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最前線  作者: TF
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おまけ 女将のちょっとした思い出話

死地に赴くんじゃないかってくらいの神妙な顔つきの弟弟子が席を外して、No2と二人っきりになる。


このお店にさぁ、初めてじゃないかねぇ?No2が食事に来たり、お酒を飲みに来たりするのってさ


「昔はねーよくみんなでご飯食べたねぇ、師匠にあたしにNo2にベテランの4人でな~、懐かしいったらありゃしないねぇ…」

つい、懐かしくなってポツリと呟いちまった、なるべくこの人の前で師匠の話はしないでおこうってのがあたしらの暗黙のルールってやつでさぁ。

あたしも年かねぇ、うっかり口を滑らせちまったよ、お酒を飲み過ぎたせいにしとこうかねぇ・・・


「・・・そうね、懐かしいわね」

カランっとお酒の入ったグラスを傾けた際に氷がガラスに当たって音がなる。


寂しそうな音がなるねぇ、未だに引きずってるってのがわかるさぁねぇ、師匠が亡くなった後もいい加減、吹っ切れて次に進みなよって何度も声をかけたんだけどねぇ…だめだったねぇ、あたしも思うさ、あんなにすんげぇ漢なんて、ぜったいにでてこねぇってあたしもわかってるさ。


「・・・駄目ね、また、心配かけちゃってるね、わかってるの私も、でもね、やっと、やっとよ?あの人の死を受け入れれたと思うの、じゃなかったらこの想い出がいっぱい詰まってるお店にこれないわよ」

カランっとまた、悲しそうに鳴らすじゃないか、これは、なにか、えっと、あんだ?姫様ならどーする?えっと、えっと、んー。。。。

ガシガシと頭をかき、タシタシっとつま先で地面を蹴ってしまう。


あたしはどーもこういった駆け引きってのが苦手でさぁ…はぁ、今日のこういった日にどうして姫様や団長がいないのかねぇ…間が持ちやしないねぇ…ベテランみてぇなあんなのでも、場を持たすには必要だってぇのかい?


んなこたぁねぇ!あたしだって、いや、あたしだからこそ!進めれるやりかたってのがあんだろぉ!?


「あ」「あのさ」

かぶった…きまずいねぇ…


「ふふ、女将はほんっと優しいよね、そんなに気を使わなくても大丈夫よ、私ね、本当にもう吹っ切れたから大丈夫だって!お酒を飲むとちょっとしんみりするタイプなだけだから!」

くすくすと笑っている、そうだよ、あんたは笑ってな?笑ってれば別嬪さんなんだから、男が寄ってくるよ!


「今日ね、ここに来たのは単純に女将の事さ、色々と話をしたいな~って気分になってふらっと寄っただけなんだから、ついでに酔っちゃいたいってね!なんつって!」

このダジャレ癖が、まさか、姫様に影響を及ぼしちまうなんて誰が想像したかねぇ・・・ほんっとしゃべるとなんでこう、残念な人なんだろうねぇ・・・


「あたいのことなんて今更知って、どうするんだい?」

あたしゃー女で、子持ちだよ?知ってどうするってのか、ほんっとに謎だねぇ?


「一人称が昔に戻ってるよ、旦那が出来たからお淑やかになる為に、あたいから、あたしに変えたんじゃないの~?動揺しちゃってーどーようするんってか?」

師匠も、よく言ってたねぇ、喋らなければ深窓のご令嬢とまごうことなき麗しのご令嬢だけど、話し始めると、おっさんになるのが不思議だ。って目を丸くしていってたねぇ…


あたしの事なんて話したって、ねぇ?興味なんか、ないだろうに、お酒の席だからこそ、聞けるたわいない会話ってやつかねぇ、それなら、やぶさかじゃないねぇ


ん~っと何を話そうか悩んでいると、キィっとお店のドアが開く、遅い時間に誰だろうね?音に反応してドアに視線を移すと、めずらしぃ…ぁ、


入ってきたのはあたしのとこの旦那だ、どうして?珍しいじゃないの?っは!?あたいの手には酒が!?


