Fine 道の果て 17
余りにも私と態度が違うもう一人の私に説明をして貰いたいけれど…今は流れに任せるのが一番よね?
【貴女のそういうところ好きだよラジアータさん】
らじあーた?違うわよ?私の名前はターア・ジラよ?
【ふふ、いいの、貴女はラジアータさん、私と一緒に…傍にいてくれたお姉さんそっくりなんだもの】
何かが私の手に触れると、引っ張られるような感覚につい、足が前へと進み何処かに誘われていく。
【この先、進んで欲しいの、説明してあげたいけれど時間が無いの】
大きなドアの前に立たされるけれど、この先は大型魔石が保管されているこの街にとって最も重要な場所、それゆえに、扉は頑丈に閉められている。
鍵は、あいにく持ってきていないのよ…
【鍵?それならなくても大丈夫だよ】
ほらっと腕を伸ばされると扉が勝手に開いていく
「どう、いうこと?」
有り得ない光景に驚かされ続け思考が真っ白に染まってしまう。
【うん、それでねあそこに座って欲しいの、これで意味が分かったよね?コスモスさん】
『そ、んなことが私にできるのでしょうか?』
「何をするの?あそこって!」
吸い寄せられるように視界が一点を見つめてしまう。
その場所は、魔力を集めるために造られた特別な場所、姫ちゃん以外触れてはいけない術式が刻み込まれている魔力を集積する陣
【大丈夫だよ、罠じゃない、そんなもの、私達が許さない】
『で、ですが、その、私でも』
事の流れは読めなくても、もう一人の私が変に怖気ついてるのに腹が立ち
「さっきから貴女は何を言っているの?らしくないじゃない!はっきりいいなさいよ!」
ずっと、らしくなく自信を喪失してしまっているもう一人の私につい強い言葉を押し付けてしまうと
『五月蠅いわね!聖女として人生を歩んだ私には…この、こ…妹と違って、私は…才能がない私がルの力を扱えれる何て想像できないのよ』
ルの力?…術式と何が違うのよ?術式は得意でしょ?
『得意じゃないわよ、妹という天才の傍にいたのよ?劣等感で押しつぶされそうよ…』
【大丈夫、貴女は目覚めている自身の命題に…この呪いは貴女を奇跡へと導いてくれる】
よくわからないけれど、貴女が尊敬する人が大丈夫って言ってるのなら、大丈夫じゃないの?
「えっと?そ、そうよ!何事もやってみなさい!よくわからないけれど!貴女の出番なんでしょ!」
【ん~…ううん、貴女達の出番、コスモスさんだけじゃダメ、ラジアータさんの力もいるよ】
唐突に向けられたプレッシャーに心臓が小さく跳ねる。
「ひゃ!?ぇ、わ、私も何かするの?」
視線が泳いでしまうが何かに押される様に体が前へと出ようとする
【ごめんね、時間が無いの、私達に与えられた魔力がもう、僅かなの】
『覚悟を決めました!私、私でも世界を救う為にルの力をここに!』
私の意思とは関係なく足が前へと進んでいく
ちょ、ちょっとまって!?命題って、ルの力って、わ、私は何も知らないわよ!?そんなの聞いてないわよ!?
流される様に、踏みとどまることが出来ず、陣の前上に立つと陣から魔力が流し込まれてくる?私、何もしてないわよ!?
「ちょ、ちょっとまって!?」
陣をいじったりしていないのに、どうして私の体へと魔力が流れ込もうとしているの!?
『これが…私を主軸とした陣に書き込まれていた術式、私という鍵がこの陣に触れると自動で発動する…敵によって魂に刻み込まれた呪い、あいつ等が私を贄として捧げようとした術式』
そ、それって大丈夫なの!?魔力が集まりきったら贄へと捧げられたりしないの!?
『贄へと捧げられる前に、私の力で魔力を!』
【ええ、初めてにしては上出来ですよ。不浄を拒み清浄を求め聖女という偶像を体現するために生きたかった私の願いをここに】
なに?なにか、声が、いえ、これは、うた、ごえ?
