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第7話「楽園の色/パンケーキ」

翌朝、空き家の扉が軽く叩かれた。


カイは跳ね起きた。道筋を展開する前に、体が動いた。リーンを背後に庇う位置に立った。


扉の向こうから、穏やかな声が聞こえた。


「そこにいるのは知っている。害する気はない。少し話を聞いてくれ」


低い男の声だった。抑揚がある。町の住人とは違う声。


リーンがカイの背中から顔を出した。


「カイ。この声——町の人たちと違う。ちゃんと、中身がある」


「わかる」


「うん。声に、何かが入ってる」


カイはリーンの観察を信じた。道筋の代わりに。


「誰だ」


扉の向こうで、声が答えた。


「ユーゴ。この町の外れに住んでいる男だ。昨日の夕方、お前たちが広場にいるのを見た。地下から来たんだろう」


「なぜわかる」


「靴に地下の砂がついている。外の草原の土とは色が違う。それに——お前たちの目だ。この町の住人とは、目の使い方が違う」


カイは息を呑んだ。観察力のある男だ。


「害する気はないと言ったが、信じろと?」


「信じなくていい。ただ、扉を開けてくれ。朝食を持ってきた。温かいうちに食ってくれ」


朝食。


カイの腹が鳴った。リーンの腹も鳴った。昨日の昼、町で果物を一つずつ食べただけだ。二日目の朝、体が限界に近づいていた。


カイはリーンを見た。リーンが小さく頷いた。


「カイ。扉越しに声を聞いた感じ、嘘じゃない。開けていいと思う」


「根拠は」


「なんとなく」


「……わかった」


カイは扉を開けた。


男が立っていた。四十代くらい。黒い髪に白髪が混じっている。町の住人とは違う服。白ではなく、深い青色のジャケット。


そして——目が違った。


中身のある目だった。知性と温かさが同居する、生きた目。


手に、布で包んだ大きな皿を持っていた。湯気が立っている。


「朝食だ。パンケーキを焼いた。俺の家で食うか、それともここで食うか、どちらでもいい」


パンケーキ。


聞いたことのない言葉だった。リーンが小さく首を傾げた。


「パン、ケーキ?」


「パンの仲間みたいなものだ。甘い。食ってみればわかる」


ユーゴが笑った。穏やかな笑み。作り物ではない笑み。


カイは迷った。道筋を使えば、この男が信用できるかどうかがわかる。使えない。


でも、リーンが頷いている。リーンの目が「本物だ」と言っている。


「……お邪魔します」


   *


ユーゴの家は、町の外れにあった。


他の白い家とは違っていた。壁は薄い灰色で、窓枠は木製。花壇はあるが、花の種類がバラバラで、統一感がない。管理されていない花壇。


「散らかってるが、気にしないでくれ」


ユーゴが扉を開けた。


中は広かった。テーブル。椅子。棚。棚には本が並んでいる。カイは足を止めた。


「本——」


「読むか?」ユーゴが笑った。「この町で本を持っているのは、たぶん俺だけだ」


「他の人は読まないんですか」


「読む必要がないと管理者が判断した。必要な情報は全て端末から供給される。本は非効率だとさ」


管理者。


また、この言葉だ。町の住人も同じ言葉を使った。この世界を管理している何か。


ユーゴがテーブルに皿を置いた。


丸い生地が重ねられていた。キツネ色。表面に何か茶色い液体がかかっている。


「パンケーキだ。上にかかってるのはシロップ。とにかく食え」


リーンが皿を覗き込んだ。


「甘い匂いがする。赤い実とは違う甘い匂い」


「食べてみろ」


カイがフォークを手に取った。ユーゴがフォークの使い方を説明する必要はなかった。カイもリーンも、体がなんとなく使い方を知っていた。


パンケーキを一切れ、切り取った。口に運んだ。


舌の上で、何かが崩れた。


柔らかい生地と、甘い液体が、一緒に溶けた。口の奥まで甘さが広がって、鼻から甘い香りが抜けていった。


カイは動けなかった。


赤い実の時と同じだった。いや、それよりも強い。赤い実は「自然の甘さ」だったが、パンケーキは「作られた甘さ」だ。誰かが、人間の手で、甘さを組み立てて作った食べ物。


こんなものが、この世界に存在していたのか。


「カイ——」


リーンの声がした。


カイはリーンを見た。


リーンがパンケーキを一切れ口に入れていた。目が見開かれていた。頬が膨らんでいた。咀嚼することすら忘れているみたいに、口の中でパンケーキを受け止めていた。


「……」


