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ふわの見つけた場所

朝の商店街には、まだ少し涼しさが残っていた。


夏の朝。


太陽はもう出ているけれど、昼のような強い熱はない。


時計屋の石段で、ガブはいつものように目を開ける。


その隣で、ふわも起きる。


二匹は並んで歩き出す。


いつもの朝の見回り。


八百屋の前。


魚屋の前。


パン屋の前。


毎日の道。


ガブは迷わない。


どこに何があるのか、もう全部知っている。


涼しい場所。


風の通る場所。


人が少ない場所。


雨の日に濡れない場所。


全部、長い時間の中で覚えていた。


ふわは、いつもその後ろを歩いていた。


ガブが止まれば止まる。


ガブが歩けば歩く。


それが自然だった。


でも、夏が来てから少し変わってきた。


暑い日。


影の場所を探す日。


夕方の風を待つ日。


ふわも少しずつ、商店街を覚えていた。


この場所は朝が涼しい。


ここは昼になると暑い。


ここは風が通る。


小さなこと。


でも、少しずつ。


その日の昼前。


ガブがいつものように喫茶ひだまりの横へ向かおうとした時だった。


ふわが立ち止まった。


ガブが振り返る。


ふわは別の方向を見ている。


商店街の端。


古い木の塀の近く。


そこには、小さな影ができていた。


建物と木の間。


風が通る場所。


ふわがゆっくり歩いていく。


ガブは少し見ていた。


それから、あとを追う。


ふわは影の中へ入る。


座る。


じっとする。


涼しい。


風が、塀の隙間から流れてくる。


ふわは目を細める。


気に入ったようだった。


ガブも隣へ座る。


周りを見る。


悪くない場所だった。


昼になると日差しが強くなるけれど、この場所には影が残る。


人もあまり通らない。


静か。


ふわは、また目を閉じる。


ガブは少しだけ耳を動かした。


何も問題ない。


それだけだった。


午後。


子どもたちがやってくる。


「あれ?」


いつもの場所に猫たちがいない。


時計屋の石段。


喫茶ひだまりの前。


見回す。


「いた!」


木の塀の近く。


ふわとガブが並んでいる。


「新しい場所だ」


子どもたちは近づきすぎずに見る。


「ふわが見つけたのかな」


ひとりが言う。


その言葉に、ふわの耳が少し動く。


ガブではなく。


ふわが先に見つけた場所。


子どもたちは少し嬉しそうだった。


「ふわも商店街覚えたんだね」


その声を聞いても、ふわは動かない。


ただ、風を感じている。


夕方になると、ガブは立ち上がる。


いつもの場所へ戻る時間。


でも、ふわは少しだけその影を振り返った。


自分で見つけた場所。


また来てもいい場所。


そんな感じがした。


ガブが歩き出す。


ふわもついていく。


でも、もう少し違う。


前より少しだけ、自分の足で歩いている。


時計屋の石段へ戻る。


いつもの場所。


二匹は並んで座る。


夕方の風が通る。


ふわが目を閉じる。


今日見つけた場所も、明日の朝にはまた行くかもしれない。


商店街には、ひとつ場所が増えた。


野良猫ガブは、今日も何もしない。


ただ、いつもの道を歩いただけだ。


その隣で、ふわは少しだけ自分の道を覚えていく。


夏の日々は、猫たちにも小さな発見を残していた。

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