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最前線  作者: TF


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最終話 魂底の願い 7

爆裂式エンジンを臨界まで魔力を注ぎ刃の部分を回転させると握れないほどにチェーンソーが暴れようとする

念動力で自分の腕、指の骨がひしゃげ折れ曲がろうと固定し高速回転する刃をドラゴンの首に当て続ける

「にぎぎぎっぎぎぎ!!!」

全身が震えチェーンソーの持ち手が徐々に自身の体に近づき肋骨に当たり体全身が震えてしまう。

肋骨が折れそうな衝撃が伝わってくるが押し込む力を絶対に緩めない

何があろうと絶対に緩めない!!!

「団長!?おい!しっかりおし!!」

金属同士がぶつかる様な激しい音の向こう側から聞こえてきた女将の悲痛な叫び声に

つい、視線を向けてしまった…彼女が再起したのは一瞬だけなのだと、お互い残された時間が僅かなのだと…


その光景に歯を食いしばり最後の力を込める


「はやく、きれろよおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

チェーンソーを押し込み続けると刃の部分が赤くなってきている

「再生術式を加速させる!!魔力をより強く!!注ぐ!!!限界超えて再生させる!!!」

チェーンソーに備え付けられている術式、刃の再生術式を発動させ、さらに、回転する刃を冷やす為の術式も発動させる!!

「あいっで!?てっめぇ!!噛みつくんじゃねぇよ!!おらぁ!!!」

悲痛な叫びと金属が高速でぶつかる音が世界の果てで響き渡る

少しだけ刃が前へと進むとドラゴンの首が一瞬だけ跳ね

団長に深く突き刺した爪を引っ込め…槍が刺さったままだって言うのに!?此方に向けて!?

