第81話 挑戦
是非、ブックマークか評価を。
私にガソリンをください!!
講堂の空気は、五十嵐拳吾の戦闘映像が途切れた瞬間、異様な静けさに包まれていた。
100名を超える探索者たちが息を呑み、画面を凝視していたため、暗転した後の沈黙は逆に痛いほどだった。
直哉は席に座ったまま、ただ呆然とする。
胸の奥が熱いのか冷たいのかもわからず、揺れ続けていた。
(すげぇ……すげぇよ……)
言葉にならない。
ただ、五十嵐拳吾という存在が、異次元の強さを持つ人間だと理解させられた。
理解ではなく、力で叩き込まれた感覚だった。
動きも、スキルの精度も、技の派手さも――すべてがアニメのように現実離れしていた。
(……俺がなりたかったのは、あれだ!)
背後から肩を叩かれる。
「よう、神谷。固まってんぞ」
振り返ると武虎が立っていた。
「すげーよな。親父以外で、あんな強ぇ人は初めて見たぜ」
その声には畏怖よりも純粋な称賛が込められていた。
「……ああ。思い返しても意味がわからない。すげーよな、あの動き」
直哉の脳裏には、人間離れした拳の軌跡が焼き付いて離れない。
武虎は笑いながらも半ば呆れたように言う。
「身体強化の質と陣の織り交ぜ方が異常なんだよ。
並の探索者じゃ見極めることすらできないぜ」
「動きもだけど、あの派手な技がすげーよ!稲妻に渦に超爆発だぜ!!」
直哉の声は興奮に震えていた。
「あぁ、すげーよな。
多分、5発式の弾倉みたいだったから、それぞれに違う属性がついているんだろうな」
「なぁなぁ、最後って2発を一緒に使ってたよな?
ってことは、3発、4発、全部みたいなバージョンもあるのかな!!
見たいよな!?」
直哉は身を乗り出し、興奮を隠せない。
武虎は深く息を吐いた。
「……落ち着けって」
「やべーよなー。俺の必殺技に混ぜられないかなぁ……」
直哉の興奮は止まらない。
武虎は肩をすくめ、呆れたように呟いた。
「聞いてねぇな、こいつ……」
* * *
ふと直哉は肩を落とす。
「でもさ、王は俺たちで倒したかったよな……」
胸の奥に悔しさが広がる。
武虎は天井を見上げ、腕を組む。
「まぁな。でもあれは強すぎだ。
周りのやつらを吸収して自分を強化するなんて、魔素であんなことができるんだな」
直哉は拳を握り、指先が白くなるほど力を込めた。
「もっと力つけて、4層に行けるようになりたいな……」
「そうだな。4層の適正レベルは、確か20だろ?」
(『えぇ、20が適切レベルです』)
「そう、20だ」
「俺は18。神谷は?」
「15」
「15!? もっと上だと思ってたぜ」
(『最適化により、一般のレベル17相当のステータスです』)
武虎がニヤッと笑う。
「なら、この勢いでレベル上げだ。んで、4層に挑もうぜ」
「……急じゃね?」
声は震えたが、心の奥では確かに火が灯っていた。
「急じゃねぇよ。今日の映像見て、火がついたんだろ?」
痛いところを突かれ、言葉に詰まる。
胸の熱は広がるばかりだった。
「それに、4層に行くには3層の階層ボスを倒すのが条件だ。
まずはそいつだ」
「3層の階層ボス……」
名前も姿形も、公式にはほとんど情報が出ていない。
討伐が難しすぎて、到達者がほぼいないという噂の存在。
その未知が、逆に心を揺さぶる。
「未知だからこそ、だな」
武虎は顎に手を当てる。
「一緒に見に行こうぜ。危なかったら即撤退。それで十分だ」
直哉は小さく息を吐く。
恐怖と期待が入り混じり、胸がざわめいた。
「ほら、神谷って未知の相手だとワクワクするタイプじゃん」
「誰だよそれ」
「お前だよ」
武虎の笑い声が響き、緊張が少し和らぐ。
「よし、今から準備して3層行くか!」
講堂のざわめきの中、2人の決意は静かに固まった。
未知の強敵――3層の階層ボスを見定めるため、直哉と武虎は再びダンジョンへ向かう。
胸の奥で燃える火は、もう消えることはなかった。




