4.再会
ジャニィは街道の十字路で馬車を止めていた。
東の空に幾筋かの煙が上っているのが見えた。
雲の切れ間へ吸い込まれる白い煙が、シュラバリーの屋敷の方角であることが気になっていた。
「うーん……、祭事長が王子の馬車を使っていたってことは……、王子は徒歩ってことになるのか? であれば、シュラバリーの屋敷を見てからでも追い付けるか……」
ジャニィは、鞭を入れると、街道をそのまま東へ向けて進んでいった。
しばらくすると、街道は緩やかな坂道になり、辺りが荒涼としてきた。
木々は背を低くし、道の左右には大小の石ころが転がっていた。
ヴォーアムの辺境と呼ばれるこの地方に来たのは初めてだった。
ジャニィは辺りを見回しながら、シュラバリーの屋敷に続く道を見定めていた。
狼煙のように筋を上げる白い煙は、今や北側に見えており、なんだか焦げ臭いような気もしてきた。
「この道であってるのか?」
ジャニィは一人呟き、馬車を左折させた。
そこからさらに小一時間は掛かっただろうか?
ジャニィは煙の元に辿り着いた。
「これがシュラバリーの屋敷なのか?」
ジャニィは門から屋敷へ続く道を歩いていた。
空からは黒い煤が降り続いており、前方には焼け崩れた屋敷と思われるものがあった。
ところどころから、まだ白い煙が立ち上り、燻り続けているようだった。
ジャニィが黒焦げの焼け跡に足を踏み入れると、足の裏に微かな暖かさを感じた。
「しかし、酷いな……、なんで焼け落ちてるんだよ?」
ジャニィは疑問に思い辺りを見回した。
すると、左手の方に火災を逃れたのか、小さな小屋が建っていることに気が付いた。
「一応、あれも見てみるか」
ジャニィは焼け跡から小道に戻り、小屋へ向って歩きだした。
遠目からでは良く分らなかったが、近づいてみると、小屋の脇に小さな墓らしきものが目に入った。あまりにも粗末な感じなので、ジャニィには犬か何かの墓のように思えた。
ジャニィが小屋の前までやって来ると、小屋の中に人の気配を感じた。
「誰かいるのか? まさかシンクフォイル? 大丈夫だ、落ち着け……」
ジャニィは小声で呟き、扉のノブに手を掛けた。
そして、一呼吸置くと、勢いよく扉を開けて、小屋の中を確認した。
すると、右奥にあるベッドの上で中腰になり、後頭部を押さえている王子の姿があった。
「おっ! ポンコツ王子か? こんなところで何してる?」
ジャニィの言葉に驚いたのか、王子は、こちらに振り向き目を丸くしていた。