陣が振動する音以外にも何処からか聞き覚えのある歌が広がっていく。
『嗚呼!何て、清らかな歌声なのでしょう、教会に音をもたらせた聖女様』
【貴女の歌もとても綺麗よ、ここには何人たりとも触れさせはしません、貴女の歌を存分に歌いなさい】
【うん、とっても綺麗、これで、私も動ける、ありがとう】
姫ちゃんに似た影が消えていく?え、どう、どういう状況なの?
『愚鈍な私、貴女も私と一緒に歌うのよ、さぁ!共に繋げましょう!』
繋げる?何を!?
『私の命題、それは…【紡ぐ】それが私の魂底に刻まれし願い』
つむぐ?何を紡ぐの?…まさか、これ?この糸のような、いえ、糸?違うわ、これは魔力。
『そして、貴女という触媒…もとい、貴女という魂が繋いできた人達、心通わせた人達、今なら感じ取れるでしょう?』
感じ、と、れ?る?
不確かな言葉、わかるはずのない言葉、だというのに不思議と…手を伸ばすとその先に何かがあるのだと感じてしまう、手を伸ばせばすぐそこに…届きそうな気がする。
【貴女はルという名の呪いとは無関係、でも、深く繋がっています、さぁ、その不確かな何かを繋げて】
つなげる、ふたしかな…何も感じないわけじゃない、何かを感じている、不思議とすぐ、傍に誰かを…
いいえ、これは誰かじゃない
いいえ、これは不確かなじゃない
これは、私の大好きな人…
「感じる、騎士様、私の…」『私達の!間違えないでよ』
騎士様の心がすぐ傍にある、それだけじゃない、これは、姫ちゃん…
それと、知らない…いいえ、知ってる。貴方も、ここにいるのね。
状況はわからない、でも、感じ取れない人もいる?
【いまは最も必要としている人達を、そして、魂の開放を…始まりの聖女であらせられる癒しの聖女様が道を切り開きます、それが、託された聖女として…私達の最後の役目】
『始まるわよ!集中しなさい!私が紡ぐ!貴女は繋げて!』
魔力の糸が、心の糸が、魂の糸が彼女へと彼へと、愛する人の魂へと触れるのがわかる。
繋がっている、私の大切な人達の魂と…
なら、私が何をするべきなのか決まっている…
私は、それを何年もなんねんも…ずっとずっと、大切な人にしてきたから…
「魔力は、心…魂は、魔力…愛する魂は力となれ!!!」
陣が輝き小さく振動していくと小さな歌声へと変わり音が部屋を包み込むともう二度と感じることは無いと思っていた愛する人に触れた
『嗚呼!だーりん!!愛しのだーりん!!』
「会いたかった!また、会えるなんて!」
見えるはずがないのに感じる
幻影なんかじゃなく幻惑なんかでもない
確かに感じる
『救世主なんてがらじゃないけど、世界を救おう僕達で』
「『はい!騎士様!!』」
彼の背中を押すように、あの時のように、彼の命を繋ぐように彼の魂へ魔力という名の愛を重ねる。
そしてすぐに『完全に繋がったわ!』もう一人の魂が、今にも消え入りそうな魂が大きく最後に弾けようとしている魂、弾けさせないように、彼女の生涯を守るように包み込む
「姫ちゃん!お待たせ!」
子供を…赤子を…守るように魔力で包み込む、母として、愛する子を守りたい願いで彼女を包み込む
『次!繋がったわよ!』
もう一人、私の知らない、それでも、知っている人。
強烈な光に恋い焦がれ魂を焦がした人、私と同じくね…
憧れていたよね、聖女様のような救世を成す人物に
その懸け橋になってあげる、何の因果でしょうね…
力をアナタに…
陣から魔力を吸い出し、紡いだ糸が繋がり、魔力を送る
魔力譲渡法+ルの力によって愛する人達を導く!!!
