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現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
亡霊と声

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204/271

第177話 怒濤のレベルアップ

是非、ブックマークか評価を。

私にガソリンをください!!

第4層へ降りた瞬間、乾いた風とともに腐臭を含んだ空気が頬に絡みつき、直哉は思わず顔をしかめた。


「今日はがっつりレベル上げだな」

そう言いながらスマホを取り出し、片手で操作しつつ歩を止めると、武虎が肩越しに覗き込みながら顎を引く。


「例のスレか?」

「ああ、ほらここ。モンスターの湧きが異常って書いてある」

直哉が画面を傾けて見せると、陽平と真弓も自然と近寄り、4人の視線が同じ情報に集まる。


「墓地エリアか……確かに数は出るけど、偏り方がえげつないこともある、だってさ」

陽平がスレッドを読みながら視線を上げ、遠くの地形を目でなぞる。


「効率重視なら悪くないな」

武虎が短く結び、そのまま歩き出す。


4人は言葉を交わしすぎることもなく歩調を揃え、目的地へ向かって進み続けた。


* * *


やがて景色が変わる。

見渡す限りの墓地が広がり、傾いた墓石が密集する地面の隙間からは、じわりと濁った魔素が滲み出ている。

その間を、腐敗した体を引きずるグールがぽつぽつと徘徊していた。


「おい、ここ、雰囲気悪くないか?」

直哉が足を止めて肩をすくめ、周囲を見渡す。


「確かに。それに広すぎだ、囲まれたら終わるぞ」

武虎が視線をぐるりと回し、逃げ道になりそうなラインを測る。


「いや、そうだけど、あんまり奥に行かなければ大丈夫じゃないか?」

陽平が入り口付近の浅いエリアを指し示しながら、リスクを抑えた戦い方を提案する。


4人は短く目を合わせ、それだけで意思を共有する。


「……入口でやるか」

直哉がバットを軽く回し、足の位置を調整しながら構える。


* * *


まずは陽平が前に出て、足音を抑えながらグールへゆっくり近づき、気配を引くように視線を合わせてから静かに後退する。


「……こっちだ」

石を当ててから、そのまま入口まで引き寄せる。


ズル……ズル……


不快な音を立てながら近づくグールに対し、武虎が踏み込みつつ腰を落とす。


ドンッ!!


掌底がめり込み、体勢を崩したその瞬間、直哉が横から入り込む。


「遅ぇ!」

バットを横薙ぎに振り抜きながら体重を乗せ、骨ごと叩き折る。


バキィッ!!


だが――止まらない。

折れた脚を引きずりながら、グールは腕を伸ばして掴みにくる。


「うわ、止まんねぇ!」

直哉が一歩引きつつバットを振り直し、さらに叩き込む。


真弓が銃弾を放つ。


「止める!」

関節を撃たれたグールが一瞬ぐらつき、その隙に武虎が踏み込んで頭部を叩き潰す。


ドガァッ!!


ようやく沈黙。


「……やっぱこれだな」

直哉が息を吐きつつバットを肩に担ぐ。


「怯まない奴を相手にするのが一番疲れる」

武虎がそう言いながら視線を次へ向ける。


その後も同じ手順を繰り返し、4人は交代しながら釣って削るサイクルを回し続けた。


だが――

しばらくして索敵に出ていた陽平が戻ってくると、息を整えながら少しだけ真剣な目を向ける。


「みんな、徳叉迦で周辺を探ってみたんだけど、向こうの方で強力な魔素反応があるよ!」

指差す先は、墓地の奥、靄が濃く沈んでいる場所だった。


「どうする?」

直哉が問い、武虎が軽く舌打ちしながら腕を組む。


「奥は危険だろ、ここでも十分だ」

「でも今ならまだ余力あるし、戻れる距離だと思う」

陽平が即座に返し、真弓も静かに頷く。


わずかな間を置き、直哉が苦笑しながら肩を鳴らす。


「……行ってダメなら戻ればいいか」

そう言って踏み出し、4人はそのまま奥へ進む。


* * *


進むごとに空気が変わる。

肌にまとわりつくような重さを感じながら、直哉は腕を払うようにして歩き続ける。


「……なんだこれ、気持ち悪いな」

「魔素が溜まってる、かなり濃い」

武虎が短く答え、警戒を強める。


やがて辿り着いた場所。


地面の至るところから魔素が滲み出し、ゆらゆらと揺れながら空気に溶けている。

その周囲には、グールとスペクターが密集していた。


「……多いな」

「でもいけるだろ」


判断は下る。


4人は再び釣りながら削る戦いを始める。


しかし――


ゴボッ――


突然地面から大量の魔素が噴き出し、空気中で集まりながら1点に収束する。


ギィィィィ……


空間歪み……


ピキンッ!!


