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現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
断章 異世界からの侵略

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227/270

第190話 血獣

気づいたら主人公がまったく登場しない話になってた。

ということで、敵方がメインの話しは断章とし、話数を振りなおしました。

断章はメインの話しと同時並行、という感じです。

本日も断章とメインの話しをアップしています。

扉を開けた瞬間、直哉は足を止めた。


広間だった。

天井は高く、割れた窓からわずかな光が差している。

床には砕けた家具の残骸が散乱し、壁沿いに錆びた燭台が並んでいる。


そしてその中央に、それはいた。


巨大な狼。

体長は4メートルを超えている。

毛並みは黒——いや、毛ではない。

全身が黒ずんだ血の塊でできていて、表面が絶えずゆるやかに蠢いている。


「……でかい」

陽平が引いた声を出した。


眷属が頭を持ち上げ、赤い目でこちらを向いた。


次の瞬間、跳んだ。


「散れ!!」


* * *


武虎が真っ先に踏み込んだ。

断裂猛襲(ブレイクアサルト)ッ!!」


赤虎を纏った武虎が、眷属の横腹へ拳を叩き込む。

手応えはあった。

だが、ズブ——と、拳が沈んだ。

血の中に埋まったような、嫌な感触。

傷は次の瞬間に、血が流れ込んで塞がれた。


「なんだこりゃ!!」

武虎がすかさず引く。


真弓が後方から瞬陣弾を連射する。10発、15発。

弾が眷属の体を貫くたびに穴が開くが、血の流れが追いついて全部埋まっていく。


「ちっ、ワンコロの分際で!」

真弓が短く吐いた。


『液体に近い性質を持っています。通常の打撃・刺突は効果が薄いかと』

「じゃあどうすりゃいいんだよ!」

「こういう敵は力押しってな、弾けろや!!」


ドンドンッ!!


砕陣弾が連続して叩き込まれる。

命中した瞬間、眷属の表面が押し潰され――弾けた。


ただ貫通するだけではない。

叩き込まれた箇所が内側から破裂し、血の塊が周囲へと飛び散る。


「そらそらそらぁ!!」


さらに撃ち込む。


ドンッ! ドンッ!!


着弾のたびに表面が抉れ、弾性を持っていたはずの体が形を保てず弾ける。

血が流れて埋める――はずなのに、明らかに、再生が追いついていない。


「よし、イチカ、いくぞ!

インパクト!!」

直哉の掛け声に合わせて、イチカが変幻武器タクティカル・フォージを起動する。

直哉のバットにモーニングスターのエネルギーフィールドが形成され、砕陣を纏った赤い輝きが、眷属を横薙ぎに吹き飛ばす。


ドォンッ!!


眷属の胴が、今度ははっきりと“欠けた”。

肉片ではなく、魔素ごと持っていく。


血の飛沫が壁に叩きつけられ、削れた部分は床に落ち、どろりと溶けていく。


再生はあるが――遅い。

確実に、削れている。


「これだ!! 砕陣で叩き続けろ!!」

「わかった、任せろ!」


陽平の難陀(なんだ)が砕陣の魔素を乗せて尾を叩く。

後肢が弾け飛び、眷属がよろめいた。


真弓が砕陣弾を眼球に叩き込む。

眷属が初めて苦しそうな唸りを上げた。


「効いてる!!」


ただし——


『全員の魔素消費ペースが通常の1.38倍に上がっています』

「わかってる。急ごう、長引かせるな」


「わかった!!」


* * *


ぐにゃり。

唐突に狼の首が歪み、そのまま引き伸ばされていく。

五メートル。七メートル。

あり得ない長さに伸びた首が、しなり、一直線に突き出された。


「うおっ!!」


直哉が横へ跳ぶ。


ゴバッ!!


