最終話 魂底の願い 8
どうしてそうなったのか
何が起きているのか
理解はできないがこの現象は知っている
私の中に
こいつの
糞ドラゴンの意識が…記憶が…知恵が溶け込んで流れてきたから
全てを掌握するために私は流れ込んでくる意識を受け止めるために大きく体を伸ばす
『さぁ、全てを私へと吐き出してこい!!お前らの全てを掌握してやるから!!』
私の体がドラゴンの全てへと溶け込んだ瞬間
ドラゴンの記憶が…
魂の同調となり…
私にこいつが歩んできた道を見せてくる
お前たちが何を求めてきたのか知りたくないけれど
この星を守る為…受け止めてやる!!
さぁ!見せろ!
お前らの罪を!!!
腕を広げるだけ広げ
魂が混ざり合う感覚に身を委ねると
伝わってくる
魂が
混ざろうとする
怖
い
怖い
怖い!!
分け身が一瞬で壊された!
分け身が!!壊された!!地上にいる生物を壊す担当が一瞬で壊された!!
分け身の中でも最も壊す力に秀でている壊す担当が壊された!!
大地全てを我が物顔で蹂躙するために分けた分け身が壊されたのを感じた他の分け身も慌てて行動を開始してくれている。
空という圧倒的に優位なポジションによって、大地担当を補佐するために分けた分け身が地上担当を壊した匂いがするやつへと急ぎ向かってくれた!
けど!直ぐに壊された!!
大地を担当する分け身と同じく!
同じ匂いを出している奴に一瞬で壊されてしまった!!
もう、個には、攻めるための分け身が居なくなってしまった
どうすれば、殲滅を担当していた分け身失くして、力ある分け身を壊したヤツを壊すことが出来るのだろうか?
無い知恵を振り絞り必死に考えるが何も思い浮かばない
このままでは与えられた役目を全うすることが出来ず
ただただ、壊されてしまう
そうならない為には
王に…王から与えられた役目を果たすためにはどうするべきか
辿り着いた答えに魂が拒絶するが
それをしないことには王が個を見放すという避けがたい苦痛が
想像するだけで魂を保つことが出来ない
託された使命を全うする方が!
助けを!!このままでは託された役目を果たすことが無く壊されてしまう!
それだけは避けないといけない!
こんな…極上な食材を任されたのだから!果たさないといけない!!
宙へと意識を向けると宙に漂う分け身と感覚が繋がる。
他と中継するために用意した分け身が個と同じ判断をしたのか、既に救難信号を出していた。
これなら!助けが…そう思ったけど直ぐに壊されてしまった
宙を漂う分け身ですら相手は壊す術を持ち合わせていた
全身が王に睨まれたときのように震える
星を調理する役目の分け身である個はその匂いがしない場所へと逃げ込んだ
ここもまた強烈な力が爆発し畏怖べき力が溢れ出た場所、近寄りたくない場所ではあるが、ここ以外に逃げ場がなかった
地中深くにまで潜り、意識を残されたもう一つの分け身へと向けると
海を制御する分け身も壊されない為に海中深くへと逃げ込んでいた
個ともう一つの分け身が残され
安全な地中に潜り込めるのと同時に
伝わってきてしまった
分け身が壊された瞬間に感じた全てが
地中の中で最後、己が体が壊されようと宙にいる分け身を通して情報を送ってくれた分け身たちの記録が個を恐怖という感情で染めつくすように汚染した
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
安全だと思っていた地中、地中だというのにこびり付くような匂いから逃げるように
更に、地中深くに逃げ込み続けた
怖い匂いがする匂いがしない場所まで
必死に鋭い爪を使って硬い場所だろうが砕き更に奥、もっと深くへと逃げ込んだ
それでも
匂いが消えることが無かった
体を震わせながら匂いが消えるのを待った
待っている間に、思い出した、個は一つではない個は個であり全である
個たちは全て繋がっている多くの個たちが残した記録が匂いの正体を教えてくれる
分け身たちを壊したのは、王と対立する生物
人という生物
王と対立し王を殺そうとする生物
永きに渡り王と、個らを滅ぼうと襲い掛かってくる生物
この星を見つけた時はそんな匂いなんてしなかった
この星にそんな強い生物が潜んでいる、そんなの、知らなかった
星の周りを漂う時も調べた
星に侵入してからも念入りに調べた
調べても調べつくしても
失敗が許されないから
もっと調べる必要があった
だから
個は体を分けた、五つに分けた
効率よく王へとこの星を献上するために
失敗が許されないから
この身を五つに分けた
調べた
誰にも見つからないように
調べた
宙からも
調べた
空からも
調べた
海からも
調べた
地中からも
調べた
極上の星には脅威が無かった
個らと戦えるような強く恐れるような匂いをした存在は無かった
分け身だけでは万全ではない、個の中にあるエネルギーを使って王へとひれ伏した眷属たちを産みだし数を揃えた、大地の個を、空の個を援護するために個が役目は彼ら全体のサポートだから準備を続けた。
万全の状態で星を料理できる、そう思っていた
何も問題なく王へと料理を献上できる!
