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夜の風

夜の商店街は、昼とはまったく違う顔をしていた。


昼間の強い光は消え、代わりにやわらかな街灯の明かりが通りを照らしている。


地面に落ちる影も、ぼんやりとしている。


昼の暑さがまだ少し残っているけれど、風は涼しい。


ゆっくりと、通りを抜けていく。


時計屋の石段の上で、ガブは体を伸ばしている。


昼とは違って、少しだけ丸くなっている。


その隣で、ふわも同じように丸くなっている。


距離は近い。


昼よりも、少しだけ近い。


夜の空気は、くっついているほうが落ち着く。


商店街の店は、ほとんど閉まっている。


シャッターの下りた店が並ぶ。


その中で、喫茶ひだまりだけが明かりをつけている。


窓から、あたたかい光がこぼれている。


店の中では、女性が静かに片づけをしている。


からん。


扉が鳴る。


おじいさんが出てくる。


今日は、いつもより遅い時間だ。


外に出て、少しだけ立ち止まる。


夜の空気を感じる。


昼とは違う風。


少しだけ肩の力が抜けるような風。


おじいさんは、ゆっくり歩く。


猫たちの方へ。


街灯の光の中に、二匹の影がある。


並んでいる。


おじいさんは、少し手前で止まる。


今日はしゃがまない。


近づきすぎない。


でも、昼よりも自然に近くにいる。


それがもう特別なことではない。


ふわが目を開ける。


夜の目。


静かに光を映す。


おじいさんを見る。


逃げない。


ガブも目を細める。


ほんの少しだけ、おじいさんの方を見る。


それから、また目を閉じる。


おじいさんは何も言わない。


ただ、そこに立っている。


風が通る。


三つの影が、わずかに揺れる。


遠くで、誰かの足音がする。


また静かになる。


夜は音が少ない。


だから、小さなことがよくわかる。


猫の呼吸。

風の音。

布が揺れる音。


おじいさんはゆっくりとベンチへ向かう。


座る。


背もたれに体を預ける。


空を見る。


星は少ない。


でも、ひとつだけ、はっきり見える。


しばらく、そのまま。


猫たちも動かない。


それぞれの場所で、同じ夜を過ごしている。


時間がゆっくり流れる。


喫茶ひだまりの明かりが消える。


通りが少し暗くなる。


街灯だけの光になる。


おじいさんは立ち上がる。


ゆっくり歩き出す。


帰っていく。


振り返らない。


でも、足取りは少しだけ軽い。


ふわは目を開ける。


その背中を見る。


ガブも、ほんの少しだけ目を開ける。


また閉じる。


二匹はそのまま、くっついて眠る。


夜の風が、やわらかく通り抜ける。


昼の暑さを、少しずつ遠くへ運んでいく。


野良猫ガブは、今日も何もしない。


ただ、静かな夜の中で眠っていただけだ。


その隣で、ふわも眠っている。


商店街は、音を立てずに夜を過ごす。


そしてまた、朝が来る。


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