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現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
交錯する思惑

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第113話 通信計画

是非、ブックマークか評価を。

私にガソリンをください!!

ラグナに戻ってから3日が経った。


JPギルドの1階、田所さんが広間の大テーブルに地図を広げていた。

グラナート連邦の全図だ。

街道が細い線で繋がり、大小の町が点在している。

首都グラナート・セントラルまでの距離を目で辿ると、馬車で10日以上かかることが地図からでも伝わった。


「4人とも、少し時間をもらえますか」


直哉・武虎・真弓・陽平が椅子を引いた。


田所さんが地図の上に指を置いた。


「ここがラグナ。

ここが先日行ったダルヴァ。

そしてここが連邦の首都、グラナート・セントラルです」


「遠いですね」

陽平が地図を覗き込んだ。


「ええ。馬車で10日以上かかります。

しかも途中に宿場が少ない区間がある。

それだけの距離を、今はすべて人が走って情報を届けている」


田所さんは地図から顔を上げた。


「今回の調査で、この世界の一番の弱点がわかりました。

情報が遅い、通信手段がない。

商人は使いの人間を走らせ、行政は手紙を使う。

何かが起きても、数日どころか数週間知らせが届かないことがある。

ダルヴァの担当者も、それが一番の悩みと言っていました」


「そうなんですね」

陽平が頷いた。


「ええ。

だからそこに、我々が入ります」


田所さんは懐から一枚の紙を取り出した。

びっしりと文字と図が書き込まれている。


「目標は、グラナート連邦全域への電話網の整備です」


「電話……」

直哉が繰り返した。


「地球と同じ仕組みの固定電話です。

各街の拠点に設置し、街と街を繋ぐ。

まず第一段階として、街道沿いの主要都市5つを繋ぐ。

ラグナを起点に、順番に広げていきます」


「地球から持ってくるんですか?」

陽平が聞いた。


「電話機と中継器は、現地の素材を使って現地で生産します。

地球の電話設計を熟知したエンジニアを転移させ、この世界で製造できる形に落とし込む予定です」


「電気とかはどうするんですか?」

直哉が聞いた。


「動力は魔石のエネルギーを使います。

ご存じの通り、地球では魔石をエネルギーに変換して動力源にしています。

変換技術はすでにあるので、それを持ち込む予定です」


武虎が腕を組んだ。

「つまり電話機の製造と設置を現地でやって、動力も現地で調達できる、ということか」


「そうです。

一度仕組みが整えば、あとは現地だけで運用できます」


「携帯電話、作らない?」

真弓が地図を見たまま口を開いた。


「はい、作りません」

田所さんははっきりと言った。

「固定電話だけにする予定です。

どこにでも持ち歩ける通信手段が広まれば、製法が模倣された瞬間に価値が下がる。

固定電話なら設置拠点を我々が管理できる。

携帯電話を広めるのは、まず我々がシェアの大半を握ってから、ですね」


直哉は少し考えた。

「通信網を持つ者が、情報を制する、ということですか」


「そうです。

連邦全域に電話網を引いた時、それを管理しているのがJPであれば、この世界での立場は盤石になります。

日本政府としては、それを我々が担いたい」


武虎が口を開いた。

「商売だけじゃなくて、もっと大きい話だったんですね」


「ええ。ただ、急ぎすぎると警戒されるでしょう。

まず実績を作り、信頼を積んでから広げていく。

焦らず、確実に」


しばらく、全員が地図を眺めた。


連邦の広さが、改めて目に入る。

ラグナは端の端だ。

そこから首都まで、街が点々と並んでいる。


「技術者の転移はいつですか?」

直哉が聞いた。


「2か月後ぐらいにお願いしたいと考えています。

その間に我々は現地での関係作りを進める。

まず近隣の街2つとの交渉を固め、設置場所と管理者を確保したい。

電話が来た時にすぐ動けるよう、地ならしをしておく必要があります」


「護衛が必要ですね」

陽平が言った。


「引き続きお願いしたいです。

具体的には、エルタとダルヴァの2つの街への交渉同行です。

来週、出発できますか?」


直哉は武虎たちを見た。

武虎が肩をすくめる。

陽平が頷く。

真弓は無言だが異論はなさそうだ。


「わかりました」


「ありがとうございます。

来週の出発に向けて、明日もう少し詳細を詰めましょう」


武虎が「飯は美味いやつをお願いします」と言い、陽平が「武虎さん……」と困った顔をした。


田所さんが少し笑って「善処します」と言った。


* * *


夜、直哉は中庭に出た。


石畳の上に椅子を出して座り、夜空を眺めた。

地球とは星の並びが違う。

それでも、星が光っているのは同じだ。


「なあイチカ、電話の話、どう思う?」

『規模が大きいですが、実現可能だと思います。魔石から力を取り出す技術はこの世界の職人も持っていますから、動力面での障壁は低いです』


「技術者を転移させるっていうのが大事なんだよな。

現地の素材で作れるなら、軌道に乗ったあとは自走できる」

『そうです。最初の設計と製造ノウハウさえ現地に根づけば、あとはこの世界の職人が作り続けられます。

管理する仕組みを握っているJPが、全体の要になれる』


「みんな一杯考えてるんだな」

『田所様は、商売だけでなくこの世界の構造を変えようとしています。

それに乗っている自覚はありますか?』


直哉は少し考えた。

「……いやあ、話がでかすぎてさ。ちょっと実感ないよな」

『転移は直哉しかできませんから、これからも大きな話がついてくることでしょう』


「そういうもんか?」

『そういうものです』


「なんかドヤった、お前?」

『失礼しました。ただ、事実です』


直哉は苦笑して立ち上がった。


電話網。

連邦全域。


言葉にすると途方もないが、最初の一歩はいつも小さい。

ラグナと隣の2つの街が繋がれば、それが始まりだ。


「やることは、まだまだあるな」

誰に言うでもなく呟いて、直哉は広間に戻った。

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