第68話 静止する世界②
是非、ブックマークか評価を。
私にガソリンをください!!
うへ、アップが抜けていました。
すみません、、、
* * *
時間止めの訓練1日目。
俺は意気揚々と第1層のゲートをくぐった。
「よし、今日は実験だ!」
俺はわくわくしながらスライムを探す。
第1層を探索するのは久しぶりだが、スポーツウェアを着た人がチラホラおり、やはり第3層とは雰囲気が違うなと改めて感じる。
『安全確認をお願いします。人目につく場所での実験は推奨できません』
「わかってるって」
俺はメインルートを外れ、苔むした石畳を抜けて、人気のない路地へ向かった。
第1層は中世都市風の景観で、路地裏は迷路みたいだ。
危険はほぼなく、スライムがちょろっといるくらい。
「……ここなら誰も来ないな」
周囲を見渡し、耳を澄ます。
* * *
「さて、ターゲットは……」
視線の先で、ぷるぷる震える青スライム。
「お前だ」
バットを肩に担ぎながら、俺はイチカに声をかける。
「条件、もう一回確認しとこう」
『対象の質量に応じて魔素消費が決まります。
スライムの重さは約1キログラム。停止時間1秒につき、魔素100を消費します』
「100か……結構食うな」
『はい。直哉の内在魔素は現在、残量518。つまり、5秒で枯渇します』
「短っ!」
『ですので、実験は慎重に』
「了解!」
俺は深呼吸し、識界を展開。
魔素がうっすらと広がっていく。
「……行くぞ」
一瞬でスライムまで近づき、「止まれ!」と気合を込める。
――ブンッ!
空気の質が変わったような感覚がし、スライムの震えがピタリと止まった。
「止まった……!」
俺は思わず声を上げる。
『停止時間の計測を開始します』
「よし、解除!」
世界が動き出す。
スライムがぷるんと震えを再開し、こちらに気付いたのか突撃の態勢をとる。
空中に飛んだのを確認し、バットを構えながら再度「止まれ!」と念じる。
「……すげぇ、また止まった」
心臓がドクンと跳ねる。
『魔素残量、226に減少』
「やべっ!」
すぐさまバットでスライムを倒し、時止めを解除する。
「魔素の残量は?」
『193です。
無機物と同様に、質量に伴って魔素が消費されていました』
「そっか、割合は?」
『割合も無機物と同様です』
「了解。
止める時の負荷も、無機物と違いは感じないな」
『他の生物の確認も必要ですが、スライムに対する魔素の使用量は、無機物と同様と考えてよいでしょう。
次は部分停止を試してみませんか?』
「だな。
飛んできたところを、摘まむ感じで止めてみよう」
『承知しました』
俺はバットを肩に担ぎ、再び薄暗い路地を歩き出す。
* * *
「お、いたいた。次はあいつだな」
視界の先、青緑の塊が街灯のような魔導灯の下で揺れている。
「魔素残量は……197か。
摘むだけだと、どのくらい止められそう?」
『大さじ2杯分程度を止めたとして、2分ほど可能です。
魔力が枯渇しない様、1分でやめるのが安全でしょう』
「大さじ2杯ってどのくらいだ……?」
『卓球のボールぐらいです』
「なるほどね!
そのぐらいでスライムって止まるのかな?
こう、ちぎれて突っ込んできたりしない?」
『それは試してみましょう。
ちぎれて突っ込んで来た場合は迎撃すればよいかと』
「だな、よしやるぞ!」
俺はスライムに向かってゆっくり歩き出す。
スライムが俺に気付き、ぷるぷる震えながら低い唸り声を上げるように形を変えた。
ドンッ!と地面を弾いて突っ込んできた瞬間、俺は叫ぶ。
「止まれ!」
空気が一瞬、張り詰める。
「おぉ、今回も成功だ!」
スライムは空中でピタリと止まっていた。
だが、大半の部分がうにうにと蠢き、必死に俺へ向かおうとしている。
「はは、なんだこれ。
空中で動いてる」
『部分停止だからでしょう。
停止していない部分は、普通に活動するようですね』
俺は手を近づける。
スライムは攻撃しようとぷるぷる震えるが、届かず空中で無力に揺れるだけ。
「ははは、おもしろいな。
おっ、コアもこんなにくっきり見える、すげーーー」
『魔素残量149です』
「おっけー、そろそろ次のやつ行ってみるか」
俺はバットを振り抜き、スライムを魔石に変えた。
その硬質な音が、静かな路地に乾いた余韻を残す。
* * *
――3日後。
第2層の路地で、俺は汗だくになりながら識界を展開していた。
地面から襲いかかってくる牙持ちモグラ。
死角から突如襲ってくる跳躍トカゲ。
重い足音を響かせ、正面から近づいてくる岩板ゴーレム。
全部止められる。
俺の心臓が高鳴る。
「ふぅ、生物も問題ないっぽいな」
『はい、そのようです。
多少動きながらの停止にも慣れてきましたね』
「あぁ。第2層レベルなら戦いながらでも大丈夫だな。
でも、見えないところはやっぱり止められないな。
モグラの心臓を止めようとしたけど、駄目だった」
『そうですね。
魔素量が足りていないのか、練習不足なのか、そもそもダメなのか。
まだまだデータが足りていません』
「まぁこの辺はおいおいだな。
これなら第3層も行けると思うんだけど、どう?」
『問題ないでしょう。
ですが、いざという時のために、身体強化との併用も訓練しましょう』
「だな。
勘が鈍らないように、3層に潜りながらトラんとこで修業だな」
俺はバットを肩に担ぎ、暗い路地を見渡す。
次の挑戦が、もう待ちきれなかった。




