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Journal Journey ~魔王罪として処刑する~  作者: 柚須 佳
第五章 白虹の盾(真歴一四九九年五月)
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3.詰所

 警備兵の詰所の扉を開けると正面には階段があった。左には下り階段があり、地下倉庫へと続いている。右の登り階段は二階と三階部分の仮眠室へのものだ。

 その階段の手前の廊下に左右一つずつ扉があり、右側は兵長の執務室、左側は応接室になっていた。ユガレス兵を連れた兵長と王子はその左の応接室に入っていった。


 応接室にはカーペットが敷かれており、足元はふかふかだ。

 天井からは豪華なシャンデリアがぶら下がり、室内の真ん中には、これも豪華なテーブルが配置されている。そのテーブルの右手には暖炉があるが、今の季節は使用されていないようだ。


 この部屋がこれほど豪華なのは、かつてここが市長ブリウルの邸宅だった名残だろう。


 四年前の市街戦で、ボアム川の南半分をヴォーアム軍が占領した際、各国の占領地を結ぶ三叉橋の袂にあるこのブリウル邸を警備兵の詰所に利用したのだ。


 大きな街ではあるが、市内に掛かる橋の数は極端に少ない。

 この三叉橋以外には、下流の港付近に掛かる大橋しかない。

 日頃市民は橋を利用することは少なく、渡し舟を利用することのほうが多い。

 これは、この川が幹線道路の役割を果たしており、乗り降りが自由な小船を利用する方が効率的だからだ。


「王子」兵長がユガレス兵をテーブルに着かせながら呼びかけてきた。

「王子、このユガレス兵から何をお聞きになりたいので?」

 王子はテーブルまで歩くと、ユガレス兵の正面に座った。

「さっき、フッカ王の暗殺を企てたものと言っていたようだが」

「その前に、これは尋問か?」

 ユガレス兵が兵長と王子の顔を交互に見て言った。

「いや」王子は笑みを浮かべて続けた。

「尋問ではない。私が個人的に聞いているだけだ」

 そう言って王子は右手を出し握手を求めた。

「そうかい、私はムリダだ。訳あってユガレスの番兵をやっている」

 そう名乗った髭のユガレス兵は王子の手を握り返した。


「にしても、あんた王子なんだって?」ユガレス兵が小さな声で軽口を挟む。

「王子と分かって、その口の利き方か!」と、横から兵長のどなり声が響く。

「かまわない! お前は黙っていろ」すかさず王子が左手で兵長を制した。

「あの兵長、どこまで地獄耳なんだ?」とムリダはちらっとだけ目を動かしながら兵長を見た。

 王子もつられて兵長を見て、少しだけ笑った。

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