「おねぇ…ちゃん…あとは、お願いね」

伸ばされると思った瞬間、臓物を大地へと垂れ流していた団長がドラゴンの懐へとより深く飛び込むように一歩前進し

「魂は力!!心を強く!!私は!!誰にも負けない!!わたしたちは!!まけない!!」

槍を強く握りしめる音が一瞬だけ聞こえると、槍が小さくなりドラゴンの手首を捻るように角度を力任せに変えると槍が伸ばされドラゴンの首へと槍先がめり込んだ。

皮膚を貫き刺さりはしない、でも、喉を突くように喉元を圧迫する様に槍が置かれると


団長の体の周りが赤く光り始めた


赤色の光が団長の体を包み込んでいく

光が生まれたのは、大地へと堕とされた彼女の臓物

彼女は体外へと滑り落ちた臓物を…魔力へと昇華している

臓物が魔力へと昇華され光となり、その光が団長の体へと吸い込まれていくと


見えるはずのない光の柱が見えた


「おい!団長!やめろ!やめてくれ!!それは!!!あたいはもう、その光の柱をみたくねぇ!!親子そろってあたいの前から居なくならないでくれよ!!」

彼女の声を聞くまでもなく団長が何をしようとしていたのか直ぐに理解する


私も…ううん、私達も、何度もそれを行使してきたから…


「光は紡がれていく!!!これが!!私の死の一撃だ!!!」

光の柱が団長の手に集約されると槍がドラゴンの首を貫いた

その瞬間、ドラゴンの首から力が抜けたのかチェーンソーの刃が前へと進む感覚が伝わってきた。

「糞ドラゴンがぁ!!!!」

チェーンソーを力いっぱい握りしめ押し込むとチェーンソーの刃が深くめり込み

「Gyhaaaaa!!」

白い体液が空を舞うのと同時にチェーンソーがバラバラに弾け飛んだ

「姫ちゃん!?相手の首は切れなかったのかい!?あたいはどうすればいい!!」

その光景を見て焦った女将の一言に

「女将…ごめんね、名前思い出せなくて」

笑顔を向けると顔じゅう皺だらけになって此方に手を伸ばそうとしてくれている

「あんたまで!よしとくれ!いかないで!!」

伸ばされた救いの手に触れることなく私の腕は…砕けた指先を力強く握りしめ


拳は天を突く


「みんなに、さようならって伝えて、楽しかったよ!えっと…にへへ」

最後くらい名前を呼んであげたかったけれど思い出せない自分に苦笑を浮かべ

「あたいの名は!■■■だよ!!あんたが死んじゃいけねぇ!!あたいは!もう、あいつの、あいつらの悲しむ顔を見たくねぇ!!」

砕けた拳を埋め込んだ切り札がある胸骨へと振り下ろし



胸元に埋め込んでおいた切り札を砕く



性格最悪の始祖様が討伐するために出向いた他の星に住まう魔女が作り出した

【星を喰らう生物を産みだす液体の原液が入った容器を砕いた】


砕いた瞬間、胸の部分の感覚が一瞬で消え、後から激痛が脳へと届き思考が止まるが、液体はそんな私の状態なんてお構いなしに私を喰らい続けていく…


体の中心から私の体は崩れ液体へと変わっていく


全身が焼けるような痛みと骨が溶かされ内臓が潰されていくような感覚にたえ『僕が守るよ、僕は君の騎士だから』ようとしていたら痛覚が一瞬で消え

自身の肉体が溶けていくのを苦痛なく受け止めることが出来た


中心から溶けていく、液体となっていく体が首を伝わり脳へと向かってくる


そう、問題は…脳


私という頭脳が、意識が、魂が…自我という領域を保つことが出来るのか


これは、賭けだ、実験なんて出来なかった。

一度限りの賭け、この賭けが失敗したら人類は滅びる。


己の意志を強く持ち魂を奮い立たせ

絶対に折れない砕けないと自身に言い聞かせ私の体が溶けていくのを感じ続けていると


顔が溶けていき、喉が無くなったのを感じ、音が消え


視界が消えた


時期、脳も溶けて消える

瞬間、イメージが告げる、自分は死ぬのだと

恐怖が心を砕こうとする

死ぬのは慣れている、そう、慣れているから怖くはない

でも

それは、次の私にバトンを渡すことが出来るから

でも

今回は、バトンを渡すことが無い


次へと繋がらない


私という個はまた、無意味に死ぬ



怖い



『させないさ、俺が守る、聖女を守る騎士、白き黄金の太陽に俺は成る!!愛する君を守る為なら!!この魂!!忘却の空へとくべてやるさ!!』


愛する旦那の力強い言葉に包まれ、恐怖心が完全に消え去り安堵感と共に全てを委ねることが出来、脳が溶けて消えていく


脳が全て溶けたとしても愛する旦那のおかげなのか思考が途切れることはなかった


真っ暗な世界の中、思考だけが残される

思考さえあれば、魂があれば…


後は…最後の目的!この体を動かす事!!


感覚は…残されている!自分の体がドラゴンから滑り落ちようとしているのが!何となく伝わってくる!!

何とか、滑り落ちる前に体を動かすという感覚を掴んで私という液体をドラゴンの中へと滑りこませないと!!

『こっちよ』

外へと放出した赤き血潮が私に語り掛けてくる、眼球を失った私が見えるはずがないのに、何故か見える、感じる!


私の体から魔力が無駄に出て行かないようにと封印していた術式が!語り掛けてくれる!

この体へと変貌したとしても機能してくれているのか、私を包み込むように光り輝くのを感じる!!


放出した血潮が今一度、私の体を包み込みスライムへと変貌した私の体をどう動かせばいいのか教えてくれる!!


念動力を使ってどろどろに溶けてしまった自身の体を操作し切り開いたドラゴンの中へと押し込む様に滑りこませていく



全ての私がドラゴンの中へと滑りこむ…

流し込まれていく…

体の一部が次々と、ドラゴンの中を汚染していくのが伝わってくる。



後は…こいつの全てを私が掌握するだけ



そう、これが…今代の私が考え付いた切り札

ほーりーばーすとですら貫けない硬い鱗を持つこいつを壊す!そんな事なんてね、鼻っから出来るわけがないと踏んでいた。


だったらどうするべきか?どうすればこいつを殺せるのか…

今代の私が過去の私達の記憶を元に行きついた答え


性悪な魔女が研究し産みだし、始祖様から見れば粛清対象になるであろう最悪の品を錬金した。


全てを内包する魔女お手製の禁制のスライム

星をも喰らう存在、全てを内包する様に喰らうのであれば…


ドラゴンの体を喰らうことだってできる!!


そして、予想通り、ドラゴンの皮膚は硬く、溶けてしまった私の肉体では溶かすっ問うことは出来なかった、でも!体の内部からなら!


予想通り可能だった!!

一か八かの賭け、その第一段階には辿り着けた!!


後は!!こいつの全てを私という存在で満たし!掌握する!!!


自身の体をドラゴンの体、全てへと循環させるように伸ばして続けていく。

ある場所へと辿り着くと今まで視界という情報が私に接続されたのか外を見ることが出来た


外には私を睨みつけるように大きな口を空けている女将が見えた

次に、聴覚が繋がったのか音が聞こえてくる

「お前だけはぜってぇに!!壊す!!粉砕してやらぁ!!!」

彼女が繰り出す拳が何度も何度も顔を叩く

ドラゴンが自由になった爪先を彼女へと向けようとしているのが伝わってくる

『やらせるもんか!』

感覚を伸ばし運動領域を侵食し制御する

彼女へと伸ばされた爪を、彼女に触れる寸前で止めることが出来た


彼女は、自分の手が硬い鱗によって傷つけ砕けようとしていても拳を振り降ろし続けている。

自分を殴り続けてくるドラゴンは口を大きく開き目の前にいる大きな女性に噛みつこうとしているのが伝わってくる

『っこ、、、のぉ!!』

運動領域から顎へと意識を侵食させ動きを止めさせる

「あ?な、んだい?あたいの拳が効いてる、のかい?」

彼女の腕に噛みつこうとしていた顎が止まったのを女将が不思議そうに見ている

何とか、顔を引っ込め、口を閉じさせると

「ど、どういうことだい?」

困惑し此方を見ていると目が合い彼女と何かが繋がった様な感覚がした

「ひめちゃん・・・なのかい?」

優しい瞳が此方に向けられ始める

女将は力が抜けたのかその場に座るように腰を落とし胡坐をかき天を見上げ

「そうか、姫ちゃんか…なら、殴っちゃいけねぇ、な」

静かにゆっくりと頭を垂れ動かなくなってしまった。


彼女に回復の術式を施そうと腕を伸ばそうとしたが…

彼女の魂が大地へと吸い込まれて行くのが見えてしまった

それと同時に、団長の魂もまた大地へと吸い込まれていくのが見え


思考が勝手に動き出す


守らなきゃ


その一心で手を伸ばし思い描いた術式を…古き昔、お母さんの大切なものを守るために編み出した術式、時空凍結保存の術式を構築し発動する

普段の私では圧倒的に魔力が足りていない術式も難なく発動することが出来たが、制御が難しくひとりだけしか守ることが出来なかった

『ごめん、女将…』

団長の体だけを大地へと吸い込ませ術式で包み込むことしか出来なかった


女将の体は光へと変わり空へと旅立って行ってしまった…



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