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最前線  作者: TF
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遠く離れた場所での戦い

暫くの沈黙の後、蓄音機から、渋い声が固唾をのんでいた集団に響き渡る


『申し訳ない敵は頭部への攻撃を警戒しているのか当たらぬ、意見を求む』


…頭への攻撃を警戒するのは基本的に生物としては普通だから、それを工夫して当てて欲しいけど、近寄れないのなら動きを封じるわけにはいかないものね。そう考えると攻撃をピンポイントで狙いを澄まして当てるのは至難の業だよね。


この状況で、どうやって指示を出すのだろうかと何か、考え込んでいる姫様をその場に居る全員が見守っていると


「わかりました、もしかして、炎は特に警戒なしで、石などの表面積の大きな攻撃を一番警戒していませんか?どうぞ」

『現場の者に確認させるしばしまて』


炎なんて、生き物ならどんな生き物であろうと警戒するよね?攻撃の手段を絞るのはどういった意図があるのだろう?


現場にいる幹部達もひそひそと姫の意図を探っていた、後で解説してくれるのが姫様の良い所だから、当事者でない部分もあって、少しだけ、そう、ほんの少しだけ、こちらの幹部連中は緊張感が欠けている。


『確認の為に再度、魔術メインで波状攻撃をしたが、そちらの思惑通りと言っていいだろう、炎系統の攻撃は腕などで払いのけようとしなかった、氷塊などの物体としての面積がある攻撃を腕などで払い落としていた、これをどう見る?』

「はい、恐らく、確証はまだ得れませんが、敵の毒は可燃性のガスではありません、霧状に見えて実は、ガスによって発生している可能性もありましたが、ガスではありません、そうなると液体の毒を霧状に分泌するタイプで自身の肉体から発生するタイプか、魔道具を補助で使って発生させるタイプなのかの断定はまだできませんが、毒には要注意で、今全力でそちらに向かって霧くらいの目に見えるサイズの毒であれば通さないフィルターを装着した顔面全部を覆うタイプの兜をそちらに届ける為に全力で走っています。他にもまだ会話内容がありますが、今のところ何か質問ありますか、どうぞ」


成程、敵が分泌している毒が【ガスタイプ】であれば火を一番警戒するはず、野外だからガスだまりも出来ないので霧に引火することは少ない、なので、顔面に火を放つことで火を意識させ、どこか体の部位から、ガスを使って毒を霧状にしているのかという部分を検証していたってことになる。


はぁ、分析班ってこんなことを考えながら戦士に指示を出していたんだ、間近で見てきたわけじゃないから知らなかった。


『いえ、貴殿の考察力推察力、凄まじいと感じ取れます、大陸全土に広がる全能なる知能の持ち主という噂に違わぬ采配に感服する次第であります。続きがあるのあれば、聞かせて願いたい所存である。』

うん、私も司令官が姫であると誇れる、姫だからこそ、会敵してからの被害が少なくなっているっていうのが頷けるよ。


「では、続きの考察を述べさせていただきたいと思います、面積の有る攻撃を警戒しているのが、恐らくではありますが、何かしらの魔道具を頭部に身に着けている可能性が高いです、氷塊の規模や、投石のサイズがわかりませんが、通常サイズであれば、人型は頭部に当たってもダメージは殆ど与えれませんなので、最小限の動きで回避するのが相手がの動きとして普通です、特に騎士たちによって敵の動きを封じてるわけでもないのに、避けようとせずに手で確実に払いのけている時点で、頭部に何かある。と判断しても間違いはないでしょう、頭部への魔道具がどんな効果があるのか断定できませんが一つだけ予測している物がありますので、指示する攻撃を行ってもらってもよろしいでしょうか?どうぞ」


『私の威厳や、尊厳などは気にしないでいただきたい、貴女の指示であれば人型との闘いにおいて全大陸の者が異を唱える者はおりません、貴女以上の専門家はこの大陸全土を探してもいません、貴女が最高司令官であると思っていただきたい、助言などと思わず、部下に指示を出すつもりで動いていただきたいと願います。では、指示を願います。』


うわぁ、こんな短期間で完全に指揮権まで捥ぎ取ったよこの人、今までの姫の戦果が本当なのかと、姫と直接応対していないであろう人達からすると疑われているだろうに、ここまで的確に遠い場所からでも敵の現状況を把握している頭脳に感服したんだよ!王都の騎士団を指揮する立場の人を!凄いなぁ。


その流れに姫もにやっとやりやすくなるぞっと悪い顔をしている。


姫様の攻撃手段は騎士道なんて気にしない非人道的な攻撃ばっかりだから、誉を大事にする騎士達にとっては邪道も良い所なのに、大丈夫かな?


