表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最前線  作者: TF


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

800/843

Fine 道の果て 16

味方ごと…巻き込んでも良いのならやりようがあるのだけれど、そんな選択肢を選ぶわけにもいかないじゃない。


暴徒鎮圧用の魔道具、あれを連続で投げ続ければ?

いけそうね…投げるくらいなら認識阻害のマントを見破られることなんて無さそうだし

ポケットの中から魔道具を取り出し数を数える


合計で五つ、足りないわね、あれらの動きを止め続けるのなら最低でもこの十倍はいるんじゃないかしら?

なら、搔き集めればいいだけじゃない!

息を殺しながら魔道具が入っている箱を見つけては蓋を開け中身を見て魔道具を回収しようと試みるが


「…そうよね」

二つ目の箱を開けてみるが…お目当ての魔道具が入っていなかった、寧ろ、殆どの魔道具が入っていなかった。

一つ目も二つ目も、中身は殆ど空っぽ…既に使ってるわよね…


探すこと自体が間違っていたわね、冷静に現場を見なさいよ!

もう手持ちの魔道具が無いから己の魔力を使って術式を使ってるって事じゃない!

先の光景で気が付きなさいよね!私ってほんっと馬鹿ね!


この状況をひっくり返す魔道具…仲間を犠牲にしないといけない魔道具なら…


研究塔に保管されている。

幹部しか触れてはいけない危険な魔道具がある!

それを調節して…そうね、風を操る魔道具とマスク型の魔道具を用意すれば

「やれないこともないわね」

下がって研究塔へと向かおうと振り返ると

「…!」

独り言をつぶやいてしまった己を恨みそうになった。


音に敏感な獣!!蝙蝠が目の前に!!私の周囲を漂うように飛んでる!!