その、これは手に持っているお酒を何処に隠そうか慌てていると

「知ってるから大丈夫、娘ちゃんを呼んでる時点で察してるよ。偶にくらいなら飲んでも怒らないよ」

お隣、失礼するねっと言いながら先ほどまでベテランが座っていた席にすっと旦那が座る


「お久しぶりです団長…ぁ、違いましたね、失礼しました。今は、えっと何てお呼びすれば宜しいでしょうか?」

旦那も元はこの街で研究していた学者さんだからねぇ、色んな人と面識があるのさ


旦那は、獣達の研究をする塔の学者さんで、No2は医療班、後方支援チームってわけさ!意外とね関りが無さそうな、この二つのチームが協力して新しい技法等が生まれるようになっていったって聞いたことがあるさぁね。


久方ぶりに会う二人、積もる話もあるさ!え?あんだって?旦那が他の女性と仲良さそうにしているのに嫉妬しないのかって?っは!旦那を信頼しているさ。


旦那も、私も、ごく普通の出自だからね、不貞はちょん切りの刑さ!何を切るかって?…農家の連中は手慣れてるやつにきまってるじゃないか。


「うむ、くるしゅうないぞ、これからはNo2とお呼びなさい」

No2が偉そうに踏ん反り返っているけれど、そういうところが本当に残念っで、これをどこでもやっちまうのがモテない原因って気が付いててもやめられないどうしようもない人、それこそが、この人の持ち味なんだけどねぇ、これら全てを愛せる強者はいないものかねぇ、あと年齢も気にしない人だぁね。


・・・・自分で言っちゃなんだが、この街にいる戦士達からモテてない時点でもう、どうしようもない気がするねぇ、かといって猫被っても、どっかでぼろが出て、結婚まではいけないだろうしねぇ…独身を貫いてもらうしかもう、道は無いのかもねぇ…結婚だけが全てじゃないのはわかっているさ、でもねぇ?この人の才能が引き継がれないのが人類にとってかなりの損害じゃないのかと思っちまってるんだよね。


誰か好い人がいて、恋仲になってほしいもんだよほんっと。


話を聞いてみると、どうやら、旦那の研究内容にNo2が結構、手を貸してくれていたみたいで、面識があるっというか研究仲間みたいさぁね。

旦那はどんな研究をしていたのかって?たしかねぇ…なんだっけ?詳しい事は忘れちまったけど、動物たちを安全にふやす、研究?だったかねぇ?


動物たちは、ぶきようでね、そういった行為でお互いを傷つけてしまって、雌の方がそれが嫌で二度と子を宿さない…だっけ?それを安全に、だっけ?

覚えてないねぇ、そんな感じのなにかさ!難しいのはわかりゃしないさぁね!


三人で呑んでいたら、No2があたしたちのなりそめとか色々と聞いてくるけど、今日はそういう気分なのかねぇ?別に隠し立てなんてする程のもんじゃないし何も、ない普通の話しかないけどねぇ?…お酒もはいってると記憶がおぼろげになっちまって、思い出せやしないってのに。


なんでそんなに気にするんだい?思い返してみれば、この人とは恋バナってのはした記憶がないのは、、あーおもいだせないってことは、ないってことだぁねぇ?


「だってさぁ、あの時って私のけものだったじゃない、気になるのよ」

のけもの?そんな酷い事したかねぇ?・・・ん?


「あのときって、あんた何処かに旅行に出ていなかったかい?」

古い記憶を呼び起こすと、確かに、いなかった、あのどんちゃん騒ぎにいなかったねぇ


「そうだよー、どうしても会いたい人がいてさーあいにいってたのさ」

そうかい、そういや、あの時期って、あの時期だよね?師匠がなくなった後でね、師匠と関わりのある人たちが立ち直ってきた頃合いだったかねぇ?


ぁー思い出した恥ずかしいたらありゃしないよぉ、旦那とのなりそめを完全に思い出しちまったじゃないか!

