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現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
奪われた龍脈

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第235話 拮抗

是非、ブックマークか評価を。

私にガソリンをください!!

「誰が楽しませるか、ぶっ倒す!」

直哉が吠えると同時に、アマルガムが咆哮して踏み込んだ。


3メートル近い継ぎ接ぎの巨体。

杭のように尖った爪、剥き出しの牙。

振り上げられた腕が唸りを上げ、そのまま叩きつけられる。


「上等だッ!!」

断裂猛襲(ブレイクアサルト)――赤いオーラが全身を包み、虎の幻影が牙を剥く。

武虎の拳が、爪の一撃を真っ向から受け止めた。


ガキィンッ!!


轟音とともに拮抗する。

かつてオクタヴィアと互角に殴り合っていた化け物の1撃だ。

それを今、真正面から受け止めている。


「はははっ、悪くねえ、悪くねえよな!」

武虎の口の端が、自然と持ち上がった。


「あら、頑張るのね。

だったらアタシも――最初から本気で行くわ」


ミシ、ミシッ――骨が軋む音とともに、オクタヴィアの腰から新たな脚が突き出た。

黒光りする節だらけの脚が瞬く間に6本、地を掴む。

続けて両腕が音を立てて膨張し、指先まで杭のように太く育っていく――巨人の腕。

その右腕だけがさらに歪み、甲殻に覆われた短く鋭い腕へと造り替わっていく――オドントダクティルス。

皮膚という皮膚が裂け、その下から竜の鱗が押し出されるように広がり、全身を鎧のごとく覆っていった。


わずか数瞬。

姿を変え終えたオクタヴィアが、地を蹴った。

目で追い切れない速さ――6本の脚が壁と床を跳ねて描く軌道は、以前よりもさらに鋭い。


「姉ちゃん、右だ!」

陽平の声とともに、精霊顕装(アクア・レゾナンス)で強化された難陀(なんだ)が、その行く手を阻むように空間を引裂く。


「へえ……以前は避けるだけで精一杯だったのに」

オクタヴィアの目が、わずかに眇められる。


「言ったろ。俺たちも、遊んでたわけじゃねえんだよ」

武虎が、アマルガムの爪を弾き返しながら言い放つ。


* * *


水操(ミズノ・シラベ)顕装(けんそう)壱式 難陀(なんだ)!!」

陽平が地を蹴り、木刀を鋭く振り抜いた。

水が蛇のようにしなり、刃となってオクタヴィアの脇腹へ迫った。


「しつこいわね!」

巨人の左腕の表面に、ミシミシと鱗が生え広がる。

竜の鱗を纏ったその腕が、刃を真正面から弾き飛ばした。


「まったく、元気ね」

オクタヴィアが感心したように呟き、オドントダクティルスの右腕を陽平へ向ける。


「――させるかよ!」

時穿つ瞳(クロノス・ハック)を発動した直哉が地を蹴る。

蜻蛉飛び(フリップ・ターン)で宙に足場を生み出し、それを蹴って軌道を変え、強引に2人の間へ割って入った。


(『直哉』)

「おう、わかってる!」

名前を呼ばれただけで、何をすべきかは伝わっていた。


(『今――』)

時穿つ瞳(クロノス・ハック)・ゼロ!」


凶悪な威力をもった衝撃波が、時穿つ瞳(クロノス・ハック)・ゼロによって霧散する。

完璧なタイミングで衝撃波を殺しながら、直哉はそのまま前へ踏み込んだ。


「おらぁあ! 瞬閃六連撃(アクセル・バースト)!!」


「ぐぅぅ……!」

神速の6連撃に、オクタヴィアが歯を食いしばる。

ゴキブリの脚が地面を叩き、紙一重で全弾を掻い潜った。


オクタヴィアが体勢を立て直し、巨人の左腕を振りかぶる。

膨れ上がった拳がアマルガムの咆哮と重なるように、二方向から同時に叩きつけられた。


「ぐがっ!」

武虎がアマルガムの爪を受け、直哉がオクタヴィアの拳を辛うじて逸らす。

轟音とともに2人の足が床にめり込む。


「好きにさせるかよ、キモ筋肉(マッチョ)虫がよ!」

真弓が引き金を引き絞る。

瞬陣弾――連射された弾丸がアマルガムへ殺到する。

アマルガムは、その巨体に似合わない速度で全ての瞬陣弾を弾くが、幾つかの弾丸が爪を砕いた。


「ひひひ、柔いわね、つぎはぎ人形君!」


「ほんと、嫌になるぐらい成長している、わねっ!!」

オクタヴィアがゴキブリ脚で地面をかきながら、武虎の背後に回る。


「でも、まずは一撃!」


「させん!!」

椎名の声が響いた。

オクタヴィアの拳が武虎の背中に直撃する――その一撃を、椎名が真正面から受け止める。

直撃すれば即死級の力。だが椎名は逃げなかった。


拳が触れる寸前、体をわずかに開き、掌をそっと添える――力は水の如し(ブレイク)

オクタヴィアの拳が急激に逸らされ、隣で暴れるアマルガムの脇腹へと逸れていく。


「なっ……!?」


「今だ!」


椎名の声に武虎が地を蹴った。

全身に纏っていた赤いオーラを右腕一本へ絞り込み、黒く染まりきった拳を突き出す。

オクタヴィアの拳によって、わずかに態勢が崩れたアマルガムへ、断裂猛襲(ブレイクアサルト)の黒い爪が深々と突き刺さった。


「グォオオオオッ――!!」


アマルガムが、初めて明確な悲鳴を上げる。


「私の可愛い子に、何してくれてるのよ……!」

オクタヴィアの声に、抑えきれない苛立ちが滲む。


オドントダクティルスの右腕を地面に向ける。


ピチュン!


小さな、しかし空気を切りさく確かな音。

一拍遅れて、ドォォォォンッ!!と炸裂音と共に、直哉たちの足元の石畳が崩れる。


その隙を突くように、オクタヴィアとアマルガムが同時に後方へ跳び、間合いを取り直す。


「ふぅ」

オクタヴィアが、不利になっていく場の空気を変えるように、大袈裟に息を吐く。

そして激しい攻撃によって、ボサボサになった長い金髪をばさりとかき上げた。


「転移門で会ったのが1ヶ月前。まさかここまで成長するとはね」


「――だから言ったろ。もう、以前とは違うんだよ」

武虎が、拳を構え直しながら笑う。


「トラ、陽平、真弓さん、椎名さん。このまま押し切るぞ!」

直哉の号令に、4つの返事が重なる。


(あの時は、崩れ落ちる研究所を背に、手も足も出ないまま逃げることしかできなかった)

一瞬、直哉の脳裏を過去の光景がよぎる。


だが今は違う。

俺たちの攻撃は、確かにオクタヴィアを追いつめている。

その事実だけで、5人に力が漲っていく。


「うふふ、ほんとに嫌になっちゃうぐらい楽しみね」

オクタヴィアが、笑みを崩さないまま呟いた。


「……なんだと、どういう意味だ?」

直哉が、警戒するようにバットを握り直す。


「あらあら、乙女心がわからないのかしら。

お楽しみはこれからってことよ」

くすり、と喉の奥で笑う。


びりびりと、肌を刺すような気配に、全員の肌が粟立った。

オクタヴィアの足元から悪意に満ちた魔素が陽炎のように立ち上り、重く渦を巻いていく。

これまで感じたどの気配とも、明らかに違っていた。

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