アフターストーリー 14
「では、いってくるの、また、な」
石碑に頭を下げ月の裏側へと旅立った友たちと別れ足を進めていく…
いこうか、わしが、いや、わしらが超えることが出来なかった果てに…
といっても、年に一度は足を運んでおるのだがな、去年に至っては
スピカのやつが爺ちゃんいこうぜ!って王都に居たとしても、気軽に気楽に運んでくれたからのぅ
情緒も風情も何もかも置き去りじゃわい
そういう此方の気分や感情お構いなしに動くのは…息子の、シヨウの血筋なんじゃろうな、ユキのやつもそうじゃったわい。
下がってしまった首のままでは馬鹿にされると顔を上げ輝く天を見据えることはできてしまったが…
足を引きずるように動かしてしまっている…
─ 病棟へと通じる道端
お淑やかにされど急ぎ足で、されど、統率者として周囲に気を配りながら決して声に出してはいけない愚痴を頭の中で呟いていた
も~お義父様は何時だって、思い付きで行動されるから~、こうやって何時ものように私達を振り回すのよね~。
それにしても、ほんっとお義父様も、変わった人よねーあのまっずい保存食を食べたがるなんて
スピカは味については苦笑いしてるから食べたくないけれど、日持ちするのと、匂いがしないのと、食事を手早く済ませれるからっていう姫ちゃんばりの合理的な考えであの保存食を欲しがるのよね。
今日みたいに遠出するときは携帯しているけれど、お義父様はどうしてかしらね?二日分くらいの食糧くらいなら直ぐにでも手配できるわよ?従者の方もいらっしゃるし簡単な調理で良ければ軽く調理してくれるでしょうに?
ゼンケンさんの考えは昔から読み切れないなぁっと、愚痴をこぼしてると、道端に小さな可愛らしい二人の姿が見える。
今日も相手をしてくれているのね、お姉ちゃんしてるわね~
微笑ましい光景にお義父様への軽い愚痴が全て消え去っていく。
この道を歩いているのだとしたら病棟に向かっているのかしら?それともただのお散歩かしら?どっちでもいいわね、子供達は自由に気ままに、健やかに育ってくれればね。
ルーチェちゃんと小さな子供、えっと、名前何だったかしら?乙女ちゃんとこの姪っ子と研究塔のとこで頑張っている彼の間に出来た子。え~っと…完全に名前忘れてしまったわね、顔を見れば思い出せるでしょ。
微笑ましい二人がお手を繋いで歩いていて、小さな子が此方に気が付き手を振ってくれる
「あー!ぅ?あ~!え、ぅー…あー、ん?」
私を見て嬉しそうに手を振ってくれているけれど言葉が出てこないのはきっと
「ジラさんだよ~」
やっぱり、私の名前をまだ覚えていないみたいね…かくいう私もあの子の名前がうろ覚えなのよね、顔を見れば思い出せると思っていたんだけど~えっと~…
名前を思い出そうと顎先に指を当てていると
「アマリリスだよ~」
ルーチェちゃんがすかさずフォローしてくれる
「そう、そうね!ありがとうルーチェちゃん、こんにちはアマリちゃん」
ちゃん付で呼んでしまい更にうっかりする、この子が男の子なのか女の子なのか忘れてしまっていることに!ど、どっちだったかしらぁ?
話を逸らすように言葉を続ける
「お二人はお出かけかしら?」
「はい、お母さんにお弁当を届けに」
空いた片方の手には大きな袋があることに気が付く
てっきり、病棟にでも行くのかと思っていたら、もう、そんな時間なのね。
「いつも偉いわね、その大きさからしてアマリちゃんとこのお父さんとお母さんの分もかしら?」
「はい、お二人にはいつも母がお世話になってますから~」
まだまだ7歳とお若いのにしっかりしていて偉いわねーこの子は、お母さんとお婆さんと大違いっていうと失礼よね…って、最近フラさんとお会いしたのは何時かしら?
