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現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
異世界の余波

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第151話 混魔胎動《こんまたいどう》

是非、ブックマークか評価を。

私にガソリンをください!!

また唐突に空から老執事の声が聞こえてくる。

「おめでとうございます、第2の試練クリアです」


「なあ、なんだよ、今の試練!」

「胸糞悪い思いさせやがって、こんなんに意味あるのかよ!?」


「お答えしたいところですが、すでに第3の試練が始まっております。

第3の試練に打ち勝つことができたら、お答えしましょう」


『皆さん、注意してください。

井戸から噴出している魔素量が膨れ上がっています』

イチカの言葉に呼応するように、地面が激しく揺れ出す。


「一体何が!?」

「みんな、下がるんだ!!」


ズズズズズ……ズズズズズッ


「なんだ……この揺れ!?」


井戸から血のような真っ赤な液体が、空に向かって垂れていく。

それは中空でパシャンと跳ね、どんどん溜まっていく。


数滴ずつだった水滴が、チョロチョロになり、そしてやがて蛇口を全開にしたように、井戸から噴出す。


「あ、あれはいったい……」


中空に溜まった液体からは、ドプリという音と共に無数の目や口、手が出てくる。


「なあ、あいつから出てる魔素、なんかおかしくねえか?

1つじゃないっていうか、なんかさ」

「トラさんもそう思いました?

俺もです、なんかいろいろな人の魔素が混じっているような……」


「直哉、あんたの魔素、混じってる?」

「えっ、なんでよ!?」


『直哉、あなたは第1の試練で魔素を扉に吸収されました。

もしかしたらそれが原因かもしれません』

「俺の魔素も、あんなやつにいいように使われるってのかよ!」


『今、それを言っても始まりません。

皆さん、とにかく無識界(むしきかい)は絶対に解除しないでください。

非常に精神を狂わせる魔素が、周囲に渦巻いています』

「わかった」


そうこうしている内に、液体はどんどん形を成していく。

無数の口から恨み言や叫び声が聞こえてくる。

そして、無数の全ての目が4人を睨んだ。

挿絵(By みてみん)

「来るぞ!!」


* * *


『あれはハキーシャと呼ばれるモンスターです。

別名、魔素喰らいとも言われています。

魔素による攻撃は吸収される可能性が高いです。

武器には魔素を纏わせないよう注意してください』


武虎が拳を握りしめた。

「吸収ねぇ……めんどくせぇタイプだな」


真弓が銃を構えながら舌打ちした。

「飛んでるくせに、あんま動かねぇのが逆に気持ち悪いんだよ」


陽平は木刀を握り直し、慎重に距離を測る。

「……まずは試してみる。水操(ミズノ・シラベ):壱式 難陀(なんだ)!」


水蛇の蛇腹剣が走り、ハキーシャへ向かう。

だが――


ハキーシャの口の1つがガバァと巨大に開き、水蛇を飲み込んでしまう。

「げぷぅ……」


「まじかよ、喰いやがった……」

「おいおい、それアリかよ」

武虎が眉をひそめる。


直哉が前へ出た。

「なら、俺たちが行くしかないよな。

トラ、蜻蛉飛び(フリップ・ターン)で詰めるぞ!」

「おうよ!」


2人は地面を蹴り、蜻蛉飛び(フリップ・ターン)で一気に加速した。

空中で急制動、角度を変え、ハキーシャの死角へ潜り込む。


直哉のバットが唸る。

「砕陣ッ!」


赤い衝撃が走る――が。

ドプンと表面が波打ち、巨大な爪が生えてくる。

その爪でバットを受け止めると、そこから砕陣の魔素が見る見る吸収されていく。


「ちょっ……吸うのかよこれも!?」


真弓が地面から援護射撃を開始する。

「なら連続弾でどうよッ!」


青白い瞬陣弾がマシンガンのように放たれ、ズダダダダダッとハキーシャへ着弾する。

だが――


3発、4発、5発……

すべて吸収されていく。


「くそっ、全部吸われ――」


18発目で吸収の限界を超えた。

ハキーシャの体表が一瞬だけ破裂し、青い火花が散る。


「入った!!」


だが次の瞬間――


ハキーシャの体が震えた。

吸収した魔素が、逆流するように膨れ上がる。


「……来るぞ!」


ズバァァァァッ!!


