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現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
断章 異世界からの侵略

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232/275

断章その11 霧散

気づいたら主人公がまったく登場しない話になってた。

ということで、敵方がメインの話しは断章とし、話数を振りなおしました。

断章はメインの話しと同時並行、という感じです。

本日も断章とメインの話しをアップしています。

広場の中央で、ヴェルクスと柳太郎が向かい合う。


誰も動かない。

ヘリの音だけが遠くで鳴っていた。


椎名たちは息を潜めていた。

見ているだけなのに喉が渇く。


ヴェルクスの周囲では魔素が熱を帯びたように揺らぎ、立っているだけで空気を圧迫していた。

それでも柳太郎は動かない。

低く腰を落とし、静かに構えたままヴェルクスを見据えている。


先に仕掛けたのはヴェルクスだった。

右手の指先が柳太郎を捉える。


「――断罪(ジャッジメント)


柳太郎の目前で火花のような閃光が散る。


バチッ――


発動した力が霧散する。

指先には不快な反発だけが返ってきた。


「くそが、てめえもか」


ヴェルクスの瞬きの一瞬を狙って、柳太郎の姿が消える。


ヴェルクスは反射的に左を向いた。

いない。

振り返りかけた瞬間、衝撃が横から叩き込まれた。


ドォンッ――!!


腕を差し込むのがやっとだった。

なんとか防御が間に合ったが、それでも体は浮く。

景色が一気に流れ、数メートル先まで弾き飛ばされた。


アスファルトを削りながら着地する。

砕けた石片が足元で跳ねた。

「……ちっ」


広場の中央。

柳太郎はすでに元の位置へ戻っていた。

低く構えた姿勢も、静かな眼差しも変わらない。


* * *


ヴェルクスは舌先で奥歯をなぞった。

断罪(ジャッジメント)が効かなかった。

(くそ、この世界の野郎どもは、なんでこうも効かねえ奴らが多いんだ)


内心で毒づきながらも、意識を切り替える。

なら近づいて撃ち込むだけだ。

単純な話だった。


(それにこいつの動き……)


柳太郎の動きを観察しようと意識を向けた瞬間、姿が消える。


ドォンッ!!


胸を貫くような衝撃が走った。

だが吹き飛ばされながらも足が踏ん張る。


アスファルトを削りながら後退し、どうにか体勢を立て直した。


(くそっ、まただ)


歯を食いしばる。

目で追えない。

気づいた時には、もう目の前にいる。


(急に現れやがる……どんなカラクリだ!?)


口元が歪む。

「面倒くせえ野郎だ」


柳太郎は返事をしなかった。

ただ構え、ヴェルクスを見据える。

だが、その沈黙が妙に重かった。


ヴェルクスは識界(しきかい)をさらに押し広げる。


空気の揺れ、石畳の振動、魔素の流れ。

一つも逃さないよう感覚を張り巡らせる。


柳太郎の姿が消えた。

だが、ヴェルクスは慌てなかった。


視界では追えない。それでも識界(しきかい)の中では見えている。

足裏から弾けた魔素の流れ、空気の揺らぎ、石畳へ伝わる僅かな振動。

その全てが、柳太郎の軌道をヴェルクスへ伝えていた。


「見えねえが――見えてるんだよ!!」

叫ぶと同時に体が動く。

考えてからでは遅い。


識界(しきかい)が示した死角へ向けて振り向きざまに肘を叩き込んだ。


ドゴッ!!


鈍い手応えが返ってくる。

柳太郎の体が弾かれ、石畳の上を滑るように後退した。


「なんだ、てめえのその体術?

わっけわかんねぇが、大したことねえな」

ヴェルクスが口元を歪める。


柳太郎は崩れない。

数歩流されたあと静かに立ち止まり、乱れ一つない動作で構えを戻した。


「ぬかせ。

その獣の如き反応は褒めてやる。だが、それだけよ」


言葉が終わるより早く、その姿が再び掻き消える。


今度も視界では捉えられない。

だが、識界(しきかい)は確かにその動きを捉えていた。


左側に反応したと思った瞬間、右を掠めるように高速で動き、次の瞬間には背後へ。

常人なら見失う軌道だったが、識界(しきかい)の中でははっきりと追えていた。


「そこだァ!!」

ヴェルクスが石畳を踏み砕き、識界(しきかい)の示す先へ拳を叩き込む。


直撃。

そのはずだった。

だが拳は何の抵抗もなく空を貫く。


柳太郎の姿が揺らぎ、薄れ、そのまま霧のように掻き消えた。


「なに――」


背後から声が落ちる。


「残像よ」


ゾクリ、と背筋が粟立つ。

反射的に振り返る。

近い、あまりにも近い。

(くそが、間に合えっ!)


嵐撃(らんげき)」「断罪(ジャッジメント)!!」


柳太郎とヴェルクスの声が重なり、足元の石畳が轟音と共に爆ぜ上がった。

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