇へと肥大化――まるで映画に登場する大蛇のような太さだ。


「行けえぇぇ!!」

陽平が木刀を振り下ろすと、水蛇は天から弧を描きながら、灼門鬼(しゃくもんき)へ襲いかかる。


* * *


「行くぞ!!」


直哉は灼門鬼(しゃくもんき)識界(しきかい)の射程へ捉えるため、疾走した。

距離が縮まり――


「止まれぇ!!」

識界(しきかい)灼門鬼(しゃくもんき)が入った瞬間、直哉は空間の“時”を止めた。


灼門鬼(しゃくもんき)の上半身――

空気の分子が止まり、熱が奪われ、炎が凍りつくように消え失せる。


その頭上へ、陽平の水蛇が轟音を立てて降り注ぐ。

識界(しきかい)に触れた瞬間、水蛇は一瞬で“氷の大蛇”へと変貌する。


ガブリ。


巨大な顎が灼門鬼(しゃくもんき)の頭部を丸呑みする。

バキバキと噛み砕く音が鳴り、牙の隙間から凍気の奔流が零れ落ちる。


灼門鬼(しゃくもんき)が反射的に火を纏おうと胸を膨らませる――が。

熱を出しても直哉の識界(しきかい)に触れた瞬間に炎が消える。


「うぉぉぉぉ!!」

陽平が水蛇にさらに魔素を込める。

水蛇がうねり、ひと回り、ふた回りと体躯を増していく。


バキ、バキ、バキィィィ――ッ!!!


氷が灼門鬼(しゃくもんき)の上半身を瞬く間に侵食し、灼門鬼(しゃくもんき)の体が、氷の像へと変わっていく。


次の瞬間――


轟ッ!!


膨張した蒸気が灼門鬼(しゃくもんき)を内部から爆発させ、氷の破片がキラキラと光る。

光る氷片の中で、下半身だけになった灼門鬼(しゃくもんき)がポリゴンとなって風に散った。


* * *


武虎の周りには、緑色の毒霧が渦巻いていた。

皮膚が焼けるような痛み、視界は曇り、肺は痺れ、肌が毒に侵食される。


「ぐぉぉぉ、断裂猛襲(ブレイクアサルト)ッ!!」

挿絵(By みてみん)

赤いオーラが爆発し、武虎に虎を象った赤い魔素が重なる。

バリバリと黒い稲妻が表面を走り、それに触れた毒霧が――じゅっ、と音を立てて消滅する。


毒霧が武虎に襲いかがるが、断裂猛襲(ブレイクアサルト)がそれを防ぐ。


「ケタ、ケタ」


毒霧に変化した穢門鬼(えもんき)は、武虎の周囲を楽しげに漂っている。

攻撃しているでもなく、ただそこに存在し、毒をまき散らす。


「あそぶ、気かよ……!」


武虎は歯を食いしばり、纏った赤虎の爪で毒霧を切り裂き、蹴散らす――

だが、毒霧が広すぎる。


「……足りねぇッ!」


追いつかない。

散らしたそばから、別の場所で広がる。


そんな武虎の背後から――

「動き鈍ってんぞ、筋肉」


振り向くと、真弓が片手をこちらに向け、魔弾を撃ち放っていた。


ドンッ!!

魔素弾が毒霧を貫くが、効果が薄い。


「真弓……!」

「くそっ、やっかいな野郎だぜ」


「おい、筋肉。

あたしがアイツをまとめる。

まとまったところを――お前が、その技で消し飛ばせ」


「……できるのか?」

「はっ、誰に言ってやがる。

こっからは大サービスだぜ」


真弓は空へ跳び上がり、両手のグロック17を構えた。

緑色の魔素が銃口に溜まっていく。


「――行くぞ。魔弾(デッドリーロック)


引き金が引かれる。


次の瞬間――

2発の魔素弾が、毒霧へ飛び込んだ。


ひとつは前へ。

ひとつは後ろへ。

霧を囲むように走り回り、追い立てる。


まるで牧羊犬だ。

無秩序に広がる毒霧を、ひとつの円へ追い込んでいく。


「逃げんなよ、毒カビ野郎!」


魔素弾は凄まじい速度で旋回し、まるで毒霧を囲む檻となり、逃げ道を完全に塞ぐ。

魔素弾の檻は少しずつ範囲を狭めていく。


やがて――

毒霧がひとつの塊にまとまった。


真弓が叫ぶ。

「筋肉っ! 今だ!!」


武虎は息を吸い込み、大量の魔素を練り上げる。

「――うおおおおおッッ!!」


身体強化:剛。

断裂猛襲(ブレイクアサルト)


2つの力が重なり――

赤虎のオーラが爆発的に膨張した。

オーラの虎が牙を剥いて天を裂き、地響きのような咆哮を上げる。


武虎は獣を叩きつけるように掌を突き出す。


「喰らえ――断裂猛襲(ブレイクアサルト)ォォ!!」


象ほどもある巨大な赤虎が地面を抉りながら跳躍し、一直線に毒霧へ突っ込む。

真弓の魔弾(デッドリーロック)で形成された檻を噛み砕き、赤い軌跡が霧を焼き払うように進む。


触れた瞬間――

断裂猛襲(ブレイクアサルト)の“存在を削り取る”特性が穢門鬼(えもんき)の全身を侵食していく。


「ケ……タ、ケタ……」

毒霧の中で穢門鬼(えもんき)が笑い声上げる。

悲鳴ではない。嘲りでもない。

ただ狂った玩具のように、空洞の声が響く。


「ケタケタ……キャキャ……」

笑いながら、穢門鬼(えもんき)は最後の欠片すら残さず――跡形もなく消滅した。

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