「では、まず、魔道具の判定をしたいので、投石機で敵の足元を狙って攻撃して表面積のある物質が飛んでくるのを敵に警戒させてください。どうぞ」

『わかった、投石機に一斉攻撃をする手筈を整えさせる、次の指示を望む』

「表面積の多い攻撃に意識を集中させている間に、火炎術式を使える人達で全力で火の玉ではなく、連続とした炎を足元から敵の顔にまで炎上するように狙いを定めてください。どうぞ」

『あいわかった、聞いていたな!すぐさま取り掛かれ!、結果が出るまで暫しまて、注視する点があれば、教え願いたい』

「炎によって酸欠になっていない可能性が非常に高いので、炎によってあぶられているにも関わらず、大きく回避しないかどうかを判断してください。どうぞ」


酸欠しない可能性が高い?炎に包まれたら酸欠するのが普通じゃないの?言い間違い?


暫く沈黙が続く、現場が長引くと判断したのか、小さな蓄音機を幹部の人に持たせてメイドちゃんは皆の夜食や飲み物を用意し始めた。


大きな蓄音機から、渋いお腹に響くような低音が聞こえてくるので、全員が耳を澄まし聞き漏らさないように身構える。

『先の結果を報告する、そちらの推察通りだ、相手は炎に包まれながらも微動だにせず、石が頭部に飛んでこないので、毒を散布することに集中している、酸欠で倒れる様子も無ければ熱がる様子も無かった。あれはどういった現象なのか説明を願う』


姫様の考察通りの結果ってことだよね?炎を弾く魔道具?それとも、火に対する耐性でもあるの?そんな獣の大原則から外れる様な存在なの?

でもね、遠い場所からの観察だから、炎が近くまで燃えているけれど、実は炎に当たっていない感じなのかもしれないよね?


推察が当たっているので嬉しいはずだろうと姫様の顔を見ると、苦虫を噛み潰したようにすっごくしかめっ面になっていて泣きそうになってる?

ぐっと眉間に皺をよせてから

「わかりました、その敵の持つ魔道具ですが、恐らく、何かしらの気流を発生させ自身の周りに空気の膜を纏うタイプです、それによって自身が発生させている毒から身を守っている可能性が非常に高く、敵自身の体から発生させている毒ではなく魔力を材料にし、毒を発生させている可能性が高い、それだけじゃなく、その場から動かないで毒を散布することに集中しているっということは、一つの目的を達成させるまで動かない固執タイプ…魔力内蔵が非常に大きな魔力タンク型で毒特化タイプの魔道具セットを持つ周辺殲滅タイプです。どうぞ」


姫の説明を聞いた瞬間、幹部含め私も顔が青ざめるのが解る、全身から血の気が引くし、寒気までする。

だって、敵が、その、…ごく稀に、10年に一度、遭遇するかしないかの大物だから。


魔道具を二個以上持っていて、周辺の人類を殲滅するまで動かない絶対に逃げようとしない野生の獣では考えられない、執念を持ったタイプ


こんな立て続けに被害が甚大になる敵が出てきたことなんて、敵との闘いの人類史に一度も無かった出来事だと思う、それだけじゃない、それに出会った場所が最前線のエリアから遠く離れた場所。


え、まって、つまり、敵はこの砦をすり抜ける為に、海を渡って移動して、海からでも陸地に辿りついて、街を攻撃できるってことになるの?…全ての大陸が死の街になるということ?


