アフターストーリー 12
わしも、王がそんな言葉に甘えるわけもなく軽い口約束だとわかっていると思っておったから気にも留めんかった。
気が付けばじゃ、いつの間にか、娘ちゃんの家と王の部屋に通話が出来る魔道具が用意されていて、二人との間に何とも言えぬ変な関係が繋がってしもうたんじゃよ…
遠い場所であろうと対話が出来る素晴らしい魔道具、わしだって欲しい魔道具!それを王家の特権で突貫で工事しおって!
その魔道具によって現王のやつは、実の母親にできなかったような相談も娘ちゃんにしておるんじゃよ。
うむ、会話の内容を思い返せば、確信できるわい。
娘ちゃんから溢れ出る母性によって現王は心を許し第二の母として心から心酔しておるとみて間違いないじゃろ。
そう、娘ちゃんの言うことは絶対!聖母様は絶対!っと心から心酔しておるじゃろうな。
その原因の一端として、あの馬鹿、宰相のやつであるピーカのやつの影響もあるかもしれんがの
王ですら娘ちゃんの味方をするであろうし、王は、娘ちゃんだけではなくスピカの事も信頼し慕っておるからな。
わしは知っとるんじゃぞ?スピカのやつ、時折、王の寝室に遊びにきておるのをな…誘っておるのは王の方じゃから咎めようがないがな。
王都にいる多くの貴族が、あの姫ちゃんを導き、教会を掌握し、この街の全ての権利を得ているような大人物、力こそ正義を貫いてきた貴族からすれば絶対に頭を下げる。
っとなるとじゃ、王都には娘ちゃんに頭が上がる奴はおらんじゃろうな。
前々から、実の父親ですらひれ伏しておるからの、姫ちゃんの影響でな。
後は~そうじゃの、この街にいる人物だと、どうじゃ?
この街にいた娘ちゃんと同じくらい古くからいる幹部達はもうおらんしな~
メイドのやつも娘ちゃんには反抗的ではあるが、娘ちゃんに対して何かしようという気は一切ないからの~
うむ!おらんな!
いや、まてまて早計じゃな、この街には多くの民が流れ込んできておる。
この街に辿り着いた他所の国の人達は、皆、スピカに救われ、病気や怪我をしておる者は娘ちゃんが治し献身的に支えてくれたと感涙し生涯尽くすことを誓っておるものばかり…それに反旗を翻すやつはおるのか?いるわけなかろうが…そもそも、娘ちゃんが野心を抱くような事はしないじゃろうから、その様な出来事が起きるわけもなく。
では、わしはどうじゃ?わしは…
皆と同じじゃな、娘ちゃんには頭があがらんわい。
愛する妻達かて姫ちゃんに心酔しておって、更には、娘ちゃんの美貌を保つ秘訣を少しでもその叡智を分け与えて欲しいと懇願しておるくらいじゃからな…下手を打てば妻達の機嫌が一気にそこねてしまう。はぁ、こわいこわい。
考えうる限りの力を持つものを考えても誰も娘ちゃんには頭を下げる。
王も、宰相も、教会の司祭も、実の父親も、この街にいる全員が、娘ちゃんには頭があがらない。
…ん?もしかしなくとも、娘ちゃんこそが、この大陸の覇者では無かろうか?
表向きはあやつの忘れ形見である王じゃが、全てを陰で裏で、支配しておらんか?
冷静に考えると、とんでもない立ち位置に娘ちゃんが立っていることに背筋が寒くなる。
心としても、武力としても、財力においても、全てに置いて彼女がこの大陸の覇者であるのだと理解してしまったから
ほ、ほほ、娘ちゃん…な、なりあがったのぅ、わしも身の振り方を考えねばならんのぅ…
そんな事を考える間も、娘ちゃんと風船の会話が途切れることが無く、ずっと、お互いを譲歩しあっておる。
「いいのよ、あの子の父親にそんな風に頭を下げられては困ります」
「ですが私は」
姫ちゃんが言う思考を加速させておる間も、娘ちゃん達はずっと同じやり取りを繰り返しておる、これで何度目じゃ?
まったく、風船のやつも自が硬いからのぅ頭を下げたまま弁明しようとするでない。
そこまで己を苦しめる必要は無いんじゃよな、なぜなら、姫ちゃんに親しい人間は皆、お前の事を知っておるからの。
そもそもじゃ、頭を下げるのだとしたらもっと昔じゃろうて…今更下げるのは違うぞ。
罪の意識から解放されたいだけっとしか受け取ってもらえんぞ?…実際そうかもしれんがの。
「良いのです、これ以上、頭をお下げにならないでください、私達は彼女から貴方の事を聞かせていただいており、全て存じ上げております。ここに来るというだけでも貴方にとって勇気ある決断、この大地に立つだけで裂かれそうな心、想像を絶する痛みを抱えているのだと汲み取っております。薄情かもしれません、結果論だと言われても何も言えません、ですが、私達、いえ、この大陸で生きる者として貴方が彼女を貴族という檻から解き放ってくれたからこそ救われたのです、貴方の心を裂くような決断があったからこそ、この街の今があるのです、今となっては皆、貴方が子を見捨てた人でなしの最悪糞野郎とは思っておりません」
ん?娘ちゃんや?最後の部分に本音がダダもれじゃったぞ?
