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現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
異世界の余波

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第146話 スマホって大事よね

是非、ブックマークか評価を。

私にガソリンをください!!

「あー、疲れたー……」


扉を押し開けながら、直哉が声を伸ばした。

ギルドJPのエントランスに、4人が戻ってくる。


武虎、真弓、陽平も何やら疲れた表情をしている。

「今日は長かったな……」


カウンターの奥から、田所が顔を上げた。

「ああ、皆さん。よいところに。

お疲れのところすみませんが、今、大丈夫ですか?」


4人は顔を見合わせる。

「ん? どうしました?」

「ちょっと、日本側の動きを共有したくて」


田所はカウンターから出てきて、声を少し落とした。

「実は、神谷さんからご提案いただいた《キュアディジーズ》の件ですが……

少しずつ、動き始めています」


「お、もうですか?」

「はい。

現代医療では治療困難と判断された方を中心に、まずは実績作りから始めています」


田所は一度言葉を切り、眼鏡を押し上げた。

「……効果は良好です。

いえ、正直に言うと、劇的すぎる効果が出ています」


「それは……よかったです、よね?」


直哉がそう言うと、田所は小さく頷いた。

「ええ。ただ――」


そこから先の言葉に、少し重さが乗った。

「……あまりにも劇的すぎて、よからぬ輩も、動き出しておりまして」


「あー……」

直哉は納得したように声を出す。

「それ、ありそうですね」


「転移装置も薬も、スパイ多すぎじゃないですか?」

陽平がぼそっと言う。


「ええ……

昔よりはスパイを取り締まる法律も増えましたが、それでも各国と比べると、

日本は脆弱と言わざるを得ません」

「そうなんすね」


「はい。

我々も、そこに頭を悩ませていまして……

あ、すみません。愚痴のようになってしまいましたね」

直哉は曖昧に笑い、その裏でイチカに声をかける。


(なあイチカ。

なんか、いい方法ってないの?)

(『能力によって、ある程度は防ぐことが可能です』)


(え、まじで?)

(『はい。

対象に向けて害意・悪意を持つ者を検知する、あるいは干渉や報復を行う能力など、様々な系統があります』)


(へー……それって、地球にはないのかな?)

(『あっても不思議ではありませんが、少なくともネットの情報では、そういった事例は確認されていません。

……田所様に伺ってみては?』)


直哉は顔を上げた。

「ねえ、田所さん。

そういうのって、能力で何とかできたりしません?」


「と言いますと?」

「悪意がある人を探し出す、とか」


田所は少し考える素振りを見せてから、答えた。

「……できなくはありません。

ですが、日本では禁止されています」


「禁止?」

「思想信条の自由、という原則ですね。

たとえ危険で過激な考えを持っていたとしても、“考えているだけ”では処罰の対象になりません」


「なるほど」

「厳密には例外もありますが……

ざっくり言えば、実行するまではアウトにならないんです」


「そっかぁ……」

「ただし、予防であれば話は別です。

拘束はできなくとも、事前に危険人物を察知できれば、取れる手段は大きく増えます」


「おっ、それなら?」

「ええ。

あとは、そういった能力を持つ方がいて、なおかつ協力していただければ、ですが」


武虎が腕を組んだ。

「そういえば、日本って能力者の管理ってしてるんですか?」

「探索者は管理しています。

ただ、能力そのものまでは把握していません」


「へぇ」

「能力は、破壊力という意味では例外なく危険です。

ですから、第3層以上の探索者は全員管理対象になっています」

「あ、そうなんだ」


「神谷さんも、規約は読まれているはずですが?」

「あー……

そういうの、すっとばしちゃって……」


「まあ、一般良識を守っていれば問題ありません。

ただ、神谷さんはすでに一流探索者と呼ばれる水準ですし、所得も相当でしょう」


田所は少しだけ真顔になった。

「契約関係には、今後特に注意してください」


「うい……すみません」

「あ、話が逸れましたね。

つまり――その種の能力者は、いる可能性はありますが、ダンジョン課では把握していない、という状況です」


「そいや、こっちのギルドならある程度、把握してそうっすよね」

陽平が言った。

「ギルドに聞いてみます?」


「それは助かります。

ぜひ、お願いできますか」


* * *


結果は、早かった。


「候補は何人かいるそうですけど……」

直哉が言う。

「全員、ランクが高すぎる。

Cランク以下は紹介できないって」

「そりゃそうか……」


「じゃあさ」

陽平が思いついたように言った。

「ヴァルドさんたち経由で、紹介してもらうのは?」


「それ、ありだな」

「よし、それでいこう」


ただし、問題は距離だった。


「……カルネア、遠いな」

「日本だとスマホですぐなのにな。

電話使えないの、ほんと面倒だな」

「しょうがないだろ。

それを何とかするために、田所さんたちも動いてるんだし」


「まーな。……あ」

直哉が手を叩いた。

「ヴァルドさんに、スマホ渡すのって駄目かな?」

「どうだろ、田所さんに聞いてみようぜ」


* * *


「スマホ、ですか」

田所は少し困った顔をした。

「基本的に、まだ異世界の方に渡すのは早いと考えています」


「やっぱり……」

「通信網も完全ではありませんし、街中しか使えません。

それに、行政側には固定電話しか開示していませんので」


「ですよねー」

「ただ――ヴァルドさんはA級。

こちらでもかなり有名な方です。

連絡手段を確保した方が良い、という意見には、私も賛成です」


「じゃあ……」

「あ」

真弓が口を挟んだ。

「ギルド契約、使う、どう?」


「あー……確かに」

「あの契約なら、強制力もありますし」

「それは、いい案ですね」

田所が頷いた。


* * *


「じゃあ俺たち、カルネア行ってきます」


「あ、もう向こうでも携帯使えるんですよね?」


「はい。

ただしカルネアは、まだ中継器の設置が不完全でして」


「どのくらいっすか?」

「街の、5分の1程度です。

行政区周辺だけが圏内ですね」

「なるほど」


「電話する場合は、その辺りまで移動してください」

「了解です!」

直哉は笑った。


「んじゃ、ちょっくらヴァルドさんに会ってきます。

能力者、探してきますよ!」


4人は顔を見合わせ、小さく頷き合った。

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