大型魔石が光り輝き、多くの祈りが産声を上げるように広がっていく。
この魔石には多くの人の祈りが込められている、邪念もまた心、その心すらも糧として聖女は世界を導く。
【はい、始祖様から託された命短し短命種は聖女として人々を導いてきました、さぁ、皆さん、お仕事のお時間ですよ?始祖様にまた、笑って出迎えてもらえるように私達で救済を成しましょう】
【街の人達は私達に任せて!】【彼女を通して祈りを捧げて!】【貴女達が最後の聖女よ!】【街を救いましょう!】【ケダモノに負けちゃダメ!】【愛する人を傷つけたあいつ等を許したくない!】
陣から魔力を全力で吸い出し送り続けていると、周囲に多くの意思を感じ、いえ、見える。
数多くの白い髪の少女たちが…
見える…
【さぁ、歌いましょう…聖女として最後の大合唱を】
【はい!】
【指揮者が欲しいけれど、適任者となるのは…彼はどうかしら?】
【適してるんじゃない?】
【では、繋げて頂けるかしら?】
『はい!彼の魂に祈りを!!』
「そうね!この街で一番の音楽者は彼を除いていないわね!」
ティーチャーの魂を気配を探ろうとすると『こっちこっち』翅の生えた子供達が私の視界を高い空へと導いてくれる
『これなら、みえ、るでしょ?えっと、お母さんのお母さんだから~』
『お祖母ちゃん!!』
多くの翅の生えた子供達が私の周りを飛んでいる。なんて幸せな光景なのだろう…
「ありがとう、私の大切なお孫ちゃん達、術が苦手なお祖母ちゃんを導いて」
『うん!任せてよ!へへへ』
今にも倒れそうになっている一人の指揮者へと案内され、彼の魂へと魔力の糸を繋げ、魔力を送り届ける。
今にも消え入りそうな彼の魂が今一度鼓動し、音を奏でる。
彼の終わりの音はまだ遠い…
さぁ、いきなさい、愛する家族を守るために貴方はまだ終わってはいけない。
【指揮者の旅立ちはまだ遠く!でも、私達が見えないのは困りました】
【だったら、いい人知ってるよ?きひひ、ね、ルィンティア】
【敬愛する聖女様からお願いされてはお断りは出来ませんとも、ええ、我が恨み辛み、思う存分晴らさせていただいても?】
【いいよ!私達にどんどん歌って欲しい歌を指示して!!】
【では!計を授けましょう!我が知恵、聖女様と共に!!さあ!彼の者と共に聖者がこの街に降臨したのだとパレードと致しましょう!歌っていただけますか?聖者の凱旋を】
【うん!】
繋がり広がっていく世界…
死の大地が多くの祝福に満たされ
人の手によって浄化されていく…
残すはただ一つ
いいえ、あと二つ
私達の心は何時だって一つ、私達はチーム、いいえ、家族に近い。
独りで闘い、今にも消えてしまいそうな馬鹿が独りでいる。
もっと、私達を頼りなさいよ、いっつも、独りで抱え込もうとして…心配なのよ。
ねぇ?騎士様。お馬鹿な弟子を迎えに行きましょう。
『もちろんだとも、僕もそうしたい、君も同じで嬉しいよ。彼女を救いたい、手を貸してくれるよね?』
「『はい!騎士様!』」
愛する人が大切な人を守る、手を貸さないわけ何て無いじゃないの。
待ってなさい女将…いいえ、マリン・パライバ、友がいいえ…
アナタが待ち望んだ最高のチームで助けに行くわ!!
アナタが待ち望んだ死の街最強のメンバーでね!!
「いけるわよね?」
『誰に物をいってるの?あいつからの呪縛から解放されたこの私が出来ないわけがないでしょう?』
もう一人の私が空へと…いいえ、もっと遠く、月へと意識を向け言葉を紡ぐ
さぁ!月よ!!聖なる月よ!!
始祖様が待つ聖戦はまだ何処!
月の裏側に旅立ちし戦士達よ!
此度!導くは白き聖女!私達の無念を晴らしましょう!
集え!死の大地で悲壮な死を告げし者たちよ!!
歌え!最後の挽歌を!祈りの歌はここに捧げられた!!!
彼女の祝詞が空へと吸い込まれて行くと、帰ってくる、私達の失ってしまった友が…
『応!その強き願い!応えずして何が弟子であるか!』
『はい!私が望んだ戦いをここに!』
さぁ!歌って!カジカ!貴方の天へ捧げる祝詞が今こそ必要なのよ!
『任せるのであるな!では!師匠!師匠もご一緒に!!』
『ああ!もちろんだとも!歌おう!祈りを込め僕たちの明日へ!!』
さぁ行こう、私達が望んでいたけれど、進むことが出来なかったあの先へ…




