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大好きな妻と歩む道  作者: ゆき


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27/40

107日目 妻を忘れる悲しみ


10月16日(金)

午前2時半頃

目覚めて早々、またこれか…と気落ちする。

この3ヶ月、書類整理、資産運用、アプリの設定、その他諸々に追われていたせいか、見る夢は決まってそれら手続きで四苦八苦しているものばかりだ。

なんで眠った先でも書類整理をしなくてはいけないのか理解に苦しむ。

夢だけに選べず正直ウンザリしている。

寝る前に妻の夢を見たいと妻の顔、容姿、愛を注いでくれた場所などを頭に思い描きながら眠りに着くが一向に現れる気配はない。

いや、現れたとしても記憶に無いのかもしれない。


トイレに行きまた寝に入る。


午前5時半頃

両足の攣りで起こされる。

夢を見ていたが記憶は消されてしまった。

また痛みが治まるまでソファーでうだうだする。


今日の夢からここ最近の流れを考える。

生活のリズムが妻から日常の問題に塗り替わろうとしている感じがある。

具体的に言うと生前の妻が着手していた内容や今後起きうる作業を真剣にこなす様になった。

前にも話した家の修繕から季節の変わり目で交換する機材や準備などがある。

他、日常をまともな生活のリズムに変える為、凡ゆる配慮も欠かさずやる様になった。

加えて今後の自分の身の振り方も考える。


この3ヶ月は死にたい衝動のせいか、生きる努力を怠っていたが、必要最低限の事はしていたと思う。

でも今は死にたい衝動が薄れている。

そのせいか自身の考え方が変わった気がする。

これは以前より気持ちが前を向き始めているからなのか?


新たな問題は妻を忘れてはいないか?

と言う不安がある。

勿論、忘れたくはないし今も妻の布団を摩っては「会いたい、会いたい」と呟く日々なのだが、以前と違い涙が込み上げてこなくなった。

当然だが波があり涙を多く流す日もあるが、その波も頻繁に起きなくなった。

大きなグリーフリバウンドも無く今を生き抜いている。

一見良い兆しの様に見える。


矛盾していると思うかもしれないが、これが意外に寂しいと感じるのだ。

何だか妻を忘れたみたいで悲しくなる。

とは言え人に妻の話をしたり、他者から受ける優しい言葉にはまだ免疫がなく涙が溢れだす。

妻の良き思い出を笑いながら話せるまでが目標なのにまだそれが出来てはいない。


何とも辻褄が合わずアンバランスに思える。

グリーフケア動画の解釈では、グリーフ(悲観性)プロセスの一環らしい。

恋しさと空虚感の狭間にあるこの感情はグリーフの波(感情の揺らぎ)から生じるもので、悲観と完治を繰り返しながら心が現実をうけいれようとする自然の流れらしい。

グリーフの振り子幅が距離を縮めているのか?

観測するにも曖昧過ぎて分からない。


理屈は分かった。

でもこの悲しみはそれはそれで辛い。

こんな気持ちになった私を妻はどう思っているのか、喜んで見てくれるのかな?

それとも恨んでないか?

分からないだけにもどかしい。


ムッチぃこれでいいのかな?

夢に出てきて教えてほしいよ


午前11時

米を研ぎ12時に仕上がる様セットする。

昨日玄米を精米してその際に農協の経営するスーパーで里芋を買った。

今日はそれを使い芋煮を作ろう。

材料はある物で補う。

ネギとしめじはあったが、コンニャクと牛肉が無いので代わりに豚肉を入れた。

水、だし、醤油、みりんを入れ煮立たせる。

さてさてどんな感じになるのやら…


出来た…味を見る。

美味い!

が、ちょっと薄めかな

まぁ毎回しょっぱい私の味付けとしては上出来だと思う。

早速、妻の仏前に並べる。


どうよムッチぃ〜今日は煮物を作ったよ

さぁーお食べよ!


午後0時半

「ムッチぃそろそろいいかな?」

「じゃ〜もらうね」

「ムッチぃいただきます」

テーブルに並べ直し

「いただきます」


うん、美味い!

どちらかと言うと上品な味になった。

でも物によって里芋が少し硬めな気がする。

これだけ熱が入らなかったのか…

「ごめんムッチ、ちょっと硬いのがあったね」

楊枝でぶっ刺して確認したんだけどな

料理は奥が深いね


これが私の日常になるのか…

この世に居ない妻との会話、側から見れば何とも哀れな初老老人の独り言。

あと何年続ければまた昔の様に妻と会話が出来るのか、直ぐにでも話したいのに


こんな生活、20年も続けたくはない。

ちょっとほろっとしながら芋煮を食べる。


午後1時

洗濯物を干し外を眺める。

天気も良く気候も秋らしい風が吹いている。

スクーターで散歩でもしようかな


午後2時

どうせなら妻も一緒に連れて行こう。

最近、百均で購入した小さい額縁に小さい妻の写真を入れて持ち歩いている。

そうだ、妻と歩いた散歩コース巡りでもしようかな

先ずは眺めの良い坂に行く。


家から歩いて15分だが、今の私の足では25分は掛かる距離。

眺めの良い高台の住宅地に坂はある。

以前は畑だったが今は道を隔てた所に家が何軒か建っている。

道路脇にスクーターを停めた。


あぁ久しぶりに来たよ〜

東京スカイツリーが見える眺めの良い場所。

昔はここに入り浸りだったなぁ

早速妻の遺影を掲げて柵の上から妻に見てもらう。


ほらムッチ、久しぶりの高台はどう?

ここは気分がいいよね〜

でもムッチはその気になればもっと高い所から眺められるのかな?


人はそれほど通らないのでブツブツと独り言の様に語り始める。

さて、次へ行こう!

次は調整池の公園で野鳥やトンボなどが見られる所だ。


池に到着。

駐輪場にバイクを停めて歩いてみる。

妻に風景を見させてあげられる様に胸より上に遺影を掲げて一緒に歩く。


ほらムッチぃ〜調整池に来たよ

わぁ〜綺麗だね〜

ムッチ見て、ガマの穂があるよ


人が居ようと居まいと構わず喋る。

ベラベラ喋るので変な人と思われただろう。


ここにはよく弁当片手にお昼に来たね〜

懐かしいなぁ〜

ねぇ見て、あのベンチで一緒に食べたよね


ベンチを見た途端、潤っとする。

当時、2人でお弁当を食べていた美味しく、楽しかった風景が蘇ってくる。

ダメだ…まだ涙ポイントには慣れない。

視線を池に戻す。


池の端に白サギがいた。

妻がよく写真を撮っていた野鳥だが、いつも上手く取れないみたいで妻の写真ストックには彼らは居ない。


この公園、結構広いのを忘れていた。

折り返しで足の限界が来たらしく片足を引き摺りながら歩く。

歩く度に痛みが増す。

妻に話し掛けるが痛みが酷く妻の話に集中出来なくなってきた。


やっとスクーター前に帰って来れた。

少しの間スクーターをベンチ代わりに休んだ。

次来るにしても半分のコースかな

程なくして調整池を後にする。


帰りにスーパーでテッシュ10組入りを買う。

この間買ったばかりだが、もう既に無い。

5組1パックが1週間で無くなった。

涙と鼻水の使用量が半端無い。

でもこうも直ぐ無くなるもんなんだね


どんだけ泣いているだよ

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