師である先輩の奥様、彼女は少々抜けているところがあるから定期的にお伺いしないとね
「ねぇ、最近、その…お婆様のお体の調子は如何かしら?」
「フラお祖母ちゃん?元気にお母さんといるよ?最近、ジョギングしてないけど元気だよ」
そう、大事はないみたいね。
「あ、お母さんが何時も娘の世話を任せてごめんなさいって朝いうの忘れてた~、えっと、これで大丈夫?」
ルーチェちゃんは何方かというとお祖母ちゃん似かしら?おっとりしているのよね。
「はい、大丈夫よ、私からもアミーさんにお伝えしてもらってもいいかしら?」
「なに~?」
小さく首を傾げて可愛いわね~…『もう一人欲しいわね』って、そうね。そうよね。出来るのならね。
「心配ならたまには顔を出して一緒にご飯を食べなさいって」
「ご飯はいつも一緒に食べてるよ?」
あ、そうだったわね、お昼はいっつも家族みんなで食べてるのよね。
夜になると疲れ果てた顔で滑り込んでくるのよね、毎日じゃないわよ?仕事がひと段落ついたか、体を休めたいときくらいしか返ってこないのよね。
彼女がこの街に来てからも滅多なことが無い限り私に頼ろうとしなかったあの人がね、私と席を一緒にするなんてね~、変わるものね。
奥様の方は、夜は食堂で食べて、今も…先輩と過ごした部屋に帰っている。
絶対に何があろうと、その部屋から出て娘や孫と暮らそうとは思えれないって言っていたのよね。
「なら、訂正、たまにはルーチェちゃんと遊んであげなさいっていうのは?」
「遊ぶ?ん~…私、遊ぶよりもお母さんのお手伝いしてる方が楽しいよ~?」
あー…そうだったわね、この子も、あの一族と同じく例にもれず研究大好きだったわ。
失敗したわね、変に型にはめようとしてはいけないわね、この一族はこれが普通でこれが幸せなのよね
幸せそうに生きてくれているだけで、喜ぶべきなのよね…
あの戦いの後、色々と大変だった。
愛しい人を亡くす悲しみは私達も皆…そう、皆、身をもって体験しているから
あの二人は…本当に大変だった、この街全員で泣いて全員で肌を寄せ合って、支えあった。
そういう流れもあって、研究塔は解散するのだろうって皆が思っていた。
そもそも、この大地から白き獣が消えたら研究塔が研究すること、その対象の多くが無くなるのだと…
悲しみしか残されていないこの街にいるよりも、仕事がある王都へと彼女達は帰るのだろうって思ってた、けど、そうはならなかった、二人ともこの街から離れたくなかったのでしょうね。
今となってはこの街で1,2を争うくらい忙しい部署になってしまった。
「そうねー何も言う事ないわね、ルーチェちゃんも楽しければそれでいいわね」
「うん!楽しいよ!ね~」
「ぅー?…ぅ~…」
アマリリスちゃんはそこまで楽しそうでは無さそうね。
研究塔で遊んではいけないものね。
「アマリちゃんは皆と遊ぶ方が好き?」
「ん~?…んー…」
要領の得ない言葉に可愛すぎて抱きしめたくなる衝動を抑えながら三人並んで歩いていく。
会話を続けながらも動き出した思考は止まることなく流れていく。
そんなわけで、私の家、っというか、私が彼女達の家の隣に引っ越して支えてきたのよ。
その流れでルーチェちゃんとスピカは一緒に姉弟のような関係で育ってきたのよね。
今も忙しい二人に代わって私がお恥ずかしながらも親代わりとしてルーチェちゃんと一緒にご飯を食べたり、一緒にお風呂に入ったり、一緒の家で寝ているのよね。
なんならね~、つい3年ほど前はスピカと私とルーチェちゃんの三人で一緒のベッドで寝ていたのよね。
スピカが恥ずかしがっちゃって自分の部屋が欲しいから~って一人で寝るようになったのよね~…あ、思い出したそれのせいであの馬鹿が母性を燻ぶらせ続けてたまに爆発するようになったのよね『別にいいでしょ』良くないわよ!
誰にも言えない私達の複雑な関係に時折、頭が痛くなるけれど、それがあるからこそ…
思考の渦から抜け出そうと二人の様子を伺っていると
「ぅ~…」
アマリちゃんの様子がおかしいわね?ルーチェちゃんを見上げるように袖を引いて、どうしたのかしら?
あ、眠たいのかもしれないわね。
「ぁ!眠たいの?それじゃおんぶするから頑張って背中に乗ってね」
直ぐに気が付くなんてね、偉いわね。
この子は立派にお姉さんしてるわね、これも、多くの子供達がこの街に来るようになり、多くの子供達が集まって行動する、そのお陰で子供達同士で学びあい助け合うことを知ってくれる。
ルーチェちゃんが屈むとアマリリスちゃんが背中によじ登るので、手に持っている荷物を持ってあげて立ち上がるのを補助してあげると
「わー!らくちーん!ありがとう!ジラさん!アマリリスちゃんが眠たそうだから私いきますねー」
軽くお辞儀してから研究塔へと小走りで去っていく、そんな頑張り屋のルーチェちゃんを見送り
二人の和やかな姿を見て癒された私は気が付けば鼻歌を歌ってしまっていた
病棟の玄関を開けると珍しく待合室に患者が一人、座っている。診察待ちかしら?
一体誰だろうと横顔を覗き込み…って、珍しいわね!
「お久しぶりじゃないの」
相手は覚えていないかもしれないけれど、共にこの大地で戦った女性で、カジカが育成を担当していたのよ…困ったことにこの人の性格もプロポーションも全てに置いてカジカの好みだったのよね…
待合室で呆けている様に座っていた女性、彼女はね、当時は戦乙女部隊に所属していたのよ。
声を掛けてから何も反応が無いので大丈夫かしら?っと様子を見ていると、気が付いたのか此方に顔を向け
「お久しぶり?…って!団長!?変わらないわねー、いったいどうやってるの?」
私の顔を見て誰かわかってくれて胸を撫でおろす、よかった、記憶違いじゃなくて。
今も確か、変わらず隣町で働いているの、よね?会うのが8年ぶりくらいかしら?
前にお会いしたのも、私が妊娠している時?産んだ後?どっちだったかしら?
王都で偶々、会って軽く会話をした時、以来、よね?




