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現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
異世界の余波

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第155話 秘密のリスト

是非、ブックマークか評価を。

私にガソリンをください!!

「ほほお……」


モルデガルドは、足を止めて周囲を見渡した。

ガラス張りの壁に映る自分の姿を見て、一瞬だけ眉を上げる。


「ここが、地球というところか」

「はい」

隣に立つ田所が、小さく頷く。


「身分証と住居の正式な手配には、数日ほどかかります。

それまでは、こちらのホテルでの滞在をお願いします」

そう言って、正面に見える高層ホテルを指し示した。


「随分と高い建物じゃの」

「そうですね。

セキュリティ面も考え、最適な場所を選びました」


エントランスを抜けると、冷えた空気と静かな香りが流れ込んできた。

石畳も土もない床を、モルデガルドは興味深そうに踏みしめる。


「それと、こちらを」

田所が黒い箱を差し出す。

「モルデガルド様のスマートフォンです」


「ほう……これが」

箱を開き、慎重に中身を取り出す。

角ばった板状のそれを、しばらく掌で転がすように眺めていた。


「あいつらも言っておったな。

これで、いろいろなことができるらしいと」

「はい。

基本的な操作は、魔石の補助によって習得可能だと伺っていますが、相違ありませんか?」


「うむ、その辺は問題なかろう。

ただ……魔石の持ち合わせがなくての」


「お任せください。

当座分の魔石と、生活費につきましては、すでに用意してありますのでご自由に使ってください。

またご入用の際は、いつでもお申し付けください。」


「ほほう」

モルデガルドの口元が、わずかに緩む。

「それは助かる。

遠慮なく使わせてもらうぞい」


「ありがとうございます」

一拍置いて、田所は続けた。


「それで……

早速ですが、能力の件について、1度だけ能力を使っていただき、“リスト”を作成していただきたいのですが……」


「当然じゃな」

モルデガルドは即答した。

「おんしらは約束を守ってくれた。

ならば、次は儂の番じゃ」


スマートフォンを懐にしまい、周囲を見回す。


「能力を使ってもよい、静かな部屋に案内してくれ」

「はい。こちらに」


* * *


案内されたのは、小会議室だった。

窓はなく、壁は吸音材で覆われている。

照明は最低限で、時計の秒針の音だけが妙に響く。


「……うむ、悪くない」

モルデガルドは椅子に腰を下ろし、机に手を置いた。


「では、始めるとするかの」


視線が田所に向く。

「で、何に対して悪意を持つ者を探すんじゃ?」

「それでは……」


* * *


約1週間前、霞が関。


「奥野局長」

ノックの後、田所が局長室へ入る。


「神谷さんから連絡がありました。

能力者――モルデガルド氏の協力が得られたとのことです」

「そうか」


奥野は書類から目を上げた。

「状況は?」

「現在、カルネアの街まで到着しているそうです。

あと4日ほどで、ラグナに到着予定とのことです」


「よくやってくれた」

短く頷く。


「それで……

1度、能力を使ってくれるそうですが、何に対するリストを要求しますか?

やはり、神谷さん本人でしょうか」


「いや」

奥野は首を振った。

「現時点で、彼に直接悪意を持っている者はいないはずだ。

特異点の正体も、転移能力も、まだ秘匿されている」


少し考え、結論を出す。

「GRT研究機構だろう」

「……なるほど」


「おそらく、あそこに悪意を持つ者は、将来的に神谷さんにも向く可能性が高い」

「承知しました。

では、その方針で進めます」


* * *


「で、何に対して悪意を持つ者にするんじゃ?」

「GRT研究機構に対して、でお願いします」


「……わかった」

モルデガルドは、深く息を吸った。


「下がっておれ」

低い声とともに、床に影が滲む。


龍脈怨録ブラック・インデックス

呟いた瞬間、床から黒い影のような手が幾本も伸び上がり、モルデガルドの腕に絡みついた。


影は、彼の手にペンを握らせ、意思を持ったかのように紙へ文字を刻ませる。

カリカリカリ、と規則正しい音。


「……これは」

やがて影は消え、紙だけが机の上に残された。


「ほれ、これじゃ」

差し出された紙に、田所は目を落とす。


「名前、性別、年齢、所在地……

それに、この“補足”という項目は……」


「そやつが、世間に知られたくないことじゃ」

モルデガルドは淡々と言う。


「悪事が書いてある時もあるし、個人的な事情が書かれている時もある。

儂はよう知らん」


「よう知らん、って……」

「能力を見たじゃろ」

机の下を指す。


「あの黒い腕は、龍脈の記憶じゃ。

儂は要求し、龍脈が応える。

内容の正誤は、儂の関知するところではない」


「……なるほど。

今まで、外れたことは?」


「ないの」

「……わかりました。

むしろ、こちらには都合がいいかもしれません。

これだけの情報があれば、後は我々で裏取りが可能です」


「よし」

モルデガルドは立ち上がった。


「ではホテルとやらに案内せい。

儂は早く、そのスマホとやらを触ってみたいんじゃ」


田所の背を軽く押す。

「ほれほれほれ」

「わ、わかりました。

押さないでください」


* * *


「なるほどな……」

奥野は、上がってきた報告書を読みながら呟いた。


「それと」

田所が続ける。


「帰り際に、モルデガルド氏が教えてくれました。

能力は条件次第で、映像化も可能だそうです」


「映像化?」

「場所と時間の指定が必要ですが、それさえ提示すれば、過去の出来事をホログラムのように再現できると……」


奥野は、無言で天井を見た。

「……異世界の権力者が欲しがるわけだ」


視線を戻す。

「便利だが、危険な能力だな」


しばらく考えてから、指示を出す。

「モルデガルド氏には、最大限の便宜を図れ。

日本を好きになってもらうことが最優先だ」

「承知しました」


「それと、思想面のケアもだ。

敵愾心を持たれたら厄介だ」

「はい。

予算はJPギルドから出せばよいですか?」


「ああ。

必ず他国より高い水準で頼むぞ。

魔石の支給についても、本人と相談して決めていい」

「承知しました」


田所は1つ、懸念を口にする。

「局長、公安には、どう説明しましょうか」


「それはこちらで考える。

信頼関係が築ける前に、追加で能力使用は絶対に依頼しないようにな」

「はい」


「まずは――

味方でいてもらうことが優先だ、頼んだぞ」

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