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現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
断章 異世界からの侵略

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216/269

断章その1 繁華街の侵略者

是非、ブックマークか評価を。

私にガソリンをください!!

断章は魔素の結集の章と同時並行に進んでいるイメージで書いています。

魔素の結晶は主人公の話しで、断章はその裏で動いている話、という感じです。

*メインの話しも本日アップしています。


* * *


気だるそうな男が繁華街を歩いていた。


人の流れに逆らわず、ただ漂うように進んでいる。

しかし見る者が見れば分かる。

男の歩みには、剣士のそれとは別の危険が滲んでいた。

殺意を凝縮してできたような人間——そういう種類だ。

ただそこにいるだけで、周囲の空気がかすかに変質する。


だが今は、その気配を潜めていた。任務のためだ。


男の名はヴェルクス。

断罪のヴェルクス——オクタヴィア(合骸のバルグ)と並び称される、A級の賞金首だ。


* * *


「あいつが言うには、ここは異世界らしいが……」

ヴェルクスは立ち止まり、あたりを見渡した。


昼の繁華街。

通りの両側に店が並び、見上げるほどの建物がいくつも連なっている。

壁面には看板や文字がひしめき、読めもしない文字が踊っている。

地面はどこまでも黒く均一で、石畳の一欠片もない。

空を仰げば、頭上を巨大な建物が埋め尽くしていた。


(……何だこれは)


人の数も尋常ではない。

全員が同じような格好をして、手に小型の板を持ち、ひたすら歩いている。

壁に巨大な板が貼り付けられており、そこに映像が流れていた。

人が何人か立ち止まって眺めている。

ヴェルクスもつられて視線を向けたが、意味が分からずすぐに外した。


「なるほどな、たしかに違うな」

ぽつりと独り言ちた。


(しかしボスも無茶な指令を出すもんだ。ここから神谷直哉を探せとはな)


人が次々と正面から歩いてくる。

ぶつかりそうになるたびに、向こうの方が先に避けていく。

何度続いても、誰も声を荒げない。


(あー、くそ、それにしても人がうぜえな。プチっと殺しちまうか……)


直後、ボスの言葉が頭の中で反芻した。


——異世界の戦力はまだ不明。まずは穏便にやれ。


ヴェルクスはあたりをもう一度眺めた。

誰も武器を持っていない。暴力の気配がない。

それぞれが用事で動いている、ただそれだけの場所だ。


「はあ」

短くため息をつき、ヴェルクスは歩き始めた。


「まずはコマを増やすか」


* * *


5分ほど歩いたところで、路地の角から笑い声が聞こえた。


20代前後の若者たちが、だらだらとこちらへ向かってくる。

派手な色の上下に、じゃらじゃらとした金属の装飾。

染めた髪。不遜な歩き方。


ヴェルクスはそれを見て、ゆっくりと足を緩めた。


「おいおい、なんだあれ」

1人が指を向けた。ヴェルクスの服装だ。

深色の外套、異世界の仕立てによる、この国にはない形の衣類。

昼の繁華街には、どこをどう見ても馴染まない。


「コスプレ? 中世のやつ?」

「ダッサ。どこの文化祭から来たんだよ」


笑い声が上がる。

ヴェルクスは聞こえていないような顔で、ゆっくり歩き続けた。


(はい、釣れた)


無視したことで火がついたらしく、1人がヴェルクスの前に回り込んだ。


「おいおっさん、無視してんじゃねーよ」


ヴェルクスは立ち止まり、男を見下ろした。

一瞬だけ、男の体が固まった。

すぐに肩をそびやかして取り繕う。


残りの6人も半円を描くように広がり囲む。


ヴェルクスは口の端をかすかに上げた。

(上出来だ)


「あ? 笑ってんじゃねーよ」


男の1人がヴェルクスの胸を押そうとする。

が、その手をヴェルクスが掴む。

特に力を入れたわけでもない。それでも、男の腕は微動だにしない。


「なっ——」

ヴェルクスは手首を静かに戻し、解放した。


男が手首を押さえながら引きつった顔でこちらを見る。

後ろの連中がざわめいた。


「やっちまえ!」

7人が一斉に動いた。


先頭の拳が空を切る。

その腕を掴み、勢いのまま前方へ転がした。

男は受け身も取れず地面に叩きつけられた。


別の男は後ろから羽交い締めにしようとした。

ヴェルクスは振り返らず、肘を後方へ軽く流した。

鼻頭にぶつかり、男は尻餅をついた。


「ごっ……!」


3人目が飛び蹴りを放つ。

それを腕一本でそれを受け止め、脇に放り投げた。

男は壁際に転がり、その場で動かず呻いている。


残り4人が動きを止めた。

誰も前に出ない。


ヴェルクスは7人の中で最も体格のいい男に目を向け、何も言わずに歩いていった。


男が後退する。

ヴェルクスの手が伸びる。


5本の指が側頭部に食い込んだ。

アイアンクロー——男の体がゆっくりと宙に浮いた。

片腕だけで持ち上げられている。


「っ、ぎっ……!」


男がヴェルクスの腕を両手で掴み、じたばたする。

外れない。まったく動かない。


他の男たちは誰も動けなかった。


数秒後、ヴェルクスは男を地面に降ろした。

男は膝から崩れ、その場に座り込んだ。


しばらくして、震えた声が上がった。


「て、てめえ……俺たちのバックに誰がついてるか知ってんのか……!」

虚勢だ。声が揺れている。


「んじゃ、そこに連れてけよ」

顎でしゃくる。


男たちが顔を見合わせる。

逃げるという選択肢がないことは、全員が理解していた。


ヴェルクスは鼻を鳴らした。

(まあ、まずはこいつらから芋づる式に行くか)

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