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最前線  作者: TF


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アフターストーリー 7

7歳という若さで彼女のような天才と同じ責任を背負わすのは酷じゃからの

もっともっと、おおきゅうなってから背負えばよいのじゃ。


思考の区切りがついたのか、頭の中が空へと至るかの如く澄み渡ってくる

鼻から大きく息を吸い込み両手を揃え天へと飛んでいきそうな程に伸ばし、丸く成ろうとする背を伸ばす

口元にある髭を揺らすように息を吐きだしながら突き上げた両腕を大地に向けて落とし、また、背を丸めてしまう。

つい、湧き上がってしまった哀愁という名の小さな溜息を零してしまう

そんな事を考えながらも、歩を進めているが…歩けど歩けど、近づいてこない何も変化しない景色に

「…選択を誤ったかもしれんのぅ」

飽きてしまっている自分が居ることに気が付いてしまった。

さらには、車という便利な道具を使わなかったことに足が文句を言い始めてきていた。


歩いていくのも気持ちが良いじゃろう!っと、出る前は思うたが、しまったのぅ…

遠すぎないか?それに視界の変化が無さ過ぎる。


まだまだ先が終わりが見えない道に早くも足が文句を並べ、後悔が全身を満たそうとしてくる。

後ろを振り返ればきっとわしが戻ってくると見越した執事のやつが望遠鏡片手に背筋を伸ばして振り返るのを待っていそうじゃから振り返れぬ!わしだってまだ若い!プライドがあるわい!


意地でもあるいてやる!っと鼻を大きく広げ歩幅を広げると

「む?」

地面を揺らし独特の足音に、懐かしい滑車が回り地面を削っていく音

この時代、滅多に耳に入れることが無くなってしもうた懐かしい音が耳へと届き、自然と体に身が入り神経が研ぎ澄まされていき、長年の経験の影響で音に対して警戒するように神経が研ぎ澄まされる。


どんな状況でも対応できるようにと身構えていたが…わしの隣に顔を出してきた懐かしい顔を見て警戒を解く。

それもそうじゃな、今のご時世、馬車なんて酔狂な乗り物、王都のやつが使うわけも無し、急な使いや、貴族に扮した野党なぞありえぬ。


軽快な足音と同時に懐かしい顔がわしの肩に鼻筋を擦り付けてくる

歳を重ねたとしても悪戯坊主なのは変わらんのぅ、こやつもとうに旅立ってもおかしくない年齢になるというのにな…


じゃというのに…何年もおうておらんというのにじゃ、まだわしのことを覚えておったか


覚えてくれたことに嬉しかったのか、何年ぶりに会うのが嬉しかったのか、つい、鼻先を擦り付けてきた馬に手を伸ばし鼻筋を撫でてしまう。

甘えてきたやつに挨拶を返すのは礼儀じゃろうが、人様の馬に許可なく勝手に触れるのは良くないんじゃぞ?

そう、今はもう、わしの馬ではない、勝手に触るようなことはしてはいけない

「す!すみません!旅のお方!馬がご迷惑を!」

少し高い場所から申し訳なさそうな声が聞こえ、わしの肩に鼻筋を擦り付けてきた旧友が手綱引っ張られ顔を上げさせられてしまう

馬の顔が上げられた際に見えた謝罪の言葉を述べてきた従者の顔色は、酷く悪かった。

後ろ姿だけで、わしが誰か見抜いたのであろうな、っであれば、その馬がわしにちょっかいを掛けてくるのも理解していてもおかしくはあるまい?ふぅむ?普段は、従者を務めておらんのかもしれぬな

「よい、気にするな、戯れもあろう」

顔を上げ作り笑顔で従者に構わぬと手を振るとわしの顔を見て従者が青ざめた顔をしている

しもうた、発言の仕方が高圧的であったか?

「旅のお方」

馬車の窓から方腕をだし偉そうな雰囲気を醸し出し声を掛けてくる

その刹那、馬の飼い主である人物の詳細な記憶が蘇ろうとしていた為か、その懐かしき声に少々、本人かどうか疑問をかんじてしまう。


こんなにこやつの声は野太かったか、とな。


声もそうだが…ふむ?そもそも何年振りじゃ?

何年もおうてない気がするが?顔を見るのも何年ぶりか?ううむ、思い出せるのは…教会の一件が起きる前じゃったかの?いや、こやつも数年に一度、王に呼ばれておるときがあったら、王城で顔を見た、気がしないことも無いのじゃが、覚えてないのぅ…