はずだった、はずだったのに!
これから、突如、何処からともなくやってきた強い匂いが離れて行ったから
これから!準備を続けてきた!これから個たちは仕事に取り掛かれる!
これからだったのに!!
そう…個は、ずっと料理できるのを待っていた。念入りに外からも中からも調べに調べた
個には多くの記録が共有されているから失敗なんてありえない、許されない
調べに調べて…この星を極上の料理にするために
分けた五で星を掌握するために
外へ出ようとした…でも、出れなかった。
唐突にこの大地が強烈な力によって裂かれたから
個は脅威が去るのを待った
脅威がこの星から飛びたつのをまった
居なかった!
調べに調べたのに!
あんな脅威がこの星にいるなんて知らなかった!
あれもまた、何かしらの方法で星を渡る方法があるのだと
記録に書いてあるのを思い出した
そう、人とは違う王の敵、他にもいる王の敵
精霊と呼ばれる王と対立する存在
その中でも光の精霊と呼ばれている存在が突如としてこの星に現れた
そいつは個の気配を見つけたからなのか唐突に潜んでいた場所に向けて大きな力を振り下ろした
調べつくしていたのに突如飛来した邪魔者
個では絶対に勝てない王の敵
個は、運が良かった、大地は裂かれ吹き飛んだが
個は無傷だった、宙にいる分け身も空にいる分け身も海にいる分け身も地中でその時を待ち続けている大地の分け身も!全て無傷だった!
なら、個は、個たちは…息を潜め精霊が去るのを待った
調べている時に比べて僅かな時間で王の敵がこの星から飛びたった
個は、この星もまた一筋縄ではいかないと各々を繋ぎ情報を共有し
脅威が無いとは思うことなく警戒し役目を果たす為に外へと出た
調べに調べた通り外にいる生物は弱く脆い
王の敵に比べたら何も怖くなかった
脅威が無くなれば
この程度の生物など恐れることは無かった
地上に出てから全てが順調だった
今度こそ、個は王に褒めて頂けると
分け身である五の全てが王に褒めてもらえると尻尾を振った
五が一つ
地上の邪魔な生物を壊す役目を背負いし大型蜥蜴は大地を笑う様に駆け回った
五が一つ
空からの支配権を他に渡さない為に分けた大型鳥獣、空を渡る技術のない人々を見下ろし優雅に空を楽しんだ
五が一つ
宙に中座し分け身である個を繋ぐための中継獣も仕事が無く、宙に漂い好物を美味しく食べていた
五が一つ
海には海中を支配するために役目として分けた大型鯨も海中を移動する術が無い低能な生き物しかいないことに喜び泳ぎまわった
そして、最後の五が一つ
個の役目は
星を調理する
分け身を補佐する
それが土竜という獣の形を成した個の役割
脅威のない土の中で、星の息吹を集めこの星に宿る全てのエネルギーを…王が好む糧を良質なものへと変えるために…個がするのは料理、星がもつ生命の実を料理する事。
脅威のないキッチンで料理を浮足立つように始めた
星に流れる力に触れ吸い出しエネルギーを集めていても何も起きない
守り手すら不在のこの星の料理なんて、問題なんて無くこの星を順調に調理できると喜んでいた
だけど…
それも僅かな一時だった
外に出て1日?2日?その程度でしか浮かれさせてくれなかった
大地を駆け、地上にいる邪魔者を壊す為の担当者が次々と壊された
何が起きたのかと慌てて外の様子を見るために地上へと顔をだした
宙の個が壊された
分け身が次々と壊したやつの匂いが此方に向いた
個も直ぐに逃げないと壊されると全身の毛が逆立った
匂いが届かない場所まで深く深く潜った
個を繋ぐ感覚を辿られ壊されないように
残された個二つはお互いの繋がろうとする感覚を切り身を潜めた
幸いにして人という脅威は長くはいない、個と違い永くを生きられない
地中深くで分け身を壊したヤツの匂いが消えるのを待った




