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最前線  作者: TF


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アフターストーリー 5

─ 王都城門付近


王都の入り口、王都の玄関口、門の前には騎士が立ち出入りする人を検問していた…そう、かつては厳重な警備が施されていた、そんな場所へと似つかわしくない恰好をした老人が一人、門へと向かって歩いている。

アロハシャツに膝が少し隠れるくらいのデニム、シャツの下やデニムの下には黒いインナーで軽度の防寒対策を施しグラサンを身につけ、往来だというのに鼻を歌い上機嫌で長い年月を生きてきたのだと皮膚に歴史を刻み込んだ老人が背筋を伸ばし肩で風を切るように往来を歩き門へと向かって歩いている。

当然、忙しい彼の事を思って身綺麗な執事が後をついて歩いている。



鼻歌を歌ってしまうほどにわしの心は軽やか

何故なら!!!今日のわしは!!仕事が休みじゃからな!!!

ほんに!老骨をこきつかいおってからに!!!


そう、気が付けばわしはまた…王家関連の仕事に翻弄される日々を過ごさざるを得なかったっというわけじゃわい、引退させろや、ええ加減…


しかしじゃ!わしかて鬱憤は溜まる!何とか!仕事を詰め込んで詰め込んで!!

ようやっと!久方ぶりの!!自由な時間を勝ち得たのじゃからな!!

待ちに待った日がこんなにも穏やかで温もり溢れる日差しの下じゃろ?

ついつい足が浮いてしまいそうになるほど軽くなるのは仕方あるまいて?


ご機嫌に歩いているが、背中に向けられた視線が外れんのぅ…頑固な奴じゃ。

ずっと後ろから気配を殺しているつもりで付いてくる人物がもう限界だと思ったのか

「本当に歩いて行かれるのですか?」

これ以上先に進むのに抵抗があるのか、はたまた、この近くに足を用意しておるのか…

そういったものは今回ばかりは要らぬと、前々から言い続けておるのにのぅ?

見送りも要らん、お前は家の事をしろ、することが無いのなら休めっとな、言い渡しておるのに、頑なに付いてきおってからに、気が付けば、ほれ、もう王都の門じゃ、そんな場所までついてきおった執事に

「たまには良かろうて、体が鈍ってかなわん」

不愛想に返事を返し門へと歩き続ける。

お前はさっさと帰れっと執事に向けて手を振ると小さな溜息を吐きつつも諦める気が無いのか此方を真っすぐに見つめてくる。

こやつも仕事熱心なのはいいのじゃがな、頑固すぎやしやせんか?お前もたまには休めと言うたであろう?

「見送りもいらんとゆうただろうが、目と鼻の距離、何も…心配なんぞないわ」

こう突っぱねれば突っぱねるほど、わし自身もこいつらの不安が何なのか感じてしまうわい。


わしの身の安全よりもわしが何処かにふらっと居なくなるのを怖がっておるのじゃろうな…

皆がの、わしが密かに抱いておる想いというか、いや、これは願いじゃな、願いに近い、かの?

わしの家族たち、勿論、屋根の下にいる全員が、それを重々承知しておるのも知っておる。


わしかて自由が欲しい…


息子の為に捧げた契約も、姫ちゃんの時には清算されたじゃろうて!もうええじゃろ!わしを解放してくれ!

王の癖に!息子の為だとか何だとか王城を出る前に周囲に吹聴して!

結果!本当に死におったあの馬鹿が残した遺言!それと!不安を感じさせまいと前王、いや、今となっては前々王か、その二人からの頼み!もうええじゃろ!わしを解放してくれ!


今の王はな!もう、自分が王の器じゃないと嘆くこともしなくなり、自分の可能性を殺し、完全に諦めとる。

今考えてることなぞ、我が孫に次の王の座を渡す事ばかり!そんなことばっかり考えておる!


そんな後ろしか見てない奴を育てる気にもなってみろ!もう疲れたわい!!


縛られ続けるってのにもう、はっきりというがな!難儀しとるんじゃ!

あの王城の空気!もうあきた!息が詰まる!このご時世で守るだけならわしじゃなくてもええじゃろて!!

ええ加減!この老骨を自由にさせてくれ!ってのをな、日々な、ストレスが積み重なっていくように思うたりもしとるわけなんじゃよ~、はぁ…何度思い返しても想い馳せてしまうのぅ


あの時代が一番わし、楽しかったのぅ。


城門からでも目を凝らせば見える高い塔。

そして、視線を下げれば薄っすらと見える恋い焦がれてしもうた街…

出来る事なら王都なんぞ離れて、孫ちゃん達と共に生きたかった街、歳を重ねてからシヨウのやつを羨ましいと感じるとはの…あの街で死を迎えたかった英雄として華々しくこの大地と別れ月の裏側へと旅立たせてくれるのを願っておったというのに、わしの願いはことごとく却下されるのでな…


そこから更に、視線を下げると目と鼻の距離、何処までも広がり続けていく田畑。

あの街へと通じる道、その周囲にはララ・ストック氏が切り開いた田畑や牧場と広がり続けている。


どこぞの貴族が王に進言する為に功績を重ね研究の成果を携えて謁見し王を説き伏せ許可をかちと…もとい、王からの許諾を得て広げに広げ…過ぎてしまい、視察に出た使者と王が笑う事しか出来ないほどに広がっていった農場。


今も、月日がどれだけ流れようとも、この場所は変わることがなく視界の端まで畑や牧場が広が、いや、更に広がっておらんか?