こやつと最後におうた時は何時だったか記憶をあさっていると


「もし、宜しければご同席というのは如何か?俺もまた暇でな話し相手が欲しかった」

窓から腕を出して、腕だけで会話を進めようとしてくる。

顔も見せずに偉そうに、まったく、これでわしだって知ったらどんな反応するのか


つい、姫ちゃんが悪戯している時のような悪い顔になってしまうのを落ち着かせ表情を崩さないように心がける。

「良いのか?見ず知らずの他人を席に招いても?」

「あの街へ赴く人が悪い人なわけがありますか、行き先は其方でしょう?」

確かにの、救世者、聖母様が住まう場所に出向くような悪人がいてたまるかってわけじゃな。


街の方へと視線を向けるが、まだまだ、希望の塔は小さく、未来の塔はまだ見えぬ。

このペースだと老骨に響き、明日明後日には響き堪えるのは目に見えておるか。


休日を合理的に楽しむのであれば…


ふむ、久方ぶりに顔を見るのも悪くないか

あの引きこもりを驚かせてやるのも悪くないのぅ

この様な場所で会うと言うことはこやつもあそこへと向かうつもりなのじゃろう。

「では、ご同席願うとするかのう」

「っは!では、お止め」

会話を聞いていた従者が手綱を引き馬を止めようとするので、それを制止させる

「よい、動きながらで出構わんよ、その馬であればわしが馬車に飛び移ろうが暴れたりはせぬ」

そういうと、馬のやつはわしの言葉がわかっているのか頷いて此方に流し目を送ってくる。

ほんに、賢い馬じゃ、姫ちゃんが気に入ったのも納得じゃ


わしの歩幅に合わせるように隣を並走している何も紋章や家紋が施されていない質素な作りをしている馬車の手すりを握り、片手で持ち上げるように全身を浮かしてから、もう片方の手で馬車の扉を開き手すりを掴んでいる手首の力だけで足場へと体を動かし足場に足をつかせ流れるようにまるで馬車が制止しているのと変わらず優雅な佇まいで馬車の中へと入り、丁寧にドアを閉め、中に用意されている豪華な椅子に腰を案内される前に堂々と落とし馬車の主へと挨拶をする

「では、幾ばくかの旅ではあるが厄介になるぞ」

「軽やかな身のこなし、名のある騎士、武家のお方とお見受けします、お名前を頂けますか?」

わしの堂々とした態度に嫌な顔をせずに、並べた言葉に眉をひそめてしまう。


腹芸のつまりか?わしの顔を知らぬわけでも無かろうっと一笑してやりたいが

わしが執事を連れずに動いているのを見てお忍びだと勘違いしおったのであろうな、こういう抜け目ないとこが領主たる所以といったところじゃな。


なら、わしもそれにつきおうてやるのが礼儀じゃな、旅の醍醐味っというやつじゃな。

「世事はよせ、引退した老骨じゃわい、名は」

ゼンケンっと我が王から授かった名前を言おうとした迂闊な喉を閉めて音が出ないようにする

いかんいかん、その名を名乗っては…わしも歳じゃのぅ、別の名を名乗るがよいのじゃろうが…

名か…幼名を名乗るのは嫌じゃしのぅ、何かあったかのう?

偽名を名乗ることが殆ど無いので何かあるかと悩んでいると


『ラアキ』


ふと浮かんできたワードが他に湧き上がるどうでもいい偽名を吹き飛ばす


らあき、そう、じゃな。

うむ、そう名乗るとするかのう


ふと浮かんだ言葉

だというのに、何故かしっくりと心に住み着くような言葉に頷き

「わしの名はラアキじゃ」

名を名乗ると若い頃におうた時と比べ膨らんでしもうた老骨が聞いたことのない名前に軽く首を傾げてから小さく頷き

「ラアキ殿?…わかりました、では、そう呼ばせていただきましょう、僅かな一時、若輩者ではありますが貴君と共に」

堅苦しい挨拶が始まろうとするので

「よいよい、堅苦しいのはお互い無しにしようではないか、其方の名は、なんと呼べばよいのかな?」

「そうですな、では、イーストとでもお呼びください」

東のっときたか、ったく、食えぬやつじゃのう

「では、イースト殿、老骨の身ではあるが若いものにも楽しんでもらえる会話を心掛けようではないか」

「殿はいりませんよ、ラアキ殿」

「なら、わしもラアキでよい」

カウンターをかますと眉毛が一瞬だけつり上がり眉間に皺ができよった

腹芸をするのならもっとしっかりとせい、ったく、歳を重ねたから表情を操る力が弱くなったのか?

それとも、娘の影響で多くの貴族から持ち上げられすぎたのか?貴族としての腹芸が下手糞になっとるぞ?

「で、では、失礼ながらラアキと呼ばせていただきます」

苦笑を浮かべながらも軽く頭を下げよる。

わしのような旅の者と比べて貴族様の方が身分が上じゃろ?頭を下げてどうする。

こちとら旅の者っという体なのじゃというのに、直ぐにへりくだりおって

ったく、娘ほど豪胆とはいかぬっといったところかの?それにしても…なんて服装してるんじゃ?こやつは?


久しぶりに見たこやつの出で立ちに思うところがありつい老婆心ながら

「お主…こう言ってはなんだが、失礼と分かっていても言わしてもらうぞ」

声に出してしまうと向こうも失礼があったのかと背筋を伸ばしてくる

「その古い出で立ちはなんじゃ?あの街に外交で出向くわけでも無かろうて?もっとラフでヤングでナウなファッションを選べんかったのか?」

わしのようにと姫ちゃんや孫ちゃん達から好評だったアロハシャツっという綺麗な花柄をあしらった服を指さすと

「ふ、古いですか?これでも」「いや、古いわい!今もなお、その様な堅苦しい服なんざの、どんな貴族であろうと普段からきんわい!娘ちゃんから何か送られてきたりしとらんかったんか?」

あの姫ちゃんが実の父親に服を送らないわけがなかろう

「む、娘からはその」

視線を逸らされてしまってはのぅ…わしもそれ以上いえんのぅ傷を抉ってしもうたか。

あまり仲が良くないっという噂は真であったか

「なら、今度、わしと一緒に服を選ぶとするか…いやまて、折角じゃこの先にある服屋で一式こうていこう」

「え”?」


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