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大好きな妻と歩む道  作者: ゆき


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76日目 同じ境遇の親戚


9月15日(火)

4時44分

起きて時計を見ると久しぶりにこの数字と出会う。

訓読みでは何て事は無い数字だが音読みにすると不気味な意味になる。

昔は嫌っていたが今は「連れて行けるものなら連れて行ってくれ!」と逆に願う。


午前9時半頃

大手銀行口座を新たに開設する為に隣町の駅前へ向かう。

これは妻資金を幅広く運用する為に必要な事。


銀行に着き窓口の人と話す。

最初にやらされたのはスマホにアプリを入れ登録する所から始まる。

今は何処も同じペーパーレスでアプリ操作が当たり前だが、何と言うか私は古い人間だからか紙の方が安心するんだよな

面倒だし笠張るしで良い事は無い様に思えるが紙と言う安心感がある。

でもまぁ既にそう言う時代では無い様だ。


昔、家庭によっては資産を管理運営するのは奥方の仕事みたいな家族が多く存在し私の所もそんな家庭の1つだった。

今は自身の手元(スマホ)に資産があるのが当たり前になり個人個人が資産運営をしている人が多いのかな?

結局、昔ながらの一括管理で今の私は苦労しているのでコレも時代に沿った物なのかもしれない。

先日、友人に電話した時も以前は奥さんに任せていた資産管理を今は自分の手元でやっている話しをしていた。

旦那と奥さんの資産は別物みたいな言い方もしており我々世代もここまで来たのかと感じた。


銀行の囲いエリアに通され話を聞く。

聞きたいのは妻の資産の相談だ。

先ずは投資に関して聞かされる。

地方銀行と違い何とも事務的過ぎる対応だ。

結局はアプリ頼みで全てを自分で判断しアプリ内で処理する様求められた。

この一連の流れを銀行で行うと手数料を取られ思った以上の物は得られないとの事。

まぁ投資だけに自己責任は当たり前だが、相談にならない相談を受ける。

取り敢えずその他の運用方法に関しては実際に資産をここの口座に移してから詳しく聞く事になり銀行を後にする。


地元の駅前に戻り先日用意出来なかった目薬を薬局でもらった。

駅前の駐車場は無料では無い。

但しスーパーで買い物をすれば1000円で60分サービスされるので無理にでも買う。


午後2時頃

結構時間が掛かってやっと家に戻る。

妻に帰った事を報告し購入した微々たる食材を冷蔵庫に入れる。

ソファーに深く腰を降ろし疲れを癒す。

静まり返った室内に不安と孤独が漂う。

静けさ必要だが、今の私にはまだ辛い様だ。

目に一杯涙を浮かべ鼻を啜る。


ムッチ寂しい…

何を買っても何処に行っても人と話しても虚しいし不安で楽しくないよ

生きるのが辛い

ムッチのいない世界は苦しい

会いたいよ…ムッチぃ…会いたいよ


ぽろぽろ涙が溢れ胸が締め付けられる。

先週、今週と雨ばかり降るせいかこのところ心が沈みがちになっている。


午後8時頃

親戚に電話をする。

一ヶ月前に電話をもらい色々話を聞いてもらい又私も彼女の話しを聞く事で随分と心が救われたのでその時のお礼と納骨式の報告も兼ねて電話をした。


彼女は私の母方で一番下の妹の娘にあたる人だ。

7、8歳離れた歳下でとても喜良の良い優しい人だ。

彼女も実はコロナ禍の最中に最愛の人を亡くした悲しい過去を持つ。

一ヶ月前電話口で二人してわんわん泣いた過去がある。

今日は彼女に泣かない自分を聞かせるべく元気報告をしようと思う。


電話をすると彼女は張りのある優しい口調で挨拶をしてくれた。

久しぶりの会話に花も咲き話しが妻の会話に移ると泣かないと誓ったのにブワッと涙が溢れてきた。

ダメだな私は…

長い時間私が妻の愛を語り、彼女が最愛の旦那さんの愛を語った。

その間二人とも泣いたり笑ったりと忙しい時間を過ごす。

話しの後半、彼女が未だに夢に現れない事を悩んでいるのが分かった。

それは何年経っても彼女の心に重くのし掛かっている様だった。

そこで私はお盆の奇跡を話した。

当時の私も夢に妻が現れず物凄く悩んでいた。

お盆の奇跡

孤独と寂しさに打ち拉がれている時、涙に暮れる自身の手に陽の光が差しベランダに行くと暑い最中なのに爽やかな風が頬を撫でた話しを彼女に教えた。

あのぶ厚く黒い雲の間をこじ開け隙間から後光が差す様に私を照らしたあの日の事を話した。

彼女は驚いている様だった。

彼女は「でもそんな奇跡の様な出来事は無かった」と主張する。

私「いや、きっとあったはずだよ!」

私「アッコちゃん(字名)はあまりに悲しくてその彼が残した痕跡に気がついていないだけなんだ」

彼女「分からなかった…そんなの気が付かないよ」

私「アッコちゃんには彼の写真があるでしょ、私にはここ10年の写真は無い!だから妻が亡くなってから今もだけど妻の痕跡を探すのに必死だった」

私「どんな些細な事でも妻の言葉として見つけたかったんだ」

私「それこそ毎日必死に探したんだよ」

彼女「そんなに探したんだ…」

私「だからアッコちゃん、彼氏と天国で再会した時はきっと言われるよ何であの時サインを送ったのに見てないんだよってね」

彼女「でも天国で彼に会えないかもしれない」

私「そんな事は無いよ!私は妻に絶対会うつもりだし会ったら抱きまくってキスしまくるし触りまくるつもりだよ」

私「アッコちゃんが彼を思う気持ちを忘れなければ絶対あの世で会えるはずさ」

私「私はそう信じている」

電話口で彼女の笑みが感じられた。


夢に現れない旦那さんにアッコちゃんが嫌われているのかもと思う気持ちは私にも分かる気がする。

実際、亡くなった人の気持ちなど透視出来るはずもなく不安になるのが当たり前だ。

でもこちらが会えると信じてあげないと亡くなった旦那さんだって浮かばれない気がする。

だってあの世とこの世は所詮一方通行でしかなく現世を確認出来ても声は届かない。

あの世でどんなに叫んでもこちらには聞こえないし、同じ様にこちらの声が届いているのかも分からない。

一様に彼女も納得している様だった。

1時間以上も話し込んでしまった。

最後の挨拶を済ませ気持ち良く話しを終わらせた。


毎日気落ちしている自分が人に説いてるとは何とも恥ずかしい話しだ。

でもあの世で妻に会えないを自分自身が肯定してしまったら私の生きている意味すらも無くなってしまう。


だから言う…あの世でむつみと絶対に会う!

それが今の私の夢なんだと

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