視界に入ってくる人物も全員、見知った人物、そんな知り合いしかいない安全な場所を通るのに何が危険なんじゃと、顎先を執事に向けてよく見ろっと動かす。

更に顎を動かして薄っすらと見える街を刺す、そう、このわしでも彼の才能には、恐れを抱かずにはおれぬ、それ程までに…彼の者もまた伝説へと至ろうとしている。


王都では言の葉が途切れることが無い孫がこの先の街にいる。


話題性ばかりの街へと視線を向けさせると執事のやつは眉毛一つ動かさずわしにしか聞こえない程度の呆れた様な小さな吐息を漏らしてから

「では、仕事が詰まっておりますので明日には絶対にお戻りくださいませ、失礼します」

観念したのか頭を下げ、綺麗な姿勢を保ったまま回れ右をして離れて行く。

その綺麗な所作に文句の一つもないのだが、ただ一つ、残していった捨てセリフにむかっ腹が立ってしまう。


明日だぁ?三日はあの街に滞在すると申請してあるじゃろが!絶対に!明日には帰らんわい!!


厳格で柔軟性も無く王寄りの執事からのまとわりつくようなうっとおしい視線から解放されたと感じた瞬間

背中に翼でも生えたのか、足が浮こうとするのか


自由なのだと全身が感じる喉が震え

「やっと自由になれたわ~、はーやれやれ肩が凝ってしかたがないわい」

歓喜の声をだしてしまう。

本当に自由になれたのだと実感を更に感じるために、ついつい、遠く遠く、我が屋敷へと向かおう離れて行く執事の背中を目で追ってしまう、つっても、どーせ、何処か遠くでわしの目では見えないほどの距離に陣取って望遠鏡と優雅にコーヒーでも片手に持って監視するつもりじゃろ?徒歩では辛くなって車を用意してくれと泣きついてくるのをな!!


厳格で強情で頑固者でわしよりも王を優先する難儀なやつじゃが…何年も傍で支えてくれたことには感謝はしておる。


お互いの行動パターンを把握しきれるほどに長年連れ添った執事の背中から、哀愁を感じてしまう。

「お互い齢をくったの」

遠く離れているとはいえ、うっかりと呟いてしまう。

わしのところの執事っということを忘れてしまっていたわい。


気持ちを切り替えるために軽く背筋を伸ばし首を回し肩甲骨を回しまくってから王都の門を潜り、外の空気を全身に満たすように鼻から息を吸い、見据えるは話題の尽きぬ次代の王である孫が待つ街!

さぁ、幾ばくかではあるが!自由を満喫するために足を進める


「~♪」


王都での仕事から解放されたという解放感を全力で楽しむのだと表現が溢れ出るかのように鼻歌を歌いながら進んでいく


道中ですれ違う人達は皆、熱心に働いている。

その姿を見ていると此方の気持ちも心地よく感じてしまう。

彼らの頑張りがあるからこそ、王都もあの街も輝くことが出来る、食があるからこそ皆、健やかに心も体も成長するというモノだ。


こんな、戦う事しか能のないわしらを支え続けてくれるのがララ・ストック氏、と、その従業員たち。

彼らの働く姿からは感謝の念しか湧き上がってこない、そんな彼らにすれ違いながらも軽く会釈をしたり見知った顔が居たら軽く挨拶をしながら歩いていくと、木陰の下にいる若い乙女と目が合う

「あれ?ゼンケンさん?」「あ!ゼンケンさん!!」

赤子をあやしているうら若き乙女がわしに手を振ってくれる、わしもそれに応えるように久方ぶりにあう、我が友の娘に手を振って応える

「息災であったか?久しいのう!…」

しかし、歳のせいなのか、うら若き乙女達の名前を呼ぼうとしても思い出せなかった。

歳のせいかのぅ…


粉砕姫こと、マリンとストック氏の間に産まれし娘、その二人と、新たに産まれしストック氏の孫。

彼女らの名前を呼ぶことなく手を振り返し続けていると

「元気ですよー!お父さんに用事ですかー?」

大きな声が腹に響く。

若い娘の元気な声というものは良いものじゃ、心地よく感じてしまうのぅ

王都の騎士団もこれくらい綺麗で心地の良い返事が出来るようになればいいのじゃがなぁ。

「いや、ストック氏には用事は無いぞ~、わしは久方ぶりの休暇じゃ!街へとな、遊びに行くとこじゃ!」

大きな声で返事を返すと

「そうなんですね!お気をつけてー!」

大きな声と共に手を振り、もう一人の女性が赤子を抱きながら小さく手を振っている

確か、男の子だといっておったな、かの英雄のように大きく育つことを願っておるぞ


元気な娘二人に手を振りながらも、遠い街に足を向けて、一歩ずつ一歩ずつ歩幅を弛めることなく進めていく。


元気な娘達が小さな粒となるまで歩を進めるころには、如何な老骨であろうと、汗がじわりと額から浮かんでくる。

かといって手で汗を拭うことはない。

あの街から振り下ろすように流れ込んでくる冷たい風が汗を直ぐにでも取り払ってくれるから

「・・・」

冷たい風を全身で感じると、ついつい、考えてしまう、月日の流れという奴を

生きる人達が月日と共に変わっていくように、大地もまた変化していくのじゃろう。

目指す街は、わしが若い頃に比べて冷えるようになった。



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