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最前線  作者: TF


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アフターストーリー 17

先輩がいた、あの頃と同じように、時折、病棟の中はコーヒーの香りで満たされていることがある。

だからか、古い人達はまだこの病棟に医療の父がいる気がすると言っていた。


彼の言葉と同じように苦くて酸っぱい思いを感じさせてくれるコーヒー

そのコーヒーが残してくれる独特な香りがまた、今日も頑張るんだぞっと気合を入れてくれる。


彼に一礼をしてから次の作業へと取り掛かる。

「木箱につめてっと」

お弁当箱のように丸薬を木箱へと詰める。

もちろん、念のために二人分で二日分の丸薬をご用意しました。

丸薬が詰め込まれた木箱を片手に病棟を出ると日の傾きを見て今の時刻を理解する。


想定以上に時間が過ぎてしまっていた。


「待たせてしまったかしら?」

日の傾きからして1時間以上は経過している、基本的にお義父様は待ってくれる方ですけど、姫ちゃんのお父様はどういう人なのか詳しくは知らない。

待たせると激怒する方もいらっしゃるので、出来るだけ早く向かう為に急ぎ足で始祖様が築いてくださった希望の壁…死の大地へと通じている門へと向かう


門の前に到着すると今となっては珍しい馬車が用意されており、その傍で従者さんが腰掛に座って煙を出している。

後ろ姿だけなので手に持っているのが紙巻なのか、葉巻なのかわからなかったので、つい、好奇心でどちらなのだろうかと手元を見ると、珍しいタイプのお煙草を吸われていた。

手に持っているのは細長い筒で、そこの先端が僅かに赤い光をだし、筒から煙を吸いだしてから口からゆっくりと煙を吐き出して一服している。

煙草で安らぎを得る人もいるのだと他の大陸から来た人から教わったけれども…

目の前にいる男性の表情は安らぎを求めているような感じではなかった

「珍しいわね、煙草ですか?」

なので、つい、声を掛けてしまった。

「あ、いや、その…一応、薬草の類でして」

慌てて申し訳なさそうな顔をされてしまう。

煙草などが禁制品だったのはかなり前の話で、今では特に制限は設けられていないわよ?

「あ、いいのよ?吸ってはいけない決まりはなく、いろんな方がこの街に来られるようになってから王都でも禁制品ではなくなりましたので」

ただ、室内での喫煙はご法度で、お吸いになられる場合は所定の場所で尚且つ周りに小さな子がいない場所っという制限をこの街と王都では設けさせてもらっていますけど、ここなら何も問題ないのよ?

ここのエリアであれば特に問題なしとさせてもらっている。

「ちが、違います。その、えっと、本当にこれ、薬草の類で、その」

言い訳ではなく本心で語っている?燻して吸うタイプの薬草?そうなると肺が悪いのかしら?

あることはあるのよ、肺や気管支、または鼻腔などの炎症を抑えるために薬効作用がある草を燻して吸うっていう療法が

後は、吸い込むことで痛みがまぎれるから、痛み止めとして用いることもあるわね。

「肺が悪いのかしら?」

確認の為に話を続けると、煙草を吸っていることを咎めにきたのではないとわかってくれたのか

「え?あ、はい!そうなんです!流石は女王様、お知恵がありますね。その、昔から胸とお腹の上あたりが悪く」

煙を私に当たらないように口先をすぼめて煙を吐き出し細長い筒を指で叩き

「これをね、吸うと…はぁ…痛みが落ち着くと言いますか、その~」

筒を通して煙を吸うと痛みから解放されるのか気がまぎれるのか苦悶に満たされた表情をしている。

「失礼」

その姿が見てられなくなってしまい、了承を得る前に膝を曲げて視線を下げ、指先を従者の胸、胸骨に当て頭の中に譜面を取り出してもらい【歌を歌ってもらう】そう、聖女様が残してくれた歌を

『まったく、その力を乱用すると巻き込まれるわよ?』

いいのよ、ここなら私が何かしても誰も何も思わないわよ

歌を通し、魔力という帯を従者の体へとぶつけ魔力の流れを感じ取り従者の全身へと魔力という名の波長によって検査していく。


波長の流れから、何処が悪いのか診え、即座に傷ついた箇所を再生させる

「なるほどね、肺が傷つき、それに伴って胃の壁も荒れてるわね、これでどうかしら?痛みはもう感じないわよ?」「え?」

手を離すと驚いた表情で固まっているので

「試しに、思いっきり息を吸い込んでみなさいな」

驚いた表情のまま、半信半疑で口から大きくあけ、息を吸い込んでは吐き出すと、目を何度も何度も開いては閉じを繰り返し、此方へ向けられた顔は歓び驚いた顔で、もう一度、確かめるように、次は鼻から大きく息を吸い込み力いっぱい吐き出し

「ぅぉ?ぉぉ!?え?え!?ええ!?」

嬉しいのか確かめるように何度も何度も驚いた表情で深呼吸を繰り返し手に持っている煙草の筒を床に落としたので拾ってあげようと手を伸ばすと、従者の方は膝をつき頭を地面に触れるほどに下げ

