アフターストーリー 6
気候の変動、っという名称じゃったかの?
気温が下がった影響なのか、ここの農場も作物が不作の時がたびたび起きておるとストック氏が嘆いておったな、されど、めげることなく励んでおったな。
彼もまた奥さんや姫ちゃんから未来を託された者じゃからな、何があろうと畑を守ると言っておった。
あやつがいる限り、わしらの胃袋は満たされ続けると信じておるよ
とはいえ、ひと昔前に比べて王都にある食料を備蓄する為の貯蔵庫がな、寂しくなりつつあるっというのも事実じゃ。
これがよくないのぅ、これには若き王も頭を抱えどうすればいいのか答えに辿り着けず日夜、頭をなやま…せておるのだろうが、それを口実にしておるとしか思えんのじゃよな、わしとしてはの…
相談相手がの、ただでさえ仕事が忙しく苦労ばかりかけておる相手じゃから申し訳なくての~…
今の王は自身では解決できそうもない問題が出ると、直ぐに相談のためにあの街へと通話を繋げておるんじゃよ。今の王はわしだけじゃなく娘ちゃんにも苦労を掛けてしもうておる…
手軽に連絡が出来るようにしたのは悪手じゃったな、とな、メイドのやつもわしも後悔しておるよ。
娘ちゃんには苦労を掛けるという点においては後悔はしておるが、平穏を保つことにおいては頼りにさせてもらっておる。家臣としては申し分なしの成果じゃがな…
…あの馬鹿が生きておれば娘ちゃんには苦労をかけずに済んだのじゃがな。ったく…かっこつけおってからに。
仕方あるまい、こうなるのは必然じゃった、娘ちゃんも、姫ちゃんが残した痕跡をあの頃の若き王を振り払うことが出来んかったんじゃろ、とに、優しい娘じゃ、聖母と言われるのも頷けるわい。
月日が幾ら経とうが、大地が変化しようが…
変わらない、何も変わらない…
わしの中にある、錆びた剣はかわらない
遠い遠い空を見上げながら歩き続けていると、頭の中は自然と埋め尽くされていく
関っている職務の内容によって埋め尽くされていく…
しかし、歩いていても仕事の事が頭から離れんのぅ…
一旦整理が終わるまで思考を伸ばしていくかの…
確か、王都にある貯蔵庫が少しずつ目減りしている主な原因は生産力の低下も関係しておるが、主な要因としては、海を渡った先にある他の国からの日持ちする食料の仕入れが無くなった、それが大きな痛手と国庫を預かる財務のやつが愚痴をこぼしておったな。
外からの仕入れかぁ…今となってはの~…
この街は古くから、それもう、前々王よりも古くから、海を渡った数多くの国から獣が他の大陸へと渡らない為という防衛国としての援助によって国が成り立っていたっという歴史がある。
食料も鉱石も…多くの支援物資を他の国から援助してもらい何とか維持しておったからな。
海を渡った遠き国もあの白き獣が人類にとって脅威であるとわかっておった、故にな、援助をしないわけにはいかんかったのじゃろうな…建前はの。
王族に関わる者達であれば、みな…知っておるよ。
本当に恐れておったのは獣じゃない、始祖様の血を引く我らだ
恐れておったんじゃよ、彼らは…わしらをな…
始祖様の血を紡いでいる死の獣すらも軽々と退ける膂力を持ち合わせ…天変地異を引き起こしてしまった、わしらを、他の国は恐れていた。
いや、過去の出来事よりも、今を恐れておったのやもしれぬな…
人型一体でも国が亡ぶと言われ、兎一頭だけでも村が滅びると伝えられており、自国の騎士団を時折、死の大地へと経験を積ませるという名目で死の大地に住まう白き獣と相対させておったからな。
恐れ慄ている白き獣を大した訓練を施していない、その辺にいる農民ですらある程度は戦えてしまうのが始祖様から血を分けてもらったこの大陸の民じゃ…それが千を優に超えておるんじゃからな…わしらよりも非力な国としたら、これ以上の恐怖があるか?
始祖様という大いなる存在によってもたらされた力は、わしらと外の国との力の差が大きく変えてしまった。
故に、外の国に住まう古き王はわしらが他国を攻めるという選択肢を無くすために、わしらに提案したんじゃよ、物資を送るから白き獣をこの大陸から出さないようにしてくれとな。
この大地に住まう古き王達も、死の50年と呼ばれる始祖様の血を受けしお子らが起こした戦乱の時代によって、この大地に住まう多くの生き物が消え、草木すらも枯れ果て全てが荒れ果ててしまった。
少しでも大地を修復したいと願っておったからな、その提案を快く受け入れ、故郷であるこの大地を癒すことに専念した、んじゃったかな?他国を攻めて土地を奪おうと思えばやすやすと奪えたのをしなかったのを、我が祖ながら褒め称えたいものじゃな。
今、どうして、他の国からの援助が無いのか…理由は単純じゃよ。
その理由は滅びてしまったからだ
近くにある大国が滅びただけではない
他の多くの国が滅んでしもうた
孫が世界中を飛び回っているお陰でな判明したんじゃよ…他の国が滅んだ原因がな。
長年、王たちも徐々に減っていく援助に困惑していたが、寛容な王は、些末なことだと盟約を破る国も出るのは致し方ないと思っておったのじゃよ、呑気なものじゃ。
何時の頃からか連絡が途絶えた国が増えてきていたっという問題についてもっと真剣に動いておれば…いや、大国がそうはさせぬと動いたであろうな、あの国がどれだけ私服を肥やしておったのか知っておったのに、王達は攻めようとしなんだ…攻めるわけにもいかんかったから、致し方あるまいか。
孫から教えてもらった原因がまさかじゃったのぅ…
そう、思い返せば思い返すほど!人というモノは愚かなのだと悲しくなるわい。
多くの国がわしらに直接話を持ち掛けるのではなく、一度、近くにある大国を通してから話が持ちかけられるっという、いつの間にか出来てしまっていた変な流れのせいで、彼らの困窮した状況、発見の遅れへと繋がってしもうたのじゃからな。
この時代になってようやく、古き盟約を交わした他国がどうなっているのか…
原因もわかってしもうたからのぅ…わしらが知らん間に白き獣に滅ぼされておったわい…
そう、この大陸の外にある様々な国が滅んでしもうたからのぅ、これも一つの原因じゃな。
原因をもっと早くに知っておれば、いや、王では何もせんかったであろうな、であれば…
姫ちゃんが王であれば、どうしたであろうか?
