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夏の昼寝

昼の商店街は、少し眠たそうだった。


朝から続いていた暑さで、人の動きもゆっくりになっている。


八百屋のおばさんは、店先でうちわを動かしていた。

魚屋の大将は、氷の箱にもたれている。


喫茶ひだまりの窓も、今日は半分ほど開いていた。


風を通すためだ。


でも、その風もゆっくりしている。


セミの声だけが元気だった。


じいじい、と通りの上から降ってくる。


時計屋の石段には、もう強い日差しが落ちていた。


そのため、ガブとふわはそこにはいない。


二匹がいるのは、喫茶ひだまりの横の細長い影だった。


建物と建物の間にできる、小さな日陰。


風が少しだけ通る場所。


ガブは体を長く伸ばして寝ている。


いつもの丸い形ではない。


前足も後ろ足も投げ出している。


暑い日の寝方だった。


ふわもその隣で伸びている。


毛がふわふわしているぶん、少し暑そうだ。


ときどき耳が動く。


セミの声に反応しているのかもしれない。


でも、目は開けない。


通りを歩く人も、今日は静かだ。


暑い日は、自然と声が小さくなる。


「寝てるねえ」


八百屋のおばさんが小さく言う。


「昼だからな」


魚屋の大将が返す。


それだけ。


誰も起こさない。


子どもたちも今日は静かだった。


午前中は元気に走っていたけれど、昼になると動きが止まる。


喫茶ひだまりの中で、麦茶を飲んでいる。


「外あつい……」


窓際の席で、ひとりが言う。


「猫も伸びてるし」


みんなで外を見る。


細長い影の中に、二匹の猫。


同じ向きで伸びている。


「ふわ、溶けてるみたい」


小さな笑い声。


でも、声は控えめだ。


昼の空気を壊さないように。


からん。


喫茶店の扉が静かに鳴る。


おじいさんが入ってくる。


帽子を少しあおぎながら、


「今日は暑いな」


と言う。


「ほんとですねえ」


女性が麦茶を出す。


おじいさんは窓の外を見る。


猫たちはまだ寝ている。


ガブはぴくりとも動かない。


ふわは少しだけ前足を動かす。


夢でも見ているようだった。


風がひとつ通る。


ほんの少しだけ涼しい風。


二匹の毛がゆっくり揺れる。


ふわが目を細く開ける。


でも、すぐまた閉じる。


ガブも耳だけ動かす。


眠ったまま。


昼の商店街は、静かに時間が流れていた。


遠くで風鈴が鳴る。


ちりん。


その音が、熱い空気の中をゆっくり転がっていく。


午後になると、影が少し動く。


二匹も少しだけ位置を変える。


でも、起き上がるほどではない。


眠ったまま、影を追うように少しずれる。


子どもたちがそれを見て笑う。


「ちゃんと涼しいとこ行ってる」


「猫ってすごいね」


ふわはまた耳を動かす。


ガブは完全に眠っている。


夕方が近づくころ、ようやく空気が少し軽くなる。


セミの声も、少し遠くなる。


ガブが最初に目を開ける。


ゆっくり起き上がる。


体を伸ばす。


その動きで、ふわも目を開ける。


二匹はしばらくぼんやりしている。


まだ暑さの残る風。


でも、昼よりは過ごしやすい。


やがて、二匹は立ち上がる。


夕方の商店街へ、ゆっくり歩き出す。


野良猫ガブは、今日も何もしない。


ただ、長い昼寝をしていただけだ。


その隣で、ふわも同じ夢を見ていたのかもしれない。


夏の昼は、少し長く、少しゆっくり流れていた。

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