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最前線  作者: TF


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アフターストーリー 19

そんな考えも吹き飛ぶほどに…現地だからこそ知ることが出来るというモノじゃな…

現地に赴いてこそ理解することが出来ることもある


この大地から安全な場所に戻ってすぐに、激しく後悔したわい。

そんな大地に息子を送り込んでしまったことにの…

生活するために金が欲しいっと言われた程度で軽々しく送り出す場所じゃなかったわい、この場所に来て初めて己の愚行に後悔したわ。


今こうやって振り返ってみると…あの頃のわしがこの大地の事を肌で感じておれば…いや、違うな、冷静に今だからこそ過去のわしだったらどうするのか、導き出された答えは…


なおの事、息子であればこの街を生まれ変わらせるのではないかと期待を込めて送り出しておったであろうな。


なにせ、この街、いやしの大地について王もどうすればいいのか、扱いに困っておったからのぅ。

王都にある様々な管轄から人員や予算、その他もろもろ、相談されておったからのぅ。

無論、わしにじゃなくて、王に直に相談してたんじゃぞ?相談内容を王の傍でずっと聞いていたからな。

あやつは、困ったことがあれば話は聞くが判断が遅く何も提案せんかったらのぅ、そう考えると、月の裏側へと勇敢に旅立っていった、エンコウ・センア・イレブン前王、あやつの方が王としての力量は上じゃったな。


才なくとも王として、この街を良き方向へと導くために良き方法無いかと王も模索しておられた

人員を確保するだけならっと、昔の王が決めたのが、犯罪者と、各地にある小さな村から、志願者を募るっという名の強制的な奴隷の確保っという悪政を強いるしか無かったからの。

一応、貴族の世間知らずが世間を学ぶと言うことであの街に派遣し一定期間研修を行うっという方法で人員を確保していたつもりでおったが、碌な成果は無かったの。


そんな状況じゃったからこそ、息子であるシヨウをあの街に送ることが出来たんじゃよな。

それも、しっかりとあの街を監督する職務を担った者としての立場でな。


本来であれば貴族という立場の者でしか座ることが出来ない席に、自分の息子、いや、貴族という枠組みから抜け、平民となった人物をねじ込むのは、無理難題じゃった。

お陰で、わしは王家に返しきれない貸しを作ることになったんじゃよ。


息子があの街で勤務するようになってから、あの街から上がってくる報告、あの街からの報告書が待ち遠しく、それらを読み上げてくれるのが誇らしく感じてしまっていたのも事実じゃからな。

王の傍で報告される内容に王も関心しておった、よくやっとるとな…


じゃが!その全てを帳消しにする程に要求が多かったのはいただけんかったの!

アレが欲しい、これが欲しいっと我儘ばかりを抜かしおってな!


はぁ…あやつには剣や騎士としての誉れ、王直轄の精鋭騎士としての心構えばかり教えないで貴族としての駆け引きを教えてやるべきじゃったわい。

あやつが欲しい目録に関しては財務のやつ経由で見せてもろうたが、どれも生きる上で必要なものばかりじゃった…財務のやつにこれは必要なものじゃろうから都合つけろと圧をかけ…便宜を図ったものじゃよ。


懐かしい思い出じゃの…

我が息子は…愛する孫ちゃんは…この大地で…頑張ってきたんじゃよな


愛する家族の軌跡を想うだけで喉が絞まり鼻が詰まり、涙が溢れ出そうになる。

何も言わずに涙をこぼすわけにはいかず静かに耐え続ける


わしですらこうなってしまうのであれば…可愛い可愛い娘をこの大地に送ったこやつは、今の大地を見てどう思うのじゃろうか?どう感じるのじゃろうか?

この危険な大地で戦い続けてきた娘の事を…


悪い人間ではないとわかっていても、何処かズレているのが貴族じゃからの

その意見次第では今後の付き合い方を変えさせてもらうぞ?なんつってな。

わしにそんな権限なんてないがの!出来たとしても告げ口くらいじゃな


感慨にふけっていると唐突に風船が口を開き

「すまない、少し止めてもらえないか?あ、ラアキさんも少しお時間をいただいても?」

「?構わんが目的の場所はまだ遠いぞ?」

馬車を止めようとするのじゃが、もよおしたのか?

休憩にしては早すぎやしないか?揺れが少ない作りの豪華な馬車と言えど腰にでもきたか?見た目通り鈍っとるのぅ


馬車が静かに止まりドアが丁寧に開かれると馬車の中を駆け抜けていく匂い…あの頃と大きく変わってしまっいた。

あの、一呼吸するだけで喉が焼けてしまいそうな程、緊張感が漂いひりつくような匂いではなくなっていた。


何処にでもある喉かな平原の匂いが馬車の中を包んでいく


重たいモノが外に出るために一歩動くと椅子から振動が伝わってくる、振動が無くなり従者がわしの顔を様子を伺うように見るので、わしも誘われるとしようかと立ち上がる

外に出て背筋でも伸ばして軽くストレッチでもするかの


馬車から顔を出すだけで思い出してしまう

「…風が冷たいのぅ」

外に出ると頬を、いや、全身を叩いて去っていくように風が吹き抜けていく、直ぐ近くには木々が並んでおり風によって枝を揺らしている。

…この寒さだというのに枯れる気配すらなしか、どうなっとんじゃここの木々は


王都でも、ストック氏のとこでも、作物が育ちにくくなっているというのにあの頃と変わらずに生え続けている

他の大地と比べると目の前の光景がどれだけ異質なのか悠々たる姿で物語っておる…

やはり姫ちゃんが残した書物に書かれている通り、この大地にある全てが他とは違うのじゃろう。


しかし、奥へ進むと街に比べて更に風が…より冷たいのう。

体を暖めるように足を動かし動的ストレッチを行っていると

「木は残す」

背中を伸ばしているとあやつが近くにある木の傍に立ち、木を見つめておる?何をしとるんじゃ?

