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現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
亡霊と声

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第163話 研究所 ― 招かれざる客

是非、ブックマークか評価を。

私にガソリンをください!!

翌朝。

まだ夜の気配が残る時間から、5人は動き出していた。


コル・フェルム高地の中心部へ向かう道は、どんどん険しくなっていった。


街道はとっくに消え、地図も意味をなさなくなる。

岩の斜面を登り、裂けた地面を避け、やがて《マルチプル・ホバー》も使えなくなり、徒歩に切り替える。


標高のせいか、空気は乾いていてわずかに薄い。


「ヤス、大丈夫か?」

「ふうふう、ええ、大丈夫ですぞ。

こんなこともあろうかと、膝安定具(キネティック・ニー)を装備していますので」

息を整えながらも、ヤスは胸を張る。


「キネティック・ニー?

なんだそれ」

「動きをサポートする魔道具です。

ほら、ここ。

この魔石に着地などで発生した運動エネルギーをため込むのです。

そして、逆に上ったりするときは、その運動エネルギーを発生させ、動きをサポートするのですよ」


「つまり!」

ひょいひょい、と軽やかに岩場を駆け上がる。

「このように!」


「おお、すげぇな」

「さすがに常識外れな動きは無理ですが、この程度なら平地と同じ労力でいけますぞ」

「ほー」


ヤスはさらにマントをばさりと広げた。

「そして極めつけがこちら!」


「それも気になってた!」

直哉が指差す。

「なんか今日、急に装備してたし!」


「これは軽いんデスキネティック・ドレープです。

荷重を最大30キロまで軽くする優れものですぞ。

膝安定具(キネティック・ニー)で足の負担をへらし、軽いんデスキネティック・ドレープで全体の改善。

これで拙者はあと10年は戦えるでござる」

「なんだよ、10年って」


ヤスが目を見開く。

「……おや?

まさかナオヤ氏、ガンダムをご存じない?」


「あー、俺ファンタジー系が多くてさ、ロボット系はあんまり見たことがないんだよね」

「それはいけませんな。

ファンタジーも面白いですが、ロボットも格別なものがありますぞ」


軽口が飛び交う。

だが、その裏で空気は少しずつ変わっていた。


* * *


周囲の警戒は怠らず、それでも和やかに進みながら1時間ほど経った頃。


『皆さま』

イチカが静かに告げる。

『あの斜面を越えれば、研究所が見えるはずです』


「おぉ……やっとか」

直哉が肩を回す。


「結構遠かったな」

「だな」

武虎が頷く。


「でも……妙に静かすぎる気もするがな」

「いや、そうでもないよ」


陽平が口を挟む。

「精霊からかなり大きな嫌悪感が伝わってくる。

なんか、進むにつれてドンドン強くなっていく感じ」


ヤスも続ける。

「魔素の流れもですな。

やはり龍脈の流れは研究所のほうに向かっておりますぞ」


「ってことは、研究所が魔素を集めている……?」

『エルド・フェルミナ様の研究に、そのようなものはありません』


「じゃあ……」

「帝国の占領後、ですな。

そう考えるのが自然でしょう」

ヤスが結論づける。


「帝国って、あれだろ?

周りを植民地化してたっていう……」

直哉が眉をひそめる。

『はい。

支配的で、外部に対しては強圧的な国家でした』


「……気合い入れ直すか」


* * *


岩場を越えた先に――それはあった。

灰色の景色の中で、不自然なほど整った構造物が浮かび上がる。


「……イチカ、あれが?」

『はい。研究所です』


「中に転移門が?」

『実験区画に設置されています』


「結構でかいな」


「書物などもあるのですか?」

『はい、ございます。

研究所は、居住区画、研究区画があり、奥に実験区画があります。

転移門はその実験区画に設置されています』


「居住区って、1人じゃなかったんだ?」

『はい。

エルド・フェルミナ様の住居はこことは別の場所にあります。

ここの居住区画の多くは、研究員が使っていた区画です。

多い時は50名ほどの研究員が暮らしていました』

「へー、結構一杯いたんだな」


『研究も様々行われていました。

転移研究は研究区画の東側ですので、後ほどご案内いたします』


「他にはどのような研究をしていたのですか?」

『安田様の興味を持ちそうなものでいいますと、転移、重力制御、空間圧縮でしょうか。

その他にも、時間制御、魔素変換、老化抑制、思考共有、疑似生命体、召喚といったものです』


ヤスの目が輝く。

「ほー、随分あるのですね。

しかしさすがイチカ氏、拙者の好みをずばりですな。

皆さん、拙者、転移、重力制御、空間圧縮の研究書を拝借したいでござる!」

「わかったわかった、行くから鼻息荒く近づくなよ」


* * *


イチカの案内で、様々な書物を荷物に入れたヤスは、ホクホク顔だ。

「いやはや……眼福でござる……」


イチカからの勧めもあり、研究区画にあった書物はすべて回収した。

回収するときに、どうしてもヤスが本を開いてしまい、止めるのが大変だったほどだ。


「しかし、書物とか道具とか全部持っていっちゃってよかったのか?」

『はい、その方がエルド・フェルミナ様も喜ぶと思います。

エルド・フェルミナ様は、折あるごとに知識は受け継ぎ、蓄積させるものだとおっしゃっていました。

誰も見ないところで朽ちるより、皆さまの手に渡ることを望まれます』


「そっか、ありがとう。

さて、あとは転移門だな!」


『転移門は奥の実験区画です。

ご案内いたします』


奥へ進むにつれて——

明らかに“何か”が濃くなっていく。


『皆さん、奥から何か懐かしい気配を感じます』


「懐かしい気配って……?」

『これは……私と同型のSUの波形です』


「イチカと同じSUって、確か16機いたんだっけ?」

『はい、そうです。

エルド・フェルミナ様の手により、みんなが活動休止状態に変化したはずですが、一体なぜ……』


「まあ行ってみればわかるだろ、行こうぜ!」


* * *


「おい……」

武虎が低く言う。


「この先、大丈夫か?」

「なんか……イヤな感じするな」

真弓が腕をさすった。


「精霊もかなり荒れてるよ」

陽平が顔をしかめる。


『外在魔素濃度が急激に上昇しています。

さらに——魔素に“害意”のようなものが混ざっています』


「……ううう、拙者もなんか気持ち悪くなってきました」

ヤスが顔をしかめる。


5人は、覚悟を固めて進んだ。


そして——扉を越えた瞬間。


「……なんだよ、これ」

そこは、完全に異質な空間だった。


床も壁も、パイプに覆われている。

そしてその全てが——

中央の転移門から繋がっていた。


大小さまざまな管が脈打つように伸び、無数のカプセルへと接続されている。

カプセルの中では何かが、漂っていた。


「……うえ、バイオじゃん」

陽平が顔をしかめる。


「キモ……」


中に浮いているのは、生物だった。

だが、どれも“まともな形”をしていない。


生物はどれもこれも歪で、いわゆるキメラ、と呼ばれるものだった。


イチカの声が響く。

『これはキメラです。

異種生物の融合は条約で禁止されています。

昔、融合させた生物が暴走し、多大な被害をもたらしました。

これはユニオン・ブレイクと呼ばれており、人々の記憶に深く刻まれています』


沈黙。


そのとき——転移門の影から声が聞こえた。


「おいおい、侵入者かよ。

ったく、ここの警備システムはどうなってやがんだ」

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