4.辻馬車
馬車に揺られることで、だいぶ気持ちが落ち着いてきた。
ワンワンと泣きながら、ジャニィ、ジャニィと喚いていたら、どうやら、迷子だと思われたらしく、女性は、優しく、色々と尋ねてくれた。
アイソレシアは、それに対して、ポツポツと単語で返し、なんとか、市庁舎区へ向かったジャニィの後を追いたい旨が伝わった。
すると、女性は辻馬車を止め、それにアイソレシアを乗せてくれた。
別れ際、「ジャニィ坊ちゃまに宜しく伝えてね」と言われた。
馬車に揺られること数分、ムン川を越えた辺りで、街の雰囲気が変わってきたことに気が付いた。
それに伴い、辺りに人が増えてきているような気がした。
「お嬢ちゃん、この辺りでいいかね? ちょっと今日は、オークオコイの兵隊が出張っていてね。ここから先は、ちょっと面倒なんだよ」
辻馬車の御者が、アイソレシアの答えを聞くまでもなく、馬車を路肩に止めた。
アイソレシアは、先ほどの女性に渡された、オボステムクロンの茶色いコインを、二枚ほど御者に手渡した。
お金までくれるなんて、なんて良い人なのかしら。ちゃんと名前を聞いておけばよかったわ、とアイソレシアは、少し後悔した。
通りに沿って、しばらく東へ進むと、人だかりが一段と増えてきた。
それに伴い、辺りの建物には廃墟が増えてきていた。と言うより、もはやがれきと言った方が適切なほどだ。
アイソレシアが、そんな街の残骸たちを見回していると、遠くに知った声が聞こえたような気がした。
「ジャニィだ!」
アイソレシアは、人だかりを縫って、声の聞こえる方へ走り出した。
二度ほど、瓦礫に足を取られて転んでしまったが、声の元へはすぐに着いた。
すると、そこには、ジャニィに馬乗りになり、何かを叫んでいる、青い鎧のユガレス兵の姿があった。
ジャニィがやられている!
アイソレシアは、ジャニィに会えた喜びよりも先に、早く助けないと! と言う思いに駆られていた。




