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いつもより多い音

朝から、少し様子が違っていた。


商店街の通りに、人の気配がいつもより早く集まっている。シャッターの開く音も、どこか軽い。


空気が、少しだけ動いている。


時計屋の石段で、ガブは目を開ける。

その隣で、ふわも同じように目を開ける。


二匹は体を起こす。


同じタイミング。


でも今日は、少しだけ周りの音が多い。


遠くで声がする。

物を運ぶ音。

笑い声。


ふわが耳を動かす。


ガブも同じように耳を動かす。


通りを見る。


いつもより人が多い。


まだ朝なのに、すでに動いている人がいる。


八百屋の前では、おばさんが箱を並べている。


「今日は忙しくなるよ」


誰かに言っている。


魚屋の大将も、早くから氷を出している。


がらがら、と音が響く。


ふわは石段から下りる。


ガブも一緒に下りる。


並んで歩き出す。


朝の見回り。


でも、今日は少し違う。


八百屋の前で止まると、すぐ近くで人が動く。


箱を運ぶ音。


声。


ふわは少しだけ立ち止まる時間が短い。


ガブも同じ。


すぐに歩き出す。


魚屋の前でも、同じ。


いつもより早く動く。


邪魔にならないように。


でも、焦っているわけではない。


自然に、そうなる。


パン屋の前では、すでに扉が半分開いている。


中から、はっきりとした匂いが流れてくる。


ふわは少しだけ長く止まる。


ガブも同じ。


鼻を動かす。


それから、また並んで歩く。


通りを一周する。


人の間をすり抜けるように。


でも、ぶつからない。


避けながら、進む。


角を曲がり、細い道へ。


そこはまだ静かだ。


少しだけ足取りがゆっくりになる。


二匹の呼吸も、元に戻る。


そしてまた、元の通りへ戻る。


喫茶ひだまりの前に来る。


今日はすでに扉が開いている。


からん、と音がする。


中では、女性が忙しそうに動いている。


「今日はにぎやかですね」


誰かの声。


ふわとガブはその前で止まる。


座る。


少しだけ周りを見る。


人の動き。


音。


でも、すぐに落ち着く。


いつもの場所だから。


やがて、二匹は石段へ戻る。


上に上がる。


丸くなる。


今日は少しだけ、周りの音が多い。


でも、その中でも、二匹の場所は変わらない。


子どもたちが通る。


「人多いね」


「うん」


猫たちを見る。


「あ、いる」


少し安心したように笑う。


そのまま通り過ぎる。


おじいさんもやってくる。


今日は少しだけ人をよけながら歩く。


ベンチに座る。


猫たちを見る。


変わらない二匹。


少しだけうなずく。


通りはにぎやかだ。


声が増え、音が重なる。


でも、その中に、静かな場所もちゃんとある。


石段の上。


段ボールの家のそば。


喫茶ひだまりの前。


そこには、いつもの空気がある。


午後になっても、にぎやかさは続く。


でも、やがて少しずつ落ち着いていく。


夕方には、またいつもの商店街に戻る。


野良猫ガブは、今日も何もしない。


ただ、少し音の多い一日を過ごしただけだ。


その隣で、ふわも同じように過ごしている。


にぎやかでも、静かでも。


この場所は、変わらずここにある。


商店街は、いろいろな音を抱えながら、やわらかく一日を終えていく。

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