その様なことを考えんかった日はない…
そう、姫ちゃんであれば、どうするのかと、わしらは考えてばかりじゃ。
これから先、わしらがすべきことは今後も増え続けていく、その為には難民を受け入れるため畑を増やしていかんとな…
それを王もわかっておる、いや、娘ちゃんから提案されたんじゃよ、毒で汚染された大地を浄化するのだと、今一度、畑として機能させるべく毒から解放するためにな…
無論、この大陸でもっとも薬や毒に詳しいのは娘ちゃんじゃからな、今も頼りにさせてもらっておるよ、心だけじゃなく技術としてもな。
それだけじゃない、未来を見据えて、わしらは…あの母娘に世話になりっぱなしじゃわい。
姫ちゃんがの残してくれた資料がわしらの道標になっておる。
ストック氏と共に長年研究し、残してくれた様々な研究資料、その中に記されている一つの実験データがある、同じ作物を同じ場所で育ててはいかんというな、他にも様々な研究結果を残してくれておる。
そのデータを元に多くの農業を営む人たちが知恵を合わせ、昨今の気象変化によって育たなくなってしもうた作物の収穫量を増やせれないか頑張っておる。
無論、データだけではない、薬学の知識を使って作物へと転用できまいかと娘ちゃんも知恵を貸してくれておるし、孫のスピカのやつも協力してくれておる。
あの街に新しく移住してきた他の大陸の民達、彼らの知識の中に、寒い中でも育つ作物があるのか、この大地の風土に適した作物があるのか、可能性のある作物をスピカに伝え、自由に空を走ることが出来るスピカであれば、船なぞ必要なく海を越えよる。
海を越えた先には、無限の可能性がある、そう信じてスピカも手伝ってくれておる。
わしらもスピカを信じて新たな作物の種を見つけてくれると信じておる。
この街に流れついて来た民達も協力的じゃからの、新しく見つけた種子も育てることが出来るじゃろ。
ただのスピカにとってはどちらがついでなのか、優劣を決めることは出来んがの。
スピカの渡った遠い大地、その全てを見つけたわけではないが、獣達に滅ぼされた様々な国の痕跡、何か所かは見つけておる、獣達に襲われ人が滅んで消えてしまった大地、獣から逃げるようにと長年生きてきた街から離れ見知った面々とは散り散りになってしもうた人達…
その人達が求め続けている安住の地、そう囁かれるようになったあの街へと誘う役目をな、スピカが担ってくれておる。
確か…
種探しの始まりは、スピカが方々へ出ているのだとストック氏の耳に入ったのがきっかけじゃったかの?忘れてしもうたの…
ストック氏としても願ったり叶ったり光明の一筋が降り注いだのだと喜んで折ったな。
今の環境でも育つ作物をスピカが探し、ストック氏が今の作物と新たに育てた作物を交配し今の環境でも育てられる作物を増やす、新しい研究がスタートしているわけじゃ
それを見おった王都の財務一派共が、わしの孫に向けてもっと!もっと!人なんて救わないで種や作物を見つけて貰わないといかんっという、案を数の暴力でな他の議題を跳ね除ける勢いでごり押しで通してきおってな!わしらの制止を無視してスピカに迫った財務の頭を何度、叩いた事か…
財務一派は若き才を潰しかねないからのぅ、姫ちゃんという甘い蜜に浸され過ぎじゃたわけめ。
我が孫の扱いを誤ろうとする馬鹿には制裁が必要じゃな!っと監視するという仕事も増えてしまったわけじゃよ。
王族を守るための筆頭騎士っという立場が気が付けば宰相のような仕事が増えてきておるのは気のせいじゃろうか?あの馬鹿では財務一派を抑えきれんから致し方ないかと甘えさせたのが悪かったのじゃろうか?いや!手遅れになってしもうてはいかん!わしの孫を守らんとな!
ああいう姫ちゃんという甘い汁をすすってきただけのどうしようもない馬鹿どもから守ってやらんとな!
そう…あいつはな、あやつも…甘い、優しすぎるんじゃ、姫ちゃんのように全てを背負おうとしよる、全てを救おうと手を伸ばし過ぎとる、まだあやつは7歳じゃぞ?…潰れてしまいかねん。
そもそもじゃ、そんなのが出来るのは
姫ちゃんだけじゃよ…