『…歴史書に見たことがありますが、もしかしなくても、これは、未曽有の大災害に繋がる?…おい!早馬をだせ!王都から応援を募れ!これは、こいつは移動させてはならん!王都にでも向かって見ろ!王都が、我らの王都が滅ぶぞ!!』

この敵が非常に危険性が高く、現状街一つだけで済んでいるのが奇跡的なのだと向こうの司令官も察したみたいで、早急に人員を増やして国家存続の危険性もある敵であると判断できる、すぐさま応援を呼べるくらい的確な判断が出来る優秀な人だとわかる。


「我々の騎士達も各国で工事を手伝っていますので、その者たちも御触れを出して、部隊を招集してください、今そちらの現存部隊の数などを教えていただけますか?どうぞ」



その後は、部隊編成から、相手の動きを封じる方法、長期戦になるなど、ありとあらゆる事態を想定して話を進めていく、幸いにも、敵がいる場所が街中で最前線の索敵エリアじゃないので、穴から出る人類の敵である獣が襲い掛かってこないので、周りを警戒しなくていいので全部隊を人型に集中できる。


姫様の助言や的確な指示の影響で敵がその場から動こうとせずにひたすら、毒を散布することに集中しているみたいだけど、どうしてその場から動かないのかわからない、目の前ってほどではないけれど、目に見える範囲に敵がいるよね?どうして移動しないのだろうか?


そのことを聞きたいけれど、姫様も指示出しが忙しくてそれどころじゃなさそう。きっと、何か考えがあるのだろう。


状況を聞いていると、膠着状態になんとか持って行ったので、何か進展があれば音声を繋いでくださいと言い、ひと先ずは幹部会は落ち着いた雰囲気になる。


全員が姫に聞きたい、この戦い、勝ち目はあるのか?っと王都は私の故郷でもあるし、数多くの兵たちが王都には何かしらの思い入れがある。


姫も凄く悩んでいるのか眉間の皺が取れる気配がない。全て終わったらフェイスマッサージでもしてあげよう。


幹部達も采配の難しさを悟っているので、ここは姫様に集中して欲しいので、各々がすっと席を外していく。

ここで座っていてもどうしようもないので、休憩できるタイミングは休憩する。


事が、最前線から、戦場が近いのであれば、戦う為の支度をしたりとやる事が山ほどあるのだけれど、今回の敵は遠すぎて直ぐにアクションを起こせない、何も出来ない。

出来る事と言えば、支援物資を送るくらいなので、支援物資を積み込んでいる部隊がいるので、それの手伝いでもしてこようと私も席を外して、私でも出来る事がないか探しに行く。


支援物資を大型バスに積み込んでいるのでそれの手伝いを無心になって手伝っていく。何名か現場で手伝えるだろうと、騎士の部がバスに乗り込んでいく。


支援物資を乗せた大型の移動用バスが目的地に向かって走り出すをの見送った後、することが無いけれど、姫様が心配なので、先ほどの野外臨時会議室に向かっていく、本当の会議室に移動すればいいんだけど、姫様の性格を考えるとその場で岩の様に長考してるはずなので様子を見に行って出来ることが無いとしても傍にいてあげたい。


会議場に戻ると、色んな紙、資料かな?が散乱している、あ、メモ書きかな?姫の字で色々と殴り書きが多い。


メイドちゃんも小さな蓄音機に魔力を流すのを担当しているみたいで動けないでいる、近くで机に突っ伏して寝てる人たちは完全に魔力切れみたいだね、魔石を繋げて会話すればいいのかもしれないけど、魔石を使っちゃうと常時魔力を流しちゃうから、もったいないよね、必要な時だけ魔力を流すのだったら人の手が一番だもの。


散らばっている資料をかき集めて整理整頓していき、メイドちゃんや姫様に紅茶を入れてあげる。

変わろうとかとメイドちゃんに文字を書いて見せるが首を振る、まだ余力があるみたいなので、大丈夫みたい。



会話が落ち着いたのか姫様がふへぇっと枝垂れ込むようにメイドちゃんに寄り掛かる、メイドちゃんもそれを受け止めて小さな蓄音機をテーブルに置いた。


そりゃ、気疲れもするよね、普段から傍にいるメンバーじゃなくて王国の騎士に指示を出すのは勝手が違い過ぎるよね、大丈夫かな?滋養強壮にいい食べ物でも作ってこようかな?

食事を作る為に席を離れようとしたときに、大きな方の蓄音機の一部から光が点滅してるような部分が見えた


大きな蓄音機の一部分が点滅してる?なんだろこれ?


「姫ーなんかチカチカっと光っては消えてしてる部分があるけどこれってなに?」蓄音機の点滅してる個所を指さしながら聞いてみると


「あー魔石の中にある待機魔力が切れたサインーごめんだけど、光ってるとこのすぐ下にパカっと開くようになってるから開いて、テーブルの上に置いてある、皆に魔力を込めてもらった魔石があるから取り替えてー」

ふむふむ、チカチカ光ってる蓋を開けて、あ、魔石がある、えっとこれを外すと、チカチカ光ってるのが光が消えちゃった、んで、テーブルの上に置いてあるやつをセットする、お!チカチカ光ってたやつが常に光るようになった。凄いなどういった仕組みなんだろう?


