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最前線  作者: TF


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アフターストーリー 11


震え続けている丸まった背中を見て、わしの中で何かが落ちたのか目の前のこいつを許そうと、わしだけでも味方でいてやるべきなのではないかとよくわからない感情が込み上げてくる。


震える背中に優しく腕を置き軽く体重を預けると風船のように丸いきゃつはこんな枯れた老木すら支えきれないのか軽く重心がぶれてしまう。

俯き何も言わない実の父親にどうやって声を掛けたらいいのか悩み続ける弟君へと視線を向け

「ほれ若いの、お主の父はわしが面倒みるから持ち場に戻れ」

これ以上、こやつの息子が居れば溢れ出ようとしている感情を爆発させることが出来んじゃろうからな

手を振るとこんな状態の父親を見たことが無いのか困惑しっぱなしでどうすればいいのかわからない経験値不足と言わざるを得ない若造が深く頭を下げ、去り際に見せた瞳が悲しそうだった

「ほれ、若いの、涙を流しても誰も指をささんぞ?父としての威厳は保たれるぞ」

「…ありがたき配慮に感謝します、ですが、わたしは…俺はまだ泣きませんよご老公」

震える背中に震える声だというのに、ったく、姫ちゃんと似て意地っ張りで見栄っ張りじゃの

「ほうかほうか、落ち着いたら遠慮せず言うがよい、この街に来たのじゃからな、あの子が生きた証、この街を案内してやるわい」

「ありがとうございます、では、直ぐにでも行きましょう」

自分の事は大丈夫だからと前へ前へと肩を小さく震わせながら歩こうとする。

弱い所を見せないようにしている愚か者の背を追いかける



老骨二人の枯れ果てた即席ツアーが始まった。



ツアーの結果、結論を先に言えば

歳を重ねた爺二人だけのツアーは思った以上に楽しかったわい

潤いが無いのもそれはそれでよい、気を使わなくてもよいからの!

最近は、何かあればセクハラだの、最低だのと断罪されるからの~

こわいこわい


男二人であれば…そう、カジカと夜をうろついていた時のように、そういった下賤な会話もできるというものじゃ、久しく…こういう時間を過ごしていなかったのぅ。


どの場所でこういった催しがあり、その催し物で見せてくれた姫ちゃんの活躍を教えてやることが多かった。

かといって、常に完璧ではなかったがの、そこが姫ちゃんの魅力でもある。

時には姫ちゃんも恥ずかしい経験をしたと姫ちゃんのことを語ってやると、こやつめ、街の設備の事はどうでも良さそうにしていたが、そういう話題ばっかりに食いついてきたわい。

カジカと違うて、下賤な会話の種には乗ってこんかったわい。

こやつも多くの妻を娶っているからの、性も根も枯れ果てているのやもしれんな




「っとまぁ、大体がこんな感じじゃ」

「驚きを禁じれません」

言葉の通り、この街にある一つの施設を回るたびに驚き慄いておったのー

あんな片田舎に引っ込んで、鉄だか、宝石だかを掘ってばっかりおるから最先端からズレるんじゃ引きこもりめ


「魔道具の多くを購入しておりましたが、お恥ずかしながら全ての道具を完璧に使いこなせておりませんでした、今一つ扱い方がわからず倉庫にしまっている物が数多くあります。施設を見て回り一度、専門家を呼び見直さないといけないのだと痛感しました」

施設の見学をしている間、多くの研究員が姫ちゃんのお父様っと言うことで喜んで出迎えてくれたからか、こやつの表情も悲しみから解き放たれ口調も穏やかに肩ひじ張らずされど、余所行きの言葉に変わりおったわ。


しかし、その口ぶりだと、娘が作った品だから買うとっただけってことじゃろ?

高価な魔道具だというのに親ばかめ。

姫ちゃんも姫ちゃんで実の父親だから格安で卸していた可能性もあるがの…わしの妻達のようにな~、ん?であれば、購入するからという理由で、わしの小遣いが削られてしもうたが、何故に削られたんじゃ?…腑に堕ちんの。


「もっと、わたしも…俺も学べばよかったのですね、ラアキさんのように」

こう見えて、わしは魔道具について詳しい!趣味が高じてな!

「ほうじゃろ?今度わしの自慢の車を見せてやろうか?ぶっとぶぞ?」

わしの自慢の愛車はそれはもうすんごいぞ?最先端の爆裂式エンジンにマグネットコーティングじゃったか?磁力という力を更に加え今もなお!革新的に進化し続けている我が愛車!

ついの!興が乗ってしもうて家が傾くほどにお金をかけてしまったが故に!

妻達が3か月も口を聞いてくれなかった自慢の品じゃからの!!だれかれ構わず自慢したいのじゃよ!!

「車は、苦手でして遠慮しておきます」

誘っておきながらじゃがこいつめ!目上の誘いを断りおって!こういう我を通すとこは姫ちゃんそっくりじゃ!

まぁええわい、あれを突発的に思い立った日に動かすとなると執事が10人ほど眩暈を起してしまうからの、前もって一か月くらいかけて魔石に魔力をチャージせんと動かせれんからな。


施設を一通り周り終えると、体を膨らませるように大きく息を吸い込みまるで風船みたいにしてから、風船のように息を長く吐き捨て、下唇を軽く噛み始祖様が齎してくれた神聖なる壁がある方へと眉間に皺を寄せて視線を向けている


あの場所へ向かう覚悟が整ったようじゃな

「目的の場所じゃが、どうする?今から行くとなると到着は明日の早朝になるぞ?」

「食料やキャンプキットは用意しております、行かせてください」

どうやら、逆にわしが足止めしてしまってたのかもしれんの?