「おやおやんやぁ?あのいくらでもお酒を飲んでも頬を赤らめないあの、女将が頬を染めて何を思い出したのさー」

ニヤニヤとしている、あー!そういうことさぁねぇ!こいつ!あたしが恥ずかしがるのをみたいだけか!!そーいう悪戯心が多い人だねー


「そうだね、あの時の君はとても塞ぎ込んでいて弱弱しくて、あの戦場の花とは思えない程、しおらしかったよね」

ぁーこれ!旦那さんと言えどその話はやめておくれよー恥ずかしいったら、ありゃしないよー


そこからはもう、あたしの口からじゃ恥ずかしていえやしないってことで、鮮明に覚えている旦那が思い出話をしてくれてね

相手が聞いても無い話までするじゃないかぁ、やめておくれよぉ、姫にも師匠にも話してないのにさぁ…あたいの生い立ちとか、旦那とのデートの話なんてさ


旦那が話すと、恥ずかしくて言えないことも言うから、結局あたいの口から言う事になったさ。


あたいはさ、ここよりかなり離れた南の方の出身でね、代々、畑や、畜産を営んできていてね、土地だってご先祖様が開拓した土地でね、自治権なんかもあたい達、一族がもっててね、ある意味、土地持ちの貴族みたいなもんさ、でもね、田舎過ぎてここが誰の土地だーっとか納税とかーってのが、無いくらいの田舎でねー


皆が手を取り合って助け合って生きてきたんだよ。


あたいはどうやら、変わり種らしくてね、あたいみたいに大きく育ったのはご先祖様でも誰もいなくてね、一族全員から、驚かれていたよ。

あたいもこんな体格してるだろ?だから、ひとよりも何倍もご飯を食べるからさ、みんなの食事がなくなっちまうなぁってよく冗談をいってたもんさ


あたいの主な仕事はこの体格を生かした力仕事全部さ。村中の力仕事を日によって変えてあたい一人で殆どこなしてたからね!


大きな大きな木を斧で切り倒して、それの枝を落として、本来は牛とかに運ばせるほどの大木を一人で運んだりしていたからね。

残った、切り株もスコップ一本でぱぱっと根ごと引きちぎる様に引っこ抜いちまうくらいの力があったからね、一族全員から頼られたもんさ。


あー自分でしゃっべてて思い出したねー、スコップを力任せに使っちまって何本もへし折ってどやされたもんさー。


ある日にね、いつも通り、大木を切っていたら、猪みたいなのが突進してきてね、さっと首の骨をへし折って、村に持って帰ったんだよ。


今日は猪肉でも焼いて食うか!って気分上々で帰ったらね、村の皆が驚いていたんだよ、こんな猪は見たことが無い、もしかしたら、噂の食べられない獣じゃないのかって言うんだよ。

おかしな話をするでねぇって一喝してねぇ、食べられない獣が居るなんて、当時は思いもしなかったさ


捌いてみると、今でも思い出すよ、血がね


赤くないんだよ、透明に近いんだけどね、ちょっと濁ってるんだよ。


あんだぁこれ?って思いながら気持ちが悪いねぇっとおもいながらとりあえず、捌いてみるんだけど、肉もピンク色じゃなくて白に近い変な色しててね気味が悪いったらありゃしなかったよ。


肉の色とか、それの解体を見ていた村の全員がやめろ!病気になるぞ!っていってね、あたいも引っ込みがつかなくなってとりあえず、焼いて食ったらそれはもう不味くて不味くて、ひと切れ食べただけで二度と食わないって誓ったもんさ。


次の日は、もうお腹が痛くて痛くて、今まで食あたり何てしたことがなくってさ、そんなあたいが寝込んじまったのが、一族全員があの肉から変な病原菌があって、それに感染したんじゃないのかって恐怖しちまってね、慌てて隣町の医者を呼んできてくれたんだよ。


っで、何を食べたのかって説明したら、凄く驚いてたよ、アレを素手で殺せるなんて人間技じゃねぇって驚いてたよ


痛み止めとかいろいろと手厚くしてくれてね、次の日にはすっかり良くなってね、何時もの様に、仕事するかと斧を担いで歩いていたら、昨日診てくれたお医者さんと偉そうな人がね、あたいに話があるってんで、話を聞いたら、あの獣と戦っている街があって、そこは常に人手が足りなくて困ってるって言うんだけどさ


そんなのあたいに言われてもどうしろってんだいって思ってねー


毎年、誰かしらをそこに人手を送るのが同盟としての条件だって言われてもね、今まであたいたち一族がアンタらの世話になんてなったことがないって突っぱねたんだよ。


そしたら、一族の長っていうかあたいの親父殿がね、これは良い機会だから、外を経験してこいって言うんだよ。

親父殿がいけっていうなら、まぁ、行くだけでも行ってみるけど、何も得る物がなかったら帰るからな!ってことで連れて行ってもらったのさ


どうせ、あたいよりも腕っぷしが強い奴なんてこの世界にはいねぇって


当時のあたいはうぬぼれていたのさ。


っでだ、長旅がほんっとうにつまらなくて、退屈で、体を動かせない鬱憤がすっごい溜まってイライラしててねぇ暴れたくて仕方がねぇ!ってくらい体がうずいていたんだよ。

っでだ、街に付いた瞬間に、あたいの何かが爆発しちゃって、街についたら、一番つえやつを出せ!って叫んでたら、あたい程ではないけれど、かなり体格のいい漢が連れてこられてね。