簡単な作業を終えると

「ふぅ、ちょっと落ち着いたー…ねぇ、団長」

ゆっくりと起き上がるが顔が真っ青だ、魔力切れも起こしてるのかな?


「お願いがあるんだけどいいかな?」

困った顔をしてお願いされたら助けるとも!どんどん頼ってよ!


「出来る事なら何でもするよ!現地に飛んで戦えっていうのなら喜んで!」

ぐっと力こぶを作って戦えるアピールをするけど


「戦わなくていいの、貴女は戦う職業じゃないでしょー!・・その、魔力に余裕があればいいんだけど、ちょっと私に注いでもらってもいいかな?」


【魔力譲渡術】を要求されるとは


…人に魔力を受け渡すのはちょっと、難易度が高い、注ぎ過ぎても破裂するし(人が比喩ではなく破裂する、何処かで詰まると詰まった個所がパンっと破裂する)

弱すぎると霧散する、リスクが高いので基本的にしない、魔力回復を向上させる薬物があるのでそれを飲むのが一般的だけど、姫の魔力総量は多くない、なので、回復薬を飲んでも回復するのに時間が掛かってしまう。


一応、魔力切れで倒れる人もいるので、医療班では魔力譲渡術の履修は必須科目で、医療班のTOP集団であれば、全員が出来る。


うーやるしかないかぁ…


「どこでやる?」って聞くとそそくさと上着を脱いでいく姫、ちょ、まって、ここで?ここでやるの!?ってか、手じゃダメなの!?


「ごめんね、手と手を繋いで、注いでもらうのがいいのかもしれないけど、少しでも霧散させたくないから、お願いしてもいい?」

上目づかいで困った顔しないでよー、まぁ、今テーブルにいる男たちも寝てるから誰も見てないからいいけど、柔肌を猥らに見せちゃだめだよ?


私も隊服を脱いで姫様も自分も上半身の肌を露出し抱きしめあう、ちゃんとショーツはしてるからね?


意識を集中させて魔力を全身から放出させると同時に、魔力に指向性を持たせて姫様の体へと誘導させていく、皮膚と皮膚を繋げて送るのが基本で、面積が広ければ広いほど受け取る側も効率的だし、贈る側もロスが少ない。


手のひらだと全身から魔力が溢れるので、手のひらだけしか相手に魔力を送れない。

でも、こうやって上半身を密着させることで、接触する皮膚の面積が増えるので、魔力が空中で霧散するのを減らすことが出来るので、非常に有効的なんだけど、


難点がある、魔力コントロールが非常に難解になる。


手のひらだけなら、全身から魔力を放出し、手のひらに集中させればいいだけなので、コントロールは非常に簡単だけど、全身ってなると凄い難しい、意識を全力で集中させないと姫様の体を何処かしら破損させちゃうんだけど


…いくら注いでも魔力が滞る感じがしない?魔力を放出する回路の流れが綺麗なのかな?すごい、常人では不可能なほど流れが綺麗…するすると入っていくのがわかる、魔力流しは過去に何度も医療班で訓練しているので、馴れているけれど、こんな感覚は初めて、上半身を密着させているから?姫様が特別な体だから?すごい、どんどん魔力が流れていくのがわかる


解るけど、そこが見えない!?もってかれる?全ての魔力を飲み込まれる!?


…まって、私の魔力全部流しても、耐えれるの?私の魔力が底につきそうなんだけど?姫様って魔力総量低かったよね?私って人よりも魔力総量多いよ?…どういうことなの?


加減を間違えた、つい、魔力の流れる感覚が気持ち良すぎて、想定以上に魔力を吸い込んでいくのでこちらの底を計算せずに放出しすぎた。


「ご、ごめ、もう限界」

魔力切れで意識が飛びそうなほど受け渡すと

「…はぁ、ありがとう、気持ちが良いね、魔力が満たされる感覚って」

恍惚とした表情をした姫様が妖艶なまなざしをこちらに向けている…あれ?姫様の目の色って青かったよね?夜だからわかりづらいのかな?


黒く見える…



そのまますぅっと意識が闇の中に吸い込まれていく、魔力切れだ…



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