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現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
奪われた龍脈

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第227話 出発前夜

是非、ブックマークか評価を。

私にガソリンをください!!

燃えた木々が纏まり、折り重なるようにして生まれた巨大な炎樹(トレント)

すでに4人の猛攻を受け、その巨体はあちこちが崩れ落ち、ボロボロになっていた。


それでもなお、丸太のような腕が唸りを上げ、4人へと殴りかかる。


「っ――散れ!」

直哉の声に、4人がそれぞれ左右へ跳んだ。

振り下ろされた腕が地面を叩き、焼け焦げた土が跳ねた。


武虎が、その隙を掻い潜るようにして懐へ飛び込む。


「オラァァァッ!!」


武虎の拳が、燃え盛る幹の中心に突き刺さる。

断裂猛襲(ブレイクアサルト)の一撃が、幾重にも折り重なった炎を貫いた。

巨躯が、大きく傾ぐ。


「今だ、陽平!」

直哉も追撃しながら叫ぶ。


「うおおおおっ!!」

陽平の難陀(なんだ)が水の奔流となって、根元を薙ぎ払った。

白い蒸気が噴き上がる中、炎樹(トレント)の巨体がゆっくりと地に崩れ落ちる。


轟音とともに、幹の内側に凝縮されていた炎が四方へ弾け飛んだ。

飛び散った火の粉は、地面に落ちると芽吹くように形を変え、小さな炎の木が次々と生え出す。


「おぉ……」

真弓が、思わず声を漏らした。

まき散らされた炎は消えることなく、宙をちらちらと漂っていた。

無数の蛍が舞うように、赤とオレンジの光が森の空間を埋めていく。


「……綺麗だな、こういう時だけは」

武虎が肩で息をしながら、その光景に見入っていた。


『レベルアップを確認しました』


イチカの声が、直哉の頭の中に響く。

つられるように、武虎たちもそれぞれのスマホを取り出した。


5日間に渡る修行の成果か、4人の合計レベルは、2つ上昇していた。


レベル:22→23→24

体力:115→123→131

筋力:117→125→133

敏捷:139→148→157+15

器用:102→110→117+11

知力:100→107→113

特殊能力:現象伝導フェノメナル・リンク、時穿つ瞳クロノス・ハック、瞬閃六連撃アクセル・バースト、風の加護、水の加護

特殊能力イチカ:分体生成アバター

内在魔素:959→1022→1073

内在魔素イチカ:523→555→582


「マジか! やった、レベル上がったぞ!」

武虎が拳を突き上げ、盛大な雄叫びを上げた。

「これでまた一歩――」


「もう帰ろう、暑い!!」


陽平が、流れをぶった切るように叫んだ。

「頼むから、もう帰らせてくれ! これ以上ここにいたら干からびる!!」


武虎が呆気に取られた顔で陽平を見る。

「お前、俺の感動返せよ」

「知らないよ、暑いんだもん!!」


柳太郎が、小さく笑った。

「よくやった。今日はここまでにしよう」


* * *


一同は転移門を使い、1層へと転移した。

焦げた木々の匂いから解放され、ひんやりとした石畳の空気に、全員がほっと息を吐く。


そのままダンジョンを出て、施設のシャワー室で汗と煤を洗い流した。

冷たい水が肌を伝うたびに、こびりついた熱がようやく抜けていく。


「はぁ……やっと人心地ついた」

陽平が、頭からシャワーを浴びながら呟いた。


着替えを済ませ、休憩室で買ってきた飲み物を口にしていると、岸本がやってきた。


「皆さん、お疲れ様です」

岸本が資料を片手に、いつもの淡々とした口調で切り出す。

「五十嵐さん、篠崎さん、最上さん、指川さん――皆さんと、連絡が取れました」


「お、マジですか!」

陽平が身を乗り出す。


「はい。3日後に、こちらへ集まっていただくよう伝えてあります」

岸本が続けた。

「それまでに、皆さんも体を休めておいてください」


柳太郎が頷いた。

「わかった。ちょうどいい、いったん体を整えよう」


* * *


3日後、ダンジョン課の会議室に、9つの人影が集まっていた。


「よう、達者そうだな」

五十嵐が、柳太郎・篠崎・最上・指川へ順に声をかける。

「そっちこそ、相変わらず血の気が多そうだ」

篠崎が笑いながら肩をすくめた。


篠崎と最上は、すでに何度も顔を合わせている武虎たちへも、軽く手を上げるだけで済ませた。


見知った顔ばかりの中、五十嵐だけが武虎たちへ向き直る。

「初めまして、五十嵐拳吾だ」

「藤堂武虎です、お願いします」

武虎が笑いながら手を握り返す。

陽平・真弓・直哉も、それぞれ短く名乗った。


続いて、指川が陽平と真弓の前で足を止めた。

「指川だ。君らとは、初めてだな」

「あ、はい、清閑寺陽平です」

陽平が慌てて頭を下げる。

真弓も、軽く会釈を返した。


指川の視線が、武虎と直哉へ移る。

「お前らとは、3層のイレギュラー依頼か?」


「はい、あの時はありがとうございました。あとゴブリン王の時も」

直哉が頭を下げる。


「そういえば、そうだったな。あれも中々大変だった」

指川が、懐かしむように目を細めた。


「ええ、でも今回はもっと、厄介になりそうです」

直哉が、苦笑いを浮かべた。


「なるほど、怖いね」

指川が、言葉とは裏腹に楽しそうに笑う。


自己紹介が一通り終わると、岸本が資料を配った。

「では、今回の任務内容を改めて確認します。

目的はオールドマーケットの制圧、および神谷さんを狙う勢力の排除です。

相手は少なくともA級3人、S級1人」


一同の間に、緊張が走る。


「まず、こちらの映像を」

岸本がモニターを起動する。

画面に流れたのは、ラオフェンとの死闘――大広間を舞台にした、直哉たちの戦いの記録だった。


映像が切り替わる。

今度は、柳太郎とヴェルクスの戦いの一幕だ。


見終えた五十嵐が、腕を組んだまま黙り込む。

「……こいつが、A級か」

「はい」

「なるほどな、藤堂さんが手こずるわけだ」


篠崎が眉を寄せた。

「S級は、この上、ってわけか」

「厄介な仕事になりそうね」

最上が呟く。


指川は無言のまま、消えたモニターを見つめていた。


五十嵐が、拳を握り込んだ。

「正直言うとよ――俺より強いかもしれねぇ相手なんて、久しぶりだ」

その一言には、いつもの余裕がなかった。


「五十嵐さんよりも、ですか?」

陽平が、驚いたように聞き返す。


「ああ、S級ってのはA級4人分なんだろ?

あいつらを4人同時に相手ってのは……まあ、ギリギリだな」

五十嵐が、拳を軽く握り直しながら答えた。


「ギリギリって、できちゃうんスね」

陽平が、目を丸くする。


「できないとは言わないが、やりたくはないわな」

五十嵐が、苦い顔で肩をすくめた。


「敵の拠点の調査は、椎名さんたちにやってもらいました」

岸本が、資料をめくりながら続ける。

「おおよその場所は判明しましたので、あとはタイミングをみて、ですね」


「わかった。計画では、明日からですね?」

柳太郎が確認する。


「ええ、食料など必要なものは、こちらで揃えています」

岸本が頷いた。


柳太郎が、一同を見回し、静かに、しかしはっきりと告げる。

「――明日、異世界に出発するぞ」

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