わしもそこまで思っとらんのに、相も変わらず怖いのぅ…
「ですが」「贖罪だと思うのであれば、今後もまたこの街と変わらず良いお付き合いをしてください」
あのような言われ方をしたとしても贖罪をなさんとする傲慢さ、そこが良くないんじゃぞ?
その様な傲慢な懺悔に付き合う気も娘ちゃんは無いのだと突き放す、わしもそれが正解じゃと思う。
謝る相手を間違えるなっとな。
謝るのなら、ちゃんと本人の前でせい…
ここで重りを脱ごうとするでない。
宣言をするために顔を上げ
「っは!寛大なお心に感謝を!聖母様、月の導きに…感謝を」
宣言が終わると、直ぐに、ふぅっと小さな溜息を零してから助けを求めるようにこっちに二人同時に視線を寄こしおってからに
まったく、こやつといい娘ちゃんといい、わしを頼りにしすぎじゃないかの?
まぁいいわい、姫ちゃんにはわしも盛大に恩を感じておる、これくらい安い事じゃ、任されよ。
「ほれ、もういいじゃろ、お前が感じ取る懺悔は取るに足らん、結果全て良しっという言葉がある、お主が後ろめたいと感じ続けるのであれば、今後も変わらず人の為に尽力せよ、人として共に歩む、協力してくれればそれでよい」
背中を丸めて風船みたいになりよって!もっと背筋を伸ばすように頭をあげんかと背中を叩くと背筋を伸ばし涙を堪えている馬鹿が空を見上げ
「はい!」
天まで届きそうなほど勢いよく綺麗な返事でこの場はしめられた
「それで、貴方は奥へ進むのでしたね、許可証を従者の方にお渡ししております、直ぐにお立ちになられるのですか?」
一呼吸ついたと思うたら、事務的な会話へと切り替わるのでわしらも直ぐに思考が切り替わる
「はい、領主としての責務がありますので、長く席を外すことが出来ないので」
なんじゃ?後継を用意しておらんのか?未だに我が身一つで領地の運営をしておるのかこやつ?
「時間があれば…そうよね、鉱石の納品ついでに今後はお顔をお見せください」
綺麗な営業スマイルが眩しいのぅ、営業スマイルとはいえ、わしには絶対にそのような笑顔を向けてくれんから、わしちょっとジェラシー
「はい、至らぬ私を暖かく向けて頂きなんと感謝の言葉を」
こやつもこやつで、貴族として相手の方が格上だと理解しておるのかへりくだり続けておるの?
「それはもういいですから、この街には貴方の家族もいるのです。自分の家族に顔をお見せになられてくださいね」
「はい」
家族として顔を見せにこい、納品するついでに顔を見せにこい、ふむ、娘ちゃんはこやつがまた自分の領地に引きこもるのだと見抜いておるな。
うんうんっと、娘ちゃんがしっかりと貴族として、いや、領主としての立ち振る舞いが出来ているのだと感心していると
「そして、お義父様は…どうされるの?遊びに来たのでしょ?」
何時も通りの、分け隔てなく家族として、身内としての声色と言葉遣いに胸が絆されてしまう。
娘ちゃんとわしが会話を始めると風船のやつは従者の方へと逃げるように離れて行きおった。
「うむ、そうじゃのう」
風船のやつがあの場所へと向かうのであれば、わしも共について行ってやるのが良さそうな気がするんじゃよな。
「スピカなら席を外しているわよ?何でも赤道直下っていう場所に出向いているから帰りがいつなのか未定よ、あの子曰く、遅くなるらしいわよ?」
せきどうちょっか?知らん土地の名前じゃな、孫にも顔を会せておきたかった、が、わしの都合に合わせさせるのは宜しくないからの…
何せ、孫にしか出来ぬことが多すぎてな、あまり…些細なことで時間を割いてもらうのも忍びないからのぅ、会いたくなったら向こうから遊びに来るからの…おっと、忘れそうになっておったが、王からスピカへと言伝を頼まれていてな、今度遊びにいこうっという他愛も無い内容じゃから、まぁ、今度でいいかの。
にしても、相も変わらず知らない場所じゃな。
「せきどうちょっか?…知らぬ土地じゃな、孫ちゃんにも用事があったが、それはまた今度で良いわい、街の様子とか色々と見回りたいのじゃが」
久方ぶりにあう奴もいるからの、まだおうてないしの~…風船と出歩けば自然とあうじゃろうと高を括っておったが、会えんかったからなぁ、まぁ、会わなくても良いと言えば良いのじゃがな、折角来たんじゃから顔だけでも見せて置きたいと、うーむ、しかしじゃよ?
この風船をこのままにしてもよいのか?っという蟠りがわしの中で膨らんできとる。
どうにもな、このまま、こやつを放置するのは夢見が悪くなりそうじゃし
「うむ、おい」
従者と打ち合わせをしている自称イーストに声を掛けると背中を小さく撥ねらせ、振り返った表情は、引きつった笑顔だった。
「如何なされましたか?」
恐れるように縮こまるでないわ
「わしもいく、久しく赴いていなかったからのう」