1つの口からは陽平の難陀(なんだ)、1つの口からは直哉の砕陣を纏った血の塊、そして別の口からは真弓の瞬陣弾。

吸収した攻撃を、そっくりそのまま撃ち返してきた。


「うわっ!? なんで俺のが飛んでくんの!?」

陽平が慌てて跳ぶ。


「ちょ、ちょっと待て! あたしの連続弾まで混ざってるじゃないの!!」

真弓が地面を飛び跳ね回避する。


血の塊が地面を抉り、難陀(なんだ)が蛇のように暴れ回る。

直哉と武虎は飛んできた瞬陣弾を蜻蛉飛び(フリップ・ターン)でギリギリ回避した。


「……魔素攻撃、全部吸収されるのか」

直哉が息を吐く。


「マジで厄介だぜ、こいつ……」

武虎が舌打ちした。


真弓は銃を見下ろし、肩をすくめた。

「……使えねぇじゃん、これ」


そして――腰の後ろから、細いナイフを抜いた。


「しゃーねぇ。久々にこっちで行くか」


陽平が驚いた顔をする。

「姉ちゃん、ナイフなんて持ってたの?」


「隠し武器は女のたしなみだよ、覚えておきな、愚弟」


真弓は軽く膝を曲げ――

次の瞬間、地面を砕く勢いで跳んだ。


ドンッ!!


「はっ……速っ!?」

直哉が目を見開く。


真弓は20メートル近い跳躍で一気にハキーシャへ肉薄し、ナイフを横薙ぎに振る。


キィィンッ!!


金属音のような音が響き、ハキーシャの体表に浅い傷が走った。


「はん、ナイフまでは防げないだろ、このゲロ達磨ぁ!」


真弓は着地と同時に再び跳ぶ。

身体強化の精度が異常に高い。

空中で姿勢を崩さず、次の一撃へ繋げていく。


「……真弓さん、格闘もできたんだな」

直哉が呟く。

「だって、姉ちゃんだからね」


「いや、あれは普通じゃねぇだろ」

武虎が苦笑した。


「身体強化の制御、俺より上手いかもしれない……」

と直哉が呟く。


真弓は跳び、斬り、跳ね、斬り――

ハキーシャの周囲を縦横無尽に動き回り、少しずつ傷を刻んでいく。


だが――決定打にはならない。


ハキーシャはゆっくりと漂いながら、礫のように血の雨を降らせ、時には鋭い爪を伸ばして攻撃してくる。

「……削れてるけど、まだまだかよ」

武虎が拳を握る。


「俺たちも行くぞ。

魔素が使えないなら、なら殴るしかない!」

直哉が前へ踏み出す。


「おうよ!」


2人は蜻蛉飛び(フリップ・ターン)で一気に距離を詰め、ハキーシャの側面へ肉弾戦を仕掛けた。

直哉のバットが激しい音を立て、そして武虎の拳が純粋な打撃として叩き込まれる。


「効いてるみたいだけど……芯まで届いてない!」

直哉が歯を食いしばる。


「でもやるしかねぇだろ!」

武虎が吼える。


陽平も木刀で参戦する。

魔素を乗せず、ただの打撃として振り抜く。


「くっ……硬い!」


3人の攻撃と、真弓の跳躍斬り。

四方向からの連撃で、ハキーシャの体表が波打ち飛び散る。


だが――


「……くそ、全然効いてる気がしない!」

直哉が息を吐いた。


ハキーシャはゆっくりと漂いながら、大気から外在魔素を吸収する。

そしてそれを使ってさらなら攻撃をしかけてくる。


「決定打が……足りない」

陽平が呟く。


「でも、削れてるのは確かよ」

真弓がナイフを構え直す。


「なら――続けるしかないよな!」

直哉がバットを握り直した。


4人は再び構えた。

ハキーシャの口々から叫び声が、嘆きの声が、空気を震わせる。


決定打はまだない。

だが、確実に追い詰めている。


戦いは――ここからだった。

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