アフターストーリー 15
久しぶりに会う彼女は顔に小じわを作り、あの頃よりも更に痩せていて髪の毛も手入れが行き届いている様な感じではなかった、苦労があったのだろう
「頑張ってるのよ?凄いでしょ?」
だからといって、そんな彼女に心配するような言葉を投げかけるよりも、こうやって、お道化る方が良いわよね。
艶っぽく髪の毛をたくし上げて写真に撮られてもいいような美しいポーズをきめると
「ほんっと、羨ましい…」
呆れた様な態度をとられてしまうけれど、軽く微笑んでくれる。
「なんで、その年齢で胸が上をむいてるのよ?碌に運動して無さそうなのに!髪の毛も艶があるし!はぁ~ほんっと、どうなってるの貴女?秘訣があるのなら教えて欲しいくらいよ」
教えてもいいけど、貴女絶対に、めんどくさいからやらないでしょう?って言いたくなるのを堪え
「っふ、私が執筆している美について語っている著書があるわ、それを穴が開くほど読みなさい」
言葉に出すよりも私が美について詰め込んで出版している本を読んでもらった方が一番なのよ、本の売り上げどうのこうは関係なく、口で伝えただけだとね、伝えた言葉を思い出しながら実践するよりも、本を読みながらの方が確実なのよ。
「あ~そういうけどね?あれもう絶版してて手に入らないわよ、再販しないの?」
あら?定期的に新しい情報があれば印刷してるわよ?出回ってないのかしら?
「古いのはそうよ、今も定期的に読者層の年代ごとに分けて本を印刷してるわよ?後は、新しい情報や新しい研究結果がまとまってきたら、新しくまとめて印刷してるわよ?美は何時だって進化しているのだから」
この発言に驚いたのか流し目で此方を見ていた目が見開き
「え!?初耳なんだけど…それってさー販売ルート王都限定だったりしない?」
販売ルート?意識したことないわね。
「そうね、委託している印刷所からは、王都で販売しているとしか…それなら、多くに行き渡るように印刷の数を増やした方が良いのかしら?でもね~…売れ残っても仕方が無いから多くは印刷していないのよ」
在庫を抱える余裕も在庫を管理する余裕も私には無いのよ、なので、絶対に売れる数だけしか印刷してないのよね~
「そりゃ、その程度の数しか印刷していないのなら私達みたいな人達の手に渡らないわよー!欲しい人はもっと大勢いるのだから再販してよ!王都になんてね私のような仕事の人は滅多に出向かないのよ?」
その後意見はごもっともね。
私の考えが古いのかもしれないわね、本なんて読まなくなったら誰かに渡したり引き取ってもらったりとして、色んな場所を渡り歩いていき、何れは多くの方に手に取ってもらえると思っていたけれど、購入層を考えると貴族が多いとお聞きしているから、もしかしなくても、書斎で大切に保管されているのかもしれないわね?
「あの街にも流通するくらい数を揃えてよね!あの街のお嬢たちは美しく輝けるのならどんな努力も惜しまない娘達が多い、けれどね!数が少なく手に入りにくい貴重な本を頑張ってお嬢が手に入れたとするじゃない?そんな貴重な品を私みたいなのには、見せてくれないのよ」
美しさの秘訣を独占したくなる気持ちもわかるけれど、あの街の人達なら、深いかかわりがあるだろうし、貴女の職業を知っているから見せる必要性を感じていないだけなんじゃないの?
もしかして、貴女もそちら側の仕事をするようになったの?
「用心棒だからでしょ?」
「今は違うわよー」なんですと?「あの街の用心棒は診察室にいるわよ」
診察室へと指を刺して…言葉の意味を理解するのと同時に問題ごとが起きたのだと瞬時に理解する。
あ!え?うそ!?「え!?あの子に何かあったの!?」慌て詰め寄ると近いっと肩を腕で押し返されてしまう。
慌てている私とは裏腹に、身内であるっていうか母親である彼女が呆れた表情で
「あの子って…もういい歳よ?貴女が想像している様なことは起きてないわよ、この平和な世界で馬鹿をするような奴も減ったわよ、病院に用事があるのは、あの子じゃなくて」「母さんお待たせ~…っぇ!?女王様!?」
待合室に広がった大きな声に視線を向けると、ある人物に似てきている男の人と、その後ろにもう一人誰かが居た。
あの子…私が知るあの子はもっと小さいイメージだったけれど大きくなったのね…
大きくなると、ええ、そうね、似てきている、お父さんに、そうあの馬鹿、カジカに。
若い頃の坊やにとても似ている男性が姿勢を正すと後ろからお腹の大きな女性が顔を出してきて同じように驚いた顔をしている
その組み合わせと先の言葉でどうして病棟にやってきたのか理解できないほど私はまだまだ耄碌してないわよ?
喜ばしい事じゃない!そりゃ、待合室で呆けるのも頷けるわね、何で私も付き添わないといけないのって感じで不貞腐れてたんでしょうね。
「こんにちは~…あら~そういうこと~?」
挨拶をしながらも、ついつい、口角が上がってしまう。
一瞬で状況を理解しつい口角を上げてしまう、カジカと一緒で手がお早いのね~
「そーよ、こいつったら守るべき嬢に手を出しちゃったのよ、それもまだ嬢がデビューを控えている新人よ?店に出る前の前!研修すら始まってない子よ?世が世なら首を撥ねられてるわよ?」
それは良くないわね、身売りしたであろうお嬢さんが稼ぐ前、わかりやすく言えば、商品を横領したって事でしょ?