言葉の意味も気になってくる、何を残すのだろうかと近づくと、言葉の意味を理解する

「この木は、何年もこの大地で生き抜いてきたのですね」

風船が上へと視線を上げると、わしも同じように視線を上げる、そこには数多くの爪痕が残されていた。

そして、視線を下げると弓矢か槍か、その何方かはわからぬが鋭い刃が刺さったのか突いたのか、痕が残されており、よく見ると焼けた様な痕もある。

「そうじゃな、この木は何年もこの大地で生きてきておるのじゃが…」

これだけでは、ただ、爪が鋭い獣がいたのだな、誰かがここで戦ったのだなっとしかわからんじゃろ。

この木々が如何に不可思議でこの大地が如何に異質なのか身をもって知るべきじゃろ

「おぬし、見てるだけではわからぬこともある」

わしらは知っておるが、この大地に来たことがないモノであれば知らぬであろうな

「見てるだけで、といいますと?」

優しく手のひらを木につけおって、それで何がわかるんじゃ、たわけが

「触れて見るだけじゃわからんじゃろ、木をノックする様に叩いてみ」

「こうですか?」

ドアをノックする様に木を叩いた瞬間、イーストのやつめが目を開いて驚いておる

「か、たい?」

一度叩いただけでも違和感を感じてしまったのか、何度も確かめるように木を叩く、それもノックをするように優しく叩くのではなく、段々と強く拳を握り締めて叩き始める。


その都度、目の前にある木が特殊なのだと理解していったのか、顔を青ざめている


もっと驚いて欲しいという悪戯心からなのか、つい要らぬ行動を起こしてしまう。

足元に落ちている普通の木の枝であれば親指の力だけでも折れてしまうであろう細い枝を拾い

「ほれ、圧し折ってみい」

投げ渡すとこの程度の細さくらい容易く折れるはず、一瞬だけ見せた余裕の表情だったが、一瞬で曇ってしまった。

「おれ、ない?…折れない!?」

驚きはだんだんと焦りへと変わっていき、顔を真っ赤にして親指に力を込めて片腕で折ろうとしている。

見栄を張りおって、その枝がどれ程までに硬いのか理解させてやるとするかの。

「おい、従者やそこにある剣を持ってきてくれ」

馬車の荷台に括りつけるように持ってきた剣を指さすと従者が抱えるようにして持ってきてくれる

「ほれ、誰も文句は言わん、その木に向けて刃を振り下ろしてみい」

剣を渡そうとしても

「い、いえいえいえいえ!!貴方様の剣を!!わたくしめ…俺なんかが持ってはいけません!」

ったく、わしの剣だったら気安く触らせんわい

「安心せい、この剣はあの街で誰もが気軽に触れていいごく普通の有り触れた剣じゃ、お前の息子も帯刀しておったじゃろ?量産品の消耗品じゃ」

剣を押し付けると両手で持ったのでつい口角を上げてしまいながら剣を離すと

「おっも!?こ、腰が!!」

必死に両腕で落とさないように堪えたことには褒めてやってもいいのぅ。

「重たいじゃろ?それくらいの重量が無いとこの大地にいる獣の一撃にも耐えられんし、屈強で頑丈な猪…いや、死の大地に住まう兎の首すら撥ね落すこともできんのじゃよ」

どうやって作られておるのかわしも知らんが、かなりの鉄を圧縮しておると聞いたことがある

そもそも使われとるのが鉄なのかもあやしいがな、なんせ、あの姫ちゃんが考案した製法じゃと聞いとるからな

「お主も、昔は勇ましく剣を掲げたじゃろ?その程度の重さくらい、振ってみせい、遠慮せんと目の前にある木に渾身の一撃をくれてやれ」

「は、はい!」

風船は貴族として嗜んできた剣の構えをとるように、鞘から剣を抜き下段の構えをして、一呼吸し精神を統一してから振りぬく様に剣をはし…らせれんかったか

「っく!なんて、何て硬さ!!」

下段から切り抜こうとした剣先は木の表皮すら傷つけることが出来ず止まっておった。

しっかりと、剣先で切ろうとする辺り、こやつも剣技に関してはしっかりと磨いておったのだな

木に触れているだけの剣先が地面へと下ろされ、剣を大地に突き刺しそれにもたれ掛かるように体重を預けている風船に

「その硬い木を獣達は易々と容易くな、傷つけておる、獣達が凄いだけじゃないぞ?当然、鍛えぬいた戦士達もじゃ、この大地にいる戦士達はこの硬い木々を易々と貫いておったぞ」

寧ろ、それくらいやってみせんと、この大地にいた獣、兎すら切れんわ

「そ、それほどまでに…この大地は」

狼狽えながらも確かめるように杖のようにもたれ掛かっていた剣に力を込め頭上まで持ち上げてから、地面を見つめ剣先が揺れてもなお振り下ろすと

「そ、そんなバカな」

切ろうと思った対象物が切れることが無かった、そう、振り下ろされた鉄の塊は大地に落ちていた枝の上に剣先が乗っており、振り下ろされた枝には、切れ目一つ出来ていなかった



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