そして割れた。


その中から――

大量のアンデッドが溢れ出す。


「なんだこの数は!?」

「離れるぞ!!」


直哉と武虎が同時に動くが、背後からもグールが押し寄せる。


「逃げ道が埋まる!」


「くそ、強行突破だ、ついてこい!!」

武虎が断裂猛襲(ブレイクアサルト)トを発動し、地面を砕きながら突進する。


ドォンッ!!


1体、2体と吹き飛ばしながら進むが、その隙間を埋めるようにグールが絡みつく。


バキィッ!!


直哉がバットで腕を叩き折るが、千切れた腕が地面を這いながら足首へ絡みつく。


「うっわ、気持ち悪い!」

振り払っても、別の個体が覆いかぶさる。


体勢が崩れる。

すぐに武虎が横から蹴り飛ばし、直哉を引き起こす。


「止まるな!」


だが――囲まれる。


前も後ろも、腐った顔が迫り、伸びる腕に押し潰される。

グールは折れても、裂けても、止まらない。

ただ、押す。

数で、潰す。


「押される……!」

直哉が歯を食いしばり、バットを振り続ける。


1体倒し、2体倒しても、3体が前に出る。

圧が、増す。


* * *


逃げながら戦い、必死に抜けようとした先で――

別のパーティーが、必死でアンデッドを倒していた。


「おい、あんたらも早く逃げろ!!」


直哉が叫ぶと、その男が振り向いた。

「バカ、何言っているんだ、こいつらが集まらないように倒さないといけないことを知らんのか!?」

「えっ、それってどういう」


「百鬼夜行だ。

放っておくとゾンビ・クロットになって、手が付けられなくなるぞ!!」


「ゾンビ・クロット……?」

(『ゾンビの集合体です。数が多ければ多いほど、強力な個体に変化する特性があります』)


イチカの声が静かに響く。

(『4層のモンスターはグール。より高い強度の集合体になる可能性が高いです』)

「まずいじゃん、逃げられないじゃん!」

直哉が吐き捨て、歯を食いしばる。


「……やるしかない」


その言葉とともに、四人は戦列に合流した。


戦いは、すぐに熾烈さを増す。

一体一体は弱い。

だが、数が異常だった。


「左から来るぞ!」

「分かってる!」


声を掛け合いながら、囲まれないよう移動し、確実に数を削る。


ドガァッ!!

バキィィ!!


殴り、砕き、吹き飛ばす。


だが――傷ついても構わず近付いてくる。

腕がもげても、脚が無くても、這いながら噛みつこうとする。

直哉の足にしがみつき、動きを止めようとする。

倒しても倒しても、次の群れが押し寄せる。


「減ってる気がしねぇ!」

「このっ!」

踏み潰し、蹴り上げ、振り払う。


その隙に背後から別の個体が掴み、武虎が引き剥がす。


「囲まれるな、位置をずらせ!」


全員が少しずつ動きながら、円を描くように戦線を保つ。

だが、数が減らない。


「終わらねぇ……!」


腕が重くなる。

息が荒くなる。

それでも振る。

振らないと――押し潰される。


やがて――

「加勢する!」


別のパーティーが合流し、戦線が一気に厚くなる。

総勢11人。


それでもなお、押し寄せる波は止まらない。

場所を変え、呼吸を整え、また群れに突っ込み、減らしては崩し、崩しては引く。


「くそっ、終わらねぇ……!」


だが止まれば終わる。

そのジレンマの中で、ひたすら戦い続けた。


* * *


どれだけ時間が経ったのか分からない。


気が付けば、空間の亀裂は閉じ、最後の一体を叩き潰した瞬間――

静寂が戻った。


「……終わった、か?」


誰かが呟き、全員がその場に崩れ落ちる。

全身が重い。

指先すら動かすのが億劫なほどの疲労。


(『レベルアップを確認。2段階上昇しています』)

イチカの声が淡々と響く。

レベル:18→19→20

体力:83→91→100

筋力:86→93→102

敏捷:100→109→118

器用:75→82→89

知力:73→79→86

特殊能力:現象伝導(フェノメナル・リンク)時穿つ瞳(クロノス・ハック)瞬閃五連撃(アクセル・バースト)

特殊能力イチカ分体生成(アバター)

内在魔素:718→759→794

内在魔素イチカ:426→452→483


「……は?」

直哉がかすれた声で聞き返し、倒れたまま空を見上げる。


「……マジかよ。

でも今はレベルアップとかアレだ。

もう早く帰りたい」

直哉は笑いながら天を仰ぎ、荒く息を吐く。


重い体を引きずりながら、4層の出口ゲートを潜り光に包まれる。


一瞬の浮遊感のあと――

地上の空気が流れ込む。


直哉はその場に座り込んで息を吐き、何も言わずに天井を見上げた。

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