Fine 音は終わりを告げる 16
人差し指を死霊使いの眼球へと向け指先から光を走らせる!!
ほーりーばーすとの術式は使えなくても!
それを模した術式は考案構築済み!!
ほーりーばーすとは違って細く弱々しいかもしれないけれど!
それだけで十分!!!
指先から放たれた鉛筆よりも細い一筋の光が死霊使いの眼球へと刺さり
「Aaaaaaahyagya!!!」
あいつにも痛みというモノが備わっていることに心が晴れ渡りそうになる。
目を抑えるように両腕を勢いよく上げ手に持っていた魔道具が空へと放り出される
死者の魂を冒涜する魔道具だったものが
砕け散り空中へと弾けるように霧散するのを見届けていると
即座に死霊使いの首元へと剣が撃ち込まれる
「!!!」
声はしなくても解る、彼の怒りは私達では想像することもできないほどに強大である
だけど、彼の怒りが込められた渾身の一撃、ありとあらゆる感情が込められた一撃だとしても敵の首が飛ぶことが無かった、あれの肉体は特別製、如何に戦士長と言えど容易くは切れない
でも、この瞬間を見逃すほど私の愛する旦那様は甘くもなくゆるくもない。
切れないなんて、それを許すわけがない、お前はもう死んでくれ、二度とその面みせんな!!!
「助太刀します父さん!!」
死者に囲まれていた愛する旦那様が死霊使いの傍に駆け寄っている!
駆けだした勢いその全てを乗せ全身全霊の力を込め破邪の槍を振り下ろされる。
二つの刃が鋏となり鋭い刃によって死霊使いの首と胴体が永劫の別れを告げるように寸断され
私達を苦しめ続けきた死霊使いの首が宙へと舞った
呆気ない幕引き、こいつにはもっと苦しみを与えたかったが、これでいい。
本音は目を潰してありとあらゆる術式をぶつけてやろうと思っていたんだけどな、先を越されちゃった。
でもこれでいい、こいつは虚を突かない限り犠牲無く倒せれるとは思っていなかったから。
予想外だったのはこの隙を見逃さず直ぐに行動をしてくれた戦士長…
敵の呪縛から解き放たれて直ぐに行動を起こすことが出来るなんて、ほんっと並外れた精神力じゃないよ。
さすがだね、お母さんが好きになっただけあるってことか。
馬面のような頭が地面へと落ちていきバスケットボールのように何度か跳ねて転がっていく。
そして、馬面とお別れした肉体が大地へと倒れ込むと
「・・・」
周りにいた死者達もゆっくりと大地へと吸い込まれていくように倒れていく
何度もはねて転がった頭に向けて手を上げると近くにいた近衛騎士達が私が手を振りかざすよりも先に何度も何度も叩きつけて砕け散るまで執拗に死霊使いの頭を剣で叩きつけてくれる
「死の大地の掟しっかりと把握してんじゃん」
同胞の嘆きを晴らすかのように叩き続けているのを見て、静かに手を下ろすと
「・・・」
戦士長は何も言わずに駆け出して行った。
「あっちは確か…走って行ったってことは」
大きなおおきな大地を震わせるほどの咆哮を上げた獣が居る場所
あの魔道具を壊したら死者は全て大地に還るのだと思ったけれど、彼が駆けだしたってことはそうじゃない。
私達も応援に向かうべきだろうか?
『彼が向かえば万事無し、君は君のなすべきことを』
『ありがとう、嗚呼、ありがとう、あえた、やっと貴方に会えた』
『会いたかった、もう一度、君に抱きしめて欲しかった…ありがとう聖女様』
頭の中に響き渡る声が天へと吸い寄せられるように消えていく…
空を見上げると先生と、名も無き見知らぬ聖女が天へと吸い込まれるように消えていくのが見える。
「こちらこそ、ありがとう守ってくれて。先生、不出来な弟子でごめんなさい私がもっと賢かったらここまで気苦労させることなんて無かったのに」
出来る限りの微笑みで彼らを見送ると近くで慈しむような声が聞こえてくる
「懐かしい人の声が聞こえたよ、彼女もまたこの大地に繋ぎ止められていたのだな」
生前、彼女を支え助けるために動き続けてくれた、旧知の仲だもんね。
「うん、気が付かなかった、たぶん、何度も助けてくれてたんだと思う」
見えないところで私は、私達はきっと彼女に助けられていたんじゃないかと思ってしまう。
それ程までに、彼女の心は暖かく清らかだった。
「そうか、聖女として死してもなお人の為に、穢れ無き崇高なる人だな、それにあの光」
光?死霊使いの魔道具を壊した光?それとも、私が死霊使いの眼球を貫いた熱線の術式?
「光?私が敵に向けたやつ?」
「いや、違う、白き黄金の太陽が大地を裂いた時に用いた光だ」
…初耳な情報なんだけど?白き黄金の太陽って人じゃないってこと?
「っとなると、天へと向かって駆け抜けていったあの魔道具を壊した光だね。確か…精霊って聖女様が言ってたけど、もしかして白き黄金の太陽って人じゃないってこと?精霊だったりする?」
私はてっきり、地球の人がこの星に何らかの方法で訪れたのかなぁって思ったんだけど、もしかすると、地球に訪れたことがある光の精霊だったり?