「あは、あははは」
気まずそうに視線をそらしている、事の重大性を理解していないのね
こう言うところもカジカそっくりじゃない
「その~…母さん、僕たちは先にいってるから~」
二人同時にお辞儀して逃げるように病棟から出ていく
貴方達を裁く権利なんて私には無いのに
「積もる話もある間柄じゃないから、私もいくわね」
それに合わせて彼女もまた立ち上がろうとするので
「お兄さんたちに会わせたの?」
彼女の動きを制止する様に零してしまった言葉に後悔する。
彼女たちの事を思えば聞いてはいけない一言を零してしまった。
「会わせてないわよ、彼らは彼ら、私達とは住む世界が違うじゃない貴族様なんてね、私はもう関わりたくないのよ」
その発言で彼女の背景を思い出してしまう、わかっていたのに、気が緩んでいるわね。
「ごめんなさい」
迂闊な発言に頭を下げ誠意を伝えると
「謝ることないわよ団長、この街に来た女性の多くがそういう女性が多かった。でも、今は違う、時代と共に価値観も変わる、いい街になったってことよ…これも全てあの人のおかげね」
頭を上げるとお互い彼女によって救われたもの同士であるのだと…表情が物語っていた。
「ええ、そうね、慰めてくれてありがとう」
鼻で笑ってから、寂しそうな顔で立ち上がりドアを開けるその背中が悲しそうに感じたけれど、外から聞こえてくる仲睦まじい声を聴くと彼女も彼女でしっかりと前を向けているのだと伝わってくる。
カジカ
あんたの隠し子は立派に大きくなってるわよ
…って、隠してないわね、乙女ちゃん、おっと、カジカの妻であるアルケーさんも彼女の事と彼の事も知っていたわね。
そういう身内のもめごとを絶対に言わないカジカから知らされてなかった私も、そんなことになってるなんてね、後で知ったのよね~、もめにもめて修羅場で大変だったそうだってね、古き戦士の人がね教えてくれたのよ。
ほら?この街の病棟ってね、姫ちゃんのおかげで豪華になったでしょ?近くの街には無い設備が多くあるでしょ?
だからね、近くの街に住む人たちが定期健診で訪れたりすることがあるから、彼女達も何度も会ってたりするのよ。
初めて会った時は知らなかったけれど、それを知ってからなのよね、診察で何度か会っただけの小さな子がカジカの子だって意識するようになったのよね。
あんな小さな子供が、いつの間にか次の世代へと血を繋げていた。
古くは去り、新しきは繋がっていく。
閉じられたドアの向こう側に想いを馳せてしまっている気持ちを切り替えるために軽く深呼吸をする。
っさ、時代を感じていないで私も準備に取り掛からないといけないわね
調剤室に入り何時ものように丸薬の素材を取り出して調合を開始する
今となっては誰も食べないだろうと思っていた丸薬。
スピカが大きくなるころには必要が無くなるだろうと、判断して素材が勿体ないから、在庫を使いきるまでは製造してたのよね~。
ほら、死の大地にいる残された獣を完全に駆逐しきるまでの間は必要でしょ?だから、保管しておいた材料が無くなるまでは製造していたのよね
予想通り、死の大地から完全に白き獣を完全に駆逐しきったと、人の手にあの大地を取り戻したてからは、不要になってしまったのよね。
だから、丸薬を調合するのに必要な材料もね、保管することなくなった、製造することも無く成れば必然と調合用のレシピも忘れていく。
何れ、完全に消えていくレシピになるのだろう…そんな風に思っていたけれど、それはこの街での話で、外の大陸では丸薬の需要が高かったのよ!
そう、この街では不味いから誰も食べない、栄養素だけを取り込むだけの薬なんて、必要な理由が皆無。
今後も不要だと判断を下し製造する必要も無いのだろうと消えゆく忘れられていく薬の一つ
そう思っていたら、外では違ったのよ!この丸薬があることによって多くの人の命が救われたのよね。
事の始まりは、今思い返してみると我ながらどうなのかなって思うってしまうけれどね、この丸薬が余っていたからつい、その、誰も食べないし余ってるし、おやつとして携帯食としてスピカに持たせたのよね、あんなまっずい食料を持たせるなんて親としてどうなのってことよね…
スピカって遠慮するけれど、実のところよく食べるのよ。
だから、外で遊びに出ている時も何か食べたいけれど食べるものが無くて辛いって相談してくれたのよね。
だからって、これを持たせるのも親としてどうなの?って思うけれど、栄養と保存のしやすさ、後、持ち歩きやすいって理由が全てに置いて理にかなっていたのよ…
本人も背に腹は代えられなかったのでしょうね、お腹が空いたら食べたりしていたのよ、それに…本人も食べれないことも無いからこれでいい、なんてことを言ってくれていたから、忙しい日々に追われていた私は、そんな言葉を真に受けてしまったのよね、はぁ、愚か者なのよ私は…