「聖母様!嗚呼!これが奇跡なのですか!わた、私は!その様な奇跡なぞ無いと!嗚呼!どうか!どうか!村に!私の村にその奇跡を!」

縋るように手を伸ばしてくる

『ほら、こうなるでしょ?あの方も困ってたのよ?』

だとしてもよ、病人を放置なんて出来るわけないじゃない

「ええ、何れ赴くとしましょう、ですが、これが出来るのは出来ても週に一度くらいです、一度に多くの方を救うことは出来ません」

本当はやろうと思えばこの程度であれば一日で10人くらいはできるけど、押し寄せてこないようにする為に自衛の嘘をつくと

勢いよく顔を上げると大粒の涙を流していた

「で、では、そ、そっそそそ、その貴重な奇跡を、わ、わわわ、わたし、めに?よ、よ、よいので、でしょうか!?おおおお、おね、、、おいくらお払いすれば」

相手からしたら自分の体を直ぐにでも治してくれた相手を疑うという言葉が消えてしまっているのか鵜呑みにしてくれる。

一瞬で人を信じてしまうなんて、ほんっと、凄いわねこの力は

『そういうものよ、教会はそれを見逃さなかったってだけよ』

そうね、この力は色々と危険なのはわかっているけれど、ここなら問題ないわよ。

何時ものように聖母のような雰囲気を出す為に声色や話すリズムを変える。

真似させてもらうわよ?『ええ、ご自由に貴女も立派な聖女となられましてよ』

「お代の方はいりません、貴方は私の愛する娘、その父親と共にある人です、特別ですよ?」

片目を瞑って内緒にしててねっとかわい子ぶるように口元に指先を当ててみると『年齢を考えなさいよ、あと、私はそんな動きしたことないわよ』もう一人の私が呆れた声を出してくる…私もやりすぎたかと少し反省してるとこよ!

「嗚呼、聖母様!この御恩、一生忘れません!!」

しかし、これが効果的だったのか、大量の涙をぶちまけながら頭を下げられてしまう。

こう言う状況になってしまうのはわかっていても、私は傷ついた人を放っておけない。

優しく彼の背に触れようとしたら

「あら?」

背中を押された感触がして振り返ると馬車に繋がれている馬が私の背中を鼻先でつついたのか此方を見ている

「何かご用?」

声を掛けてみると爪先を空中に持ち上げて手招きするような仕草で動かしているわね?

足先に何かあるのかと視線を下げると

…ああ、そういうことね

「足元ごめんなさいねっと」

従者の方が落とした筒、今も中で火種が燃えているため細い煙が浮き上がってきている。

腰を落として筒を手に取り中で小さく燃えている薬草を取り出して地面に捨て足で踏みつぶし消化する。

「賢いわねアナタ」

何度も行った屈むという行為によって悲鳴をあげる腰を叩きながら立ち上がると馬が感謝の気持ちを込めてなのか鼻を摺り寄せてくる

「ふふ、アナタの話は聞かされているわよ?あの子からね…」

悪戯好きでちょいちょい姫ちゃんに悪戯してきたってね

街に戻ってきてからもちょくちょくあなたの事を気にかけていたのよね。

王都に近づきたくないけれど、王都に行かないといけない時は毎回、アナタに会いにいってるって聞いてるわよ?


「娘ちゃん!思ったよりも早かったの!」

馬の鼻筋を撫でていると想定外の方向からやってくるお義父様と…メイドのやつ捕まったのね

顔の引きつったメイドがお義父様を警戒する様に手が届かない絶妙な位置取りをキープしながら此方に向かって歩いていくる。


お義父様の声によって従者の方が急いで立ち上がり「お荷物を」手を伸ばしてくるのでお義父様の為に用意した丸薬が入った木箱を渡すと馬車の荷台に詰め込もうと動き始める


気を使わせてしまったかしら?そんな風に従者の後姿を見守っていると腕に重みにが圧し掛かる

「アナタ…もしかしなくても、かまってちゃんかしら?」

しょうがないわねっと鼻筋を撫でてあげると嬉しいのか尻尾を高く持ち上げている

上機嫌な馬の声が頭上から降り注いでいると

「珍しいのこやつが人にこうも甘えるなんての」「姫様以外で甘える事ってありますぅ?」

私達の姿を見た二人が驚いた声を上げている。

「いや…わしらには絶対に甘えんかったの、そう教育しておるからな、仕事の時以外はちょっかいを掛けてくる悪戯坊主ではあったが」

あら?それじゃ、私ってば、姫ちゃんに次いで甘えてきた名誉ある人物ってことかしら?

誰かに自慢できるわけでもないけれど、特別な感じがして少々誇らしく感じていると

「流石は聖母様~ってことですかぁ?」

それが見抜かれたのか、からかうように口角を上げてきやがって年増め

「っふ、私のように母性溢れる存在だからこそ甘えてくるのよ、お前のような母性の欠片も無い自己主張しかしない我儘な女と違うって事よ」

つい、その挑発めいた言葉に乗っかってしまう

「はぁん?そんなことあるわけないでしょう?」

鼻をふふんっと鳴らしながら近づいてきて馬の鼻筋を撫でる

「ほらぁ?抵抗しませんよ?お馬さんはわかってますよー?」

確かに撫でられても何も抵抗しないわね…

私が特別ではないのだと肩を落とし馬から手を離すと此方をじっと見てくるわね?

馬から距離を取ろうとすると鼻先を此方に向けてくる?

元は貴族と言えど、私の人生を振り返ると馬と関りがあるタイプではなかったのよ、なので、あまり馬と触れ合ってこなかった、ゆえに、この仕草がどういう意味があるのかわからない



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