あたいとしては、こんな街にいてないで村の為に木を切ってる方が性に合ってると思ってたんだよ。


だから、この街で一番強い奴をぶちのめして帰ろうと思ってたんだけどねえぇ


こっぴどくやられたよ。


あ、もちろん素手だよ、あたいの怪力が何一つ通じなくて何回も何回も地面とキスしちまったのさ。驚いたさ、世界にはこんな凄いのがいるのかって

ガッツリとやられたおかげで、冷静に慣れてね、長旅で苛立っていたってのもあったんだけどさ、いいストレス発散にもなっていたわけでね


それからさ、あたいの何かが変わった気がしてね、次の日に、あたいを倒した漢に弟子入りしたのさ、得る物がある!って思ってね、あの戦闘技術があれば、村に戻った後にどんなことがあっても一族を守れるじゃねぇかっておもってさ。


まぁ、それがあたいの師匠との出会いってわけ…ん?あれ、No2もその場にいたよね?ぁ、そうだよね!あのお淑やかな女性って、いやー意外と覚えてるもんさぁねぇ!


まぁ、それから色々とあってね、その、師匠がさ、ある戦いで空の向こうに行っちまってさ。


あたしがさ、師匠の事がきっかけでどうやって笑ったらいいのか、どうやって、戦えばいいのか、わからなくなっちまったんだよ、師匠もいなくなっちまったし、村に帰ろうかと思ってたりもしたんだけど、こんな状態で村に帰っても、あたしはたぶん、ずっと引きずってしまうし、何よりも、さ、その、アレでも一応、弟弟子なんだ、その弟弟子を誰が戦場で支えてやるんだい?みたいなことも気が掛かりでね。


あの頃の、アイツは嬉しい事に悲しい事と色んな事がいっぱい起きちまってたから、不安定だったからねぇ…あたいが居なくなったせいで死なれたら目覚めもわりぃし、戦姫に申し訳がないからねぇ


それだけじゃなくてさ、弟弟子と、どうやって接してやればいいのかわかんなくなっちまってね、そんなときにずっと、相談に乗ってくれたり励ましてくれたりしていたのが旦那ってことさ。

何度も何度も夜を共にしてたらさ、男と女が夜に長い事一緒にいて、酒も入っていればね、まぁ、そうなっちまって子供がね、あたしに宿ってくれたんだよ。


嬉しかったねぇ、あたしが母親になるなんて思ってもみなかったから、今でもあの感動は忘れちゃいないさ。

それがちょうど、アンタが旅行に行ってるときだったのさ、っていうか、アンタこそ、誰に会っていたんだい?ぇ?地元の友人に慰めてもらっていた?あーそうだね、それが一番いいね。傷心旅行ってわけだったんだね、野暮なこと聞いて悪かったよ。




後はもう、旦那の何処が好きになったのかーっとか、旦那は女将の何処が好きなのかーっとか色々と恋バナを長い事話してたねー

気が付いたらあたしもウトウトとしちゃってね、何を話したのか覚えていないさ


あたしがウトウトとしてた時になんとなく聞こえてきた会話なんだけどねぇ、会話の内容も飛び飛びでよくわからなかったねぇ


姫との研究がーっとか、貴方のお陰でーっとか、順調だーっとか、学者先生の話はよくわからないねぇ…


そして、気が付いたら旦那と裸でベッドで寝てたってわけさ!今日もいい天気だ!子供は何人でも欲しいからね!次は男の子がほしいねぇ!!



さぁ、今日も元気に働きますか!…まずは、旦那を起こさないといけないねぇ、こんな素敵でかっこよくて、優しくて、あたいのことを真剣に愛してくれる人に出会えるなんてさ、村を出た時は思いもしなかっただ、親父殿が後押ししてくれてよがっだと、感謝の気持ちしかわいでごねぇ。


親父殿、あたいは、幸せだ。孫の顔を見せに今度、村にかえっがらな!たのしみにまってでくんろ。




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