姿勢を低くしてやり過ごそうとした瞬間「ぁっ!?」鼓膜が裂けそうな痛みで耐え切れず小さな声を出してしまった。

その声を聞き逃すほど蝙蝠の耳は優しくなく、周囲の何処かに潜んでいた蝙蝠が一斉に襲い掛かってきてマントに噛みつかれてしまう

「っち!」

メイドのやつに一言謝ってからマントを脱ぎ捨て蝙蝠に暴徒鎮圧用の魔道具をぶつけて地面へと叩き落し近くに置いてある箱で潰そうと持ち上げるために手を伸ばすと

「っきゃ!?」

手に触れたのは硬い木箱ではなく、毛の生えた何かで反射的に手を引っ込めようとしたが

「ぃったいじゃないの!!」

直ぐに腕から強烈な痛みが走り噛みついてきた獣を地面に叩きつけるが噛みついた腕を離すわけもなく、寧ろ、自分の傷口を広げてしまった

「こ、っの!!」

噛みついてきた兎に暴徒鎮圧用の魔道具を眉間に押し込む様に起動させ自分諸共、脳を揺らす

「っう”!?」

魔道具の効果が強く、兎のやつも噛みついていたのを離し動かなくなるが、それは私も同じ。

今自分が何処を向いているのか、上も下もわからなくなってしまった。

「ぁ、っち、ぅ」

嘔吐しそうになるのを堪えていると『何やってるのよ!』体が勝手に動き出し視界が揺れる中、ここから離れるように体が動き出す。


「あり、が」お礼を伝えようとしても喉が思った通りに動かない。

『黙ってなさい!舌を噛むわよ!』

もう一人の私がどうやっているのかわからないけれど、体を動かしてくれている。

「あ、ぁ」あそこに、逃げて、あそこなら、獣が入ってこれない

『あそこ?…そう!わかったわ!』

何とかもう一人の私に逃げ込んで欲しい場所を伝えると

『ここよね!?』

術式研究所の近くにある大型魔石が保管されている地下室へと通じる扉の前に立たせてくれる。

揺れる視界の中、幹部しか知らないドアを解錠させ重たいドアを開こうとするが力が入らない

『開ければ良いのね!』

力を入れることなくドアが開かれ吸い込まれる様に中へはいると、ドアが閉まる勢いに押され、階段を転げ落ちてしまう。




「っぁ!?」

腕からくる鋭い痛みで飛びかけていた意識が戻ってくると、冷たく硬い床に寝ころんでいることがわかる。

噛まれていない方の腕で何とか上半身を起こし立ち上がろうとするが足に力が入らない。

立つことが出来ず腕の力を抜き、ゆっくりと硬い床に体を寝かせると色んな箇所から強烈な痛みが襲い掛かってくる。

痛みに耐えながらポケットからハンカチを取り出して腕と口を使って傷口を縛り回復の術式が刻み込まれた紙を当て魔力を流し込む

「…」

流し込みながら目を瞑り冷静に、自身の体の損傷個所へと意識を向けていく。

肩の痛み、腕が動いているから脱臼はしていないから打撲ね

腕の痛み、噛みつかれたさいに下手に振りほどこうとしたのが失敗したわね、歯がめりこみえぐれてしまってる、幸いにして骨は…砕かれていないわね、怖いのが感染症ね

背中の痛み、正中線ではなく少しそれた場所、肋骨のどれかが折れたかヒビが入っているでしょうね

膝の痛み、立ち上がる時に力が入らなかったけれど、不安定性は無かった、打撲ってところね、半月板や脱臼、皿の骨折はない、と嬉しいわね

おでこが痛い、ヒリヒリする辺り、擦過傷ね、血も溢れ出るような感じも無いから、少し擦っただけね


これはもう、全身痣だらけね、お風呂入る時、皆に笑われるわね。


暫くすると腕の痛みが抜けてきたので、立ち上がろうと上半身を起こそうとすると「ぃ!?」背中からの痛みがひどく動けない

さっき動けていたのは肋骨がずれていなかっただけ、今は折れた肋骨がずれて痛みが酷いってところね

「はぁ、はぁ、っく」

歯を食いしばりながら肋骨を触診し折れた箇所を見つけ両手で固定し回復の術式が刻み込まれた紙で回復を促す


徐々に背中の痛みが無くなってくる間、冷たい床に寝ているせいなのか、体全身が冷えてくる。

「だぼく、には、ちょうどいいんじゃないかし、ら」

冷えてきた影響もあって痛みが引いていく

肋骨の痛みも軽度になってきたので、試しに上半身を起こすと痛みはあるモノの動けないことはなく、何とか痛みに耐えながら立ち上がり、薬が入っている場所へと足を擦りながら移動していく。

薬が保管されている箱から薬を取り出して蓋を開け適応量を測ることなく一気に飲み干し、直ぐ近くにある、点滴用の液体が保管されている箱を開けて瓶を取り出し中身を一気に喉の奥へと拒絶されようが流し込む

「っぶは!ぁ、っは…」

痛み止めと、栄養を同時に取り込んで!後は、回復の陣で回復を早めれば動けるようになるわね!

ある程度、動けるようになったら外に出て、研究塔へ急ぎ向かわないと…


「腕…痺れてこないわね、運が良かったのかしら?」

徐々に痛みが引いてくると呂律も安定してくる

兎に噛まれたのであれば感染症の類が怖く、即効性のあるモノだったら噛まれた患部が痺れてくることがあるけれど、膨れ上がる様子も無ければ痺れる様子もない。

どうしてなのだろうかと、考えていると

「…ぁ!そうよ、飲んでたじゃない!私も!」

レジスト薬を飲んでいたことを思い出し

「今日の私は、絶好調じゃない」

運が良かったと胸を撫でおろす。


「痛みも落ち着いてきたわね…」

体からの痛みが引いていくと、鉄板を叩くような音が遠くから聞こえてくることに気が付く

「兎でしょうね」

恐らく私に噛みついた兎がこの部屋に侵入しようと扉に向かって体当たりをしているのでしょうけれど、無駄よ、その扉、モノすっごく頑丈に作られているのよ?兎程度じゃ壊す事なんて出来ないわ。


叩く音が鳴りやまないけれど、特に不安を感じることはなかった。

「動く前に、ありがとうね」

もう一人の私が助けてくれなかったら確実に他の獣に殺されていた。

お礼を口に出しても何も反応が帰ってこない、照れているのかしら?


照れ隠しが下手糞な馬鹿は放置しといて

如何にかして、ここから出ないと


「確か…」

この地下室は術式研究所と、研究塔へと繋がっている通路が用意されているはず

大型魔石から魔力を直接流し込まれている施設が二つ研究塔と術式研究所

他の場所には研究塔や、術式研究所を経由して魔力が流れていくように出来ている。

病棟にも何時か、直接接続する予定ではあるけれど、まだ、作れていなかったわよね?


その為、点検通路として術式研究所と研究塔に繋がっている通路が、ある、はず。

昔に姫ちゃんから教えられた記憶を頼りに扉の前に立ちドアノブを捻ってドアを引いてみるが

「鍵かかってるじゃないの」

鍵がかかっていて開かなかった。


誰かに勝手に入られると困る場所は厳重って事よね


そうなると、今もなお執拗にドアを叩き続ける獣が待ち構えている地上を通るしか道が残されていない。

「これ、俗にいう詰んでるっていう状況じゃないのかしら?」


生きる為に選んだ先がまさかの、袋小路…選択肢を間違えたのだと膝をついてしまうと

【ううん、ここにきてくれてよかった】

聞き覚えの無い声が聞こえ頬を撫でられる

【貴女達の力が必要なの】

顔を上げると薄っすらと何かが目の前にいる気がする

『貴女、様は』

【痛いよね、少しだけ魔力を頂戴】

乞われるように、いえ、縋ってしまいたくなるその言葉に腕を前に出し手のひらから魔力を放出すると

【ありがとう、流石だね】

清らかな何かに体が包まれていく不思議な感覚が全身を駆け抜けていくと

「いた、みが?」

痛み止めを飲んでいたとしても痛かった様々な痛みが完全に消え去り

「ぇ?どう、いうこと?」

立ち上がると何処からも痛みが無く、前腕に巻き付けたハンカチを外してみると

「…これが、奇跡?」

傷跡すら完全に消えていた

『嗚呼、ああ、そう、なのですね!貴女様が!真なる聖女様!』

【そんな風に持ち上げないで、私はただの…太陽の光を大地へと照らす月光の下で咲く棘がある花】

『はい!私達の名前のルーツ!イラツゲ様!』

【違うよ、イラツゲじゃないゲツライ、性格には月来香、好きな人がね、つけてくれた名前、ルしか名前を与えられなかった可哀相な私に慈悲をくれたの、別名、月下美人、ステキでしょ?】

薄っすらと見える影、いえ、もや?湯気のような、その中に僅かに見える小さなシルエット

まるで…そう、何処か、姫ちゃんに似ている様な雰囲気がある

【そうだよ、血をさかのぼれば同じ家系だからね、似るのも当然じゃないかな?って、そんなことよりも、自覚したでしょ?コスモスさん】

『は、はい!私の命題、魂底の願い、ですが、でも、それが何を意味するのか』

置いてけぼりになるように話が進んでいくのですけど?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