第199話 残り1秒
是非、ブックマークか評価を。
私にガソリンをください!!
触手が四方から迫る。
左から伸びた一本を本体が叩き折ると、その隙を突くように右側から2本の触手が躍り出る。
しかし、待っていたかのように分身が踏み込み、触手をまとめて吹き飛ばした。
さらに天井からは無数の血槍が降り注ぐ。
だが直哉たちは止まらない。
片方が攻撃を引き受ければ、もう片方が死角へ回る。
血塊が迫れば分身が跳び込み、真正面からバットを叩きつける。
ドガァッ!!
砕けた血塊の破片を、本体が追撃で消し飛ばした。
まるで長年連携を続けてきたコンビのようだった。
「右だ!」
「任せろ!」
本体が低く滑り込み、分身がその頭上を跳び越える。
上下からの同時攻撃が交差し、2人のバットが巨大な血槍へ同時に叩き込まれた。
ドガァン!!
血槍が真ん中から砕け散る。
残り20秒。
* * *
「くはははは!!
増えたところで変わらぬわ!!」
館全体が怒鳴るように震えた。
壁が大きく裂け、天井が開き、その奥から無数の触手が陽平たちへ降り注ぐ。
しかし届かない。
左から迫る触手を本体が吹き飛ばし、右から伸びた触手を分身が叩き潰す。
その包囲をすり抜けた1本だけが陽平へ迫るが、真弓の砕陣弾が横から飛来し、根元ごと撃ち抜いた。
「今ので終わりと思うなよ!!」
ダンッダンッ!!
魔弾が広間を駆け回る。
触手が千切れ、血塊が爆ぜ、その合間を縫って陽平たちはさらに前進した。
「あと少しだ!」
武虎が叫ぶ。
「わかってる!!」
陽平の難陀が唸りを上げる。
ギュイイイイインッ!!
高速回転する刃が血の海を削り取りながら、強引に道を押し広げていく。
残り15秒。
* * *
直哉と分身が左右へ散る。
片方が噴き上がる血流を叩き潰し、もう片方が行く手を遮る触手を砕き続けた。
血槍が飛んでくる。
分身がそれを弾くと本体が打ち返し、そのまま壁へ突き刺した。
「行くぞ、俺!」
「おう、合わせろよ、俺!」
2人は同時に踏み込む。
左右から挟み込むように飛び込み、巨大な触手へ同時にバットを叩き込んだ。
ドゴォォォン!!
衝撃で触手が真ん中から吹き飛ぶ。
館全体が悲鳴のような唸り声を上げた。
「ひゃっほーーー!!」
分身が笑う。
「ナイスだ!」
本体も笑い返した。
残り10秒。
* * *
しかし魔素は確実に削られていた。
分身の輪郭がわずかに揺らぎ、直哉の額を汗が伝う。
それでも手は止めない。
触手を叩き折り、血槍を砕き、血塊を消し飛ばしていく。
だが洋館からの攻撃は減らない。
むしろ時間が迫るほど、館そのものが焦ったように攻勢を強めていた。
「陽平!! トラ!! まだか!?」
直哉が叫ぶ。
「もうちょっと!!」
陽平が吼える。
難陀は悲鳴のような音を立てながら、どんどん奥に侵入する。
「見えてきたぜ!!」
武虎の声が重なった。
残り8秒。
* * *
館が狂ったように暴れ始める。
触手が伸びる、血塊が飛ぶ、血流が噴き出し血槍が降り注ぐ。
あらゆる攻撃が陽平たちを止めるためだけに集中していた。
「通すかよ!!」
直哉が打つ。
分身も打つ。
2本のバットが縦横無尽に暴れ回り、そこへ真弓の砕陣弾と魔弾が次々と重なった。
血塊が爆ぜ、触手が千切れ、血槍が砕ける。
それでも処理しきれないほどの攻撃が押し寄せる。
残り5秒。
グワンと分身の輪郭が大きく揺らいだ。
直哉が歯を食いしばる。
「くそっ……! もう持たねぇぞ!!」
その時だった。
前方から武虎の咆哮が響く。
「見えたァァァァッ!!!」
血の海の最奥。
心臓のような器官が不気味な鼓動を繰り返している。
ドクン、ドクン、ドクン。
館そのものの核。
「トラさん!!」
陽平が絶叫する。
ギュイイイイインッ!!
陽平が最後の力を振り絞った。
血の海が左右へ押し退けられ、一本の道が最奥まで一直線に伸びる。
武虎が飛ぶ。
右腕に黒い魔素が集まり、巨大な鉤爪へと変わっていく。
「断裂猛襲 喰爪の相」
残り3秒、直哉が最後の触手を叩き潰す。
残り2秒、分身が崩れ始める。
武虎は全身の魔素を喰爪の相へ集中する。
右腕の鉤爪が黒く輝く。
残り1秒。
「オオオオオオオオオオオッ!!!!」
裂帛の気合と共に、武虎が心臓へ飛び込んだ。