付き合わせ過ぎてしもうたか


なら、直ぐにでも仕度をせんといかんの、なら、娘ちゃんに会うて

「あら?ここにいらしたの?」「領主様、出立の準備が終わりました」

聞き覚えのある声に振り向くと、絶世の美女…っと言うても過言ではない、それほどまでに美を磨き続けている老婆っと言われると射殺されそうな視線が飛んでくるので口が裂けても言えんが、そう、世間ではお婆と言われる年齢になったというのに!衰えることを拒否することが出来るのか、娘ちゃんは未だ若い姿のまま。

そんな絶世の美女である娘ちゃんがお淑やかに近づいてくる。


近くで見ると本当に目が錯覚を起こしているのかと思うてしまうの、老婆と言われる年齢だというのに見た目は今だ30代にしかみえんわい!ああ、そうじゃった!思い出したわい、故にエルフと呼ばれている種族から血が混ざっていないかと勘繰られ、王都の多くからは聖母様だからこそ老けないと囁かれておったな。


そんな魔性の女性だというのに一途な愛を貫くのもまた、この娘の凄い所じゃよ。

そして、この街の統治者、女王、聖母などなどと呼ばれておる、自慢の娘ちゃんじゃ。


あやつも今頃、月の裏側で妻の自慢をしておるじゃろうな、いや、逆に気まずくて話せれて無いやもしれんな、もう一人の妻は嫉妬深いからのぅ…

彼女は戦士ではないから、月の裏側へと旅立てたのかわからんがの…

じゃが、こう願うくらいは許してほしいものじゃ、死んだあとくらい仲睦まじく傍に、とな…


っと、いかんの、心が引っ張られておる。

気持ちを切り替えんと、娘ちゃんは鋭いから直ぐにでも気が付くからの!


「娘ちゃん!今日も美しいのう」

気持ちを切り替えて定番の挨拶をすると、つい!視線が!下に!下がってしまう!吸い寄せられてしまう!すまんのシヨウ!男としてのサガじゃ!許せよ!

「お義父様にそう言ってもらえると嬉しい限りですけど視線が顔ではない場所に向けられていますわよ?このままだと、私、ついつい、口を滑らせて、おっと、あらやだ、奥様達に密告してしまいそうな気分に」

胆が冷える言葉に直ぐに視線を上げ真っすぐに戻し、ついでに王の眼前が如く背筋を伸ばし、真剣な表情で貴族として失礼のないように、相手の顔を見て

「うむ、すまんすまん、歳でな背中が丸くなってきてしまっておるのじゃよ、背筋を伸ばさないといかんわな!嫁たちにも注意されとったわい」

苦し紛れの言い訳を並べてみるが…殺気が痛いのぅ、刺さる、刺さっておるから許してたもれ…


たったの数秒じゃというのに機嫌を損ねてしまったようじゃ。

じゃけど、あのような男を惑わすたいそうなものを持っているのが悪くないかのぅ?


わしらのやり取りを横で見ておった風船が

「聖母様、この度は聖母様の領地へと足を踏み入れる許可を頂き」「いいのよ、貴方は私達の家族でしょ?かたっくるしく、しなくて良いのよ、ここを第二の故郷だと思っていただけると嬉しいわ」

背筋を伸ばして貴族としての挨拶をしようとしたら娘ちゃんに止められてしまう。

わしと違って柔らかい物言いにちょいと嫉妬心が湧き上がってしまうのう

「私のような、至らぬものに譲歩していただき誠に感謝の極みでございます」

娘ちゃんが折角、歩み寄ってくれとるのにこやつは、背筋を伸ばしてしっかりと頭を下げて挨拶をしている


まぁ、その気持ちもわかるから咎める気はせんがな。

こいつにとっても、この人物には絶対に頭が上がらんじゃろうからな…

いやまて…娘ちゃんに頭が上がる人物なぞ、いるのじゃろうか?


ふと、冷静に考えてみると


まず、今の王はどうか?答えはNOじゃな、絶対に上がらん。

何故なら、前王である、あやつめが死を覚悟して王位を譲った、その息子が今の王となっている。

その王と娘ちゃんには驚いたことに繋がりが出来てしもうておる。


一つは仕事としてっというよりも研究者としてかの?

この大陸で最も毒や薬に長けておる人物が娘ちゃんだからの、毒で汚染されてしまった大地、それをもう一度、人類の為に活用するために毒の除去及び浄化について日夜、相談に乗って貰える唯一無二の人物、それこそが娘ちゃんと王との間にある仕事としての関係性がある。


そして、二つ目は…

困ったことに、娘ちゃんを師と仰いでおるのか、第二の母とでも慕っておるのか、真意はわからぬが、夜な夜な何かあれば相談に乗ってもらっている、そんな間柄でもあるんじゃよ。

なんせの、毒について相談する前から、二人は顔を会せておる。

死の大地の獣達が居なくなり、街が平穏を取り戻した際に、娘ちゃんがあの街の代表として新王へのお目通りという名の顔合わせがあってな、それらが終わってから、立食パーティーをしていた際に、娘ちゃんが何かあれば頼っても良いというな、他愛も無い口約束をしてしもうたんじゃよ…



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