「素性も何処か遠い大地の生まれと育ちくらいしか俺達は知らなかった、扱う文字も見たことのない文字に聞いたことのない言語だった、全てに置いて得体の知れない人だったからな。我々は彼を異国の人だと思っていたが、もしかしたら、人ではなかったのかもしれない。だが、それが何だというのだ、俺は彼に何度も何度も…死んでからも助けられるとは思ってもいなかった。彼の気高き心は我らと同じく人だ、我らを太陽のように見守り力を与えてくれた素晴らしい人だったさ」
うん、そうだね。
心が人だったら人でいいっか、うん。私もそう思う。
白き黄金の太陽が私達を助けるために力を授けてくれていたんだもん。
そっか、ほーりーばーすとが使えたのも精霊様が力をお貸ししてくれていたんだね。
知らなかったとはいえ、無理を押し付けすぎてたかも?にへへ…
二人、空に輝く太陽を眺めていると
「我が祖よ、この様な場所で拝謁賜り何と」
今まで聞いたことのない他者を敬うような言葉遣いに驚き声の方へと視線を向けると
兜を外し頭を垂れている王がいる。
他者を敬う心があったんだ…
「ああ、いいよ。キミはキミらしくしてくれて」
その姿に特に動じることも無く分け隔てなく接する愛する旦那様の心の広さに私はもう蕩けちゃう。
「では、その様にさせていただこう。それにしてもだ、くく、さすがは魔女だな、王族の意思を具現化させるとは恐れ入ったぞ」
あ?キミまでそういうこという!私は死霊使いじゃないってーの!
「ざんね~ん、私の力じゃないんだな、これは」
死霊使いのまどうぐっと言おうとして気が付く
愛する旦那様も、また、あの魔道具で繋ぎ止められていたのだと
「…って大丈夫!?消えたりしない!?」
「実のところ、少々危ういと感じている、俺を繋ぎとめていた楔は消えた。もう一人の俺であればまだ俺を肉体へと繋ぎ止めてくれるかもしれない、悪いが傍へと誘ってくれるかい?」
そういえばもう一人の妖精の旦那様が静かっていうことは、きっと何とか踏ん張ろうと術式を構成して組み上げているってことだよね!
「うん!もちろん!」
そっと差し出された手を重ねるように触れる。
「No2にも感謝を言わねばな、彼女のおかげでここ一番で、足りなくなっていた魔力が満たされ渾身の力を発揮できたよ」
やっぱり!そんな気はしてた!私だけじゃなく■■■くんにも魔力が流し込まれてたんだ。
「驚いちゃった、まさか、そんな方法で私達に魔力を届けるなんてね」
叔母様…自分は力に目覚めていないとか言ってたのに、用意周到っていうか、用心深いっていうか、そういう切り札があるのなら教えてくれてもよかったのにね!…ありがとうございます叔母様、貴女のおかげで私達は前へ進めることが出来ます。
きっと、叔母様も呪縛から解き放たれて今は天へと還っていらっしゃるころあいですよね。
貴女から受け取った魔力、これをもって夢ではなく人類に何時もの日常を、明日を、朝日を拝めれるように…怨敵を撃ち滅ぼしてきますね。
敬愛する聖女の一人に向けて祈りを捧げてから彼の手を取り彼の魂…団長と深く繋がろうと意識を集中させる。
今の私ならどんなことだってできる。
叔母様の『繋ぐルの力』に触れたのだから。
今もなお、感じ取ることが出来る、皆の祈り。
みんなの いのりが わたしを みたしてくれている
今なら、どんなことだってできる、今なら、負けるなんてそんな弱い気分に何てなれない。
誰が来ようがどんな敵であろうと、人々の祈りを束ねた私が負けるはずがない。
ここからは溢れんばかりの魔力によって全てを蹴散らしてあげるんだから!
でも、その前に!私を補助してくれる優秀なサポーターをお迎えしないとね!
帰ってきたら全力でハグしてキスしてもらうんだから!にへへ
お互いゆっくりと集中するために目を閉じる。
手のひらを通してお互いの魔力が重なって行き溶けあっていく。
ゆっくりと彼と私の魂が繋がっていく。
深くつながると彼が私の中へと戻ってくるのを感じ彼を受け入れた瞬間
「え?」
唐突にコップ一杯ほどの熱い水を勢いよく熱い液体が頬にぶつけられたかのような感覚に驚き目を開くと重ねた手のひらが赤く染まっていた
顔を上げると顔の雰囲気が精悍か顔つきではなく、女性らしい雰囲気に変わり目の前の光景に驚く様に目を開いている
団長の瞳が横へと動く
私もそれにつられて視線を動かすと
すぐ目の前に赤く染まった人型の指先があり、その奥には金色の鎧がある
「ぼさっとするな!我ごとで構わぬ!大地との別れを告げさせてやれ!!!」
特別製の体を瞬時に焼き切るには始祖様が与えたもうた寵愛の加護が手取り足取り教えてくれた術式が頭に浮かび
「熱よ熱…我らに授けたまえ
原初の輝きを我らに授けたまえ
天に輝く祖なるは日輪へと届き
汝らの願いをここへ叶えよう
偽りの天を駆け抜け
真なる天へと還り願いを成就せよ」
『フレイムタワー!!!』
規模はあの時ほどの大きさは無く
けれども、特別製の死霊使いの体を灰へと還すことが出来た。
ただ、近くにいた彼は…