牙が石畳を抉り、床が裂ける。

破片が跳ね、粉塵が舞う。


伸びきった首が、一瞬で元へ戻ったその時、次は胴体がぶくり、と膨らむ。


「……っ、来るぞ!」


押し出されるように、別の塊がせり出してくる。


ズニュ……


2本目の首。

続けて、もう1本。


3つの頭が、独立してこちらをギロリと見る。

違う方向へ向いていたはずの目が、同時に焦点を結ぶ。


陽平、武虎、真弓。

それぞれを、正確に捉えた。


「三方向か……!」

呟く間もなく、3つの顎が、同時に開いた。


「3頭!? 待って待って!!」

陽平が叫びながら後退する。


「陽平、左の首!!」

「見えてる見えてるって!!」


陽平が難陀を振って2本目の首を弾く。

武虎が3本目の首に砕陣を叩き込む。

真弓が1本目の眼球を砕陣弾で抉る。


首が一度引いた。

直後に3本同時に来る。


「くそっ!! 読めない!!」


3人が三方向に散る。

それぞれの首が独立して追ってくる。


直哉は全体を見渡した。

「くっそ、俺を無視するなんて、やってくれるじゃん!」


踏み込む。


ドンッ――!!


床が弾ける。


一気に加速し、伸び切った首の側面へ回り込む――が。


ギロッ!!


首が、こちらに気づき、捻れ、進行方向を無理やり変える。


だが遅い、逃がさない。

踏み込みの勢いを殺さず、宙へ。


さらに――蜻蛉飛び(フリップ・ターン)で空中を蹴る。


ドンッ!!


2段加速で、ねじれた軌道ごと、食らいつく。

一瞬で、距離を潰した。


「逃がすかよ、クリムゾンッ!!」


大剣のエネルギーフィールドが、首を真っ二つに断ち切った。


* * *


首が2本になった眷属が、踵を返す。


壁に向かって走り——そのまま壁に触れた瞬間、体が溶け広がるように染み込んでいく。


「何をっ——」


石壁の表面が血の赤黒い色に染まり、眷属の輪郭が消えていく。

壁と、眷属が、一体になっていく。


「壁に溶けてる!?」


削れていたはずの傷が、みるみる塞がり始めた。

体積が増え、血の色が濃くなる。

赤い目の輝きが増している。


『洋館の魔素を直接吸収して回復しています。このまま放置すれば全回復します』

「それは困る!!」


真弓がすかさず言った。

「ママのおっぱいでも吸ってやがるのか、このワンコロがよ!」


眷属が埋まっている壁に向かって、砕陣弾を縦横無尽に撃ち込む。

爆発によって壁が崩れ、少しずつ眷属の体が露わになっていく。


「今だ、難陀(なんだ)!!」

陽平が吼える。


水蛇がうねり、眷属の胴へと巻き付く。


ギチギチギチ……!!


眷属を締め上げるが、壁に半ば埋まった眷属が、逆に難陀(なんだ)を壁の中に取り込もうと引っ張る。

血のような体が壁へと食い込み、抵抗する。


「……ぐぐぐぐっ、持ってかれる……!!」


押す、引く、押す、引く。

まさに綱引きだ。


難陀(なんだ)が締め上げ引っ張るたびに、眷属も形を歪めて力を逃がす。

一進一退。

どちらも譲らない。


「っ――まだだぁぁぁ!!」

陽平がさらに魔素を流し込む。


難陀(なんだ)が膨れあがり、力が強まる。

それでも――抜けない。

均衡が崩れない。


「いつまで隠れてるつもりだよ!」

横から、直哉が踏み込み、バットに魔素を集中させる。


「うぉぉぉ、出てきやがれ、砕陣・ルクス!!」


ドォォンッ!!


叩き込まれた一撃が、眷属の胴を内側から弾く。

ぐにゃり、と形が崩れる。


「――今だっ!!」

眷属の抵抗が、わずかに弱まったその一瞬。


「うぉぉぉおおおおお!!」

陽平が吼える。


全力で、引く。


ギギギ――!!


壁と繋がっていた眷属が引き伸ばされる。

そして耐えきれず、


ずぽんッ!!


眷属の体が、壁から引き剥がされた。

まるで釣り上げられるように、空中へ放り出される。


「よっしゃ、取ったどぉぉぉぉ!!」


その無防備な体へ――


「終わりだっ!!」


武虎が踏み込む。

身体強化――剛。

膨れ上がる筋肉、拳に集束する力。


断裂猛襲(ブレイクアサルト)!!」


ドォォォォンッ!!!


巨大化した虎の一撃が、眷属の中心を砕き消滅した。

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