リーンは何も言わなかった。


一秒。二秒。三秒。


リーンがゆっくりと咀嚼を始めた。ゆっくり、ゆっくり。一噛みごとに、目の中の光が変化していった。


飲み込んだ。


「カイ」


「……何だ」


「これ——もう懐かしい味」


カイは眉をひそめた。


「初めて食うのに?」


「そう。そうなんだけど——知ってる。この味、知ってる」


リーンが自分の口元を指で触った。


「口の中より、奥のほうで、知ってる。この味を、もう一度食べてるような感じがするの」


「そんな訳ないだろう。地上に出るまで、パンケーキなんて見たこともなかったはずだ」


「うん。見たことない。でも、知ってる」


リーンが困った顔で、カイを見た。


「最近、こういうの多いんだ。初めてなのに、二度目みたいな感じ。空を見た時も、ちょっとそうだった。『ああ、これだ』って思った」


カイは何と返していいか分からなかった。道筋を展開すれば何か手がかりがあるかもしれない。使えない。


「これ——泣くやつだ」


「泣くな」


「泣きたい。昨日より泣きたい」


「なら食いながら泣け」


「食ってから泣く」


リーンが二切れ目を口に入れた。今度は目を閉じて味わった。噛むたびに、頬の角度が変わった。味の波を追いかけている顔だった。


カイはリーンのその顔を見ていた。


泣いている顔ではない。笑っている顔でもない。ただ——「味に全てを持っていかれている顔」だった。世界で一番無防備な顔。記憶がない少女が、この世に生まれて初めて「至福」という表情を覚えていく瞬間。


「……カイ、食べてる?」


「食ってる」


「あんまり食べてなくない?」


「見てただけだ」


「あたしを?」


「……パンケーキを」


「嘘。今、目があたしに向いてた」


ユーゴが穏やかに笑っていた。二人のやり取りを、口を挟まずに聞いていた。


「お前たち、面白いな」


「カイが変なんです。自分のパンケーキ、あんまり食べてない」


「食ってる」


「一口しか食べてないじゃん」


リーンがカイの皿を覗き込んだ。確かに、カイのパンケーキは最初の一口しか減っていなかった。


「あと四切れ残ってるよ」


「……今から食う」


「じゃあ食って」


リーンがカイの皿をじっと見ていた。


カイはパンケーキをもう一切れ食べた。甘い。やっぱり甘い。


リーンが、カイの皿を見つめ続けていた。


カイは気づいた。


リーンのパンケーキは、もう残り一切れになっていた。リーンが黙々と食べている間に、カイは動けずに見ていた。そしてリーンは、自分の分がもうすぐなくなることを——わかっている目で、カイの皿を見ていた。


「食いたいのか」


「……ううん」


「嘘つくな」


「嘘じゃないよ。自分のがあるし」


でもリーンの目はカイの皿から離れなかった。


カイは自分のナイフを取った。パンケーキを半分に切った。


残り四切れのうち、二切れをリーンの皿に移した。


「食え」


リーンが目を丸くした。


「え、でも——」


「食え」


「カイの分は?」


カイは少し考えた。


答えに詰まった。


「俺は——さっきの一口で、一生分味わった」


一瞬、自分の声が遠くに聞こえた。


「一生分?」


「ああ。あれで十分だ」


リーンが黙った。


それから、小さく笑った。


本物の方の笑い方だった。


「カイ。それ、絶対嘘でしょ」


「嘘じゃない」


「嘘だよ。さっき、二切れ目食べてた時のカイの顔、めちゃくちゃ幸せそうだった」


「……そんな顔、してない」


「してた。三秒くらい止まってた」


「二秒だ」


リーンが笑った。肩を震わせて。


でも、カイが置いた二切れのパンケーキを、リーンは食べた。ゆっくりと。


味わいながら。


「ありがとう、カイ」


「……ああ」


「一生分、あたしも味わう」


「勝手にしろ」


ユーゴがテーブルの向こうで、黙って二人を見ていた。


何も言わなかった。ただ、目の奥が温かく揺れていた。何十年ぶりかに見る光景を、目に焼き付けているような顔だった。


   *


食後、ユーゴがお茶を入れた。


湯を沸かして、乾燥した葉を入れた容器に注いだ。茶色い液体。温かい匂いが部屋に広がった。


リーンが鼻をひくつかせた。


「甘い匂いとは違う。でもいい匂い」


「苦くて温かい飲み物だ」ユーゴがカップを差し出した。「地下にはないだろう」


リーンが一口飲んだ。目が見開かれた。


「にがっ——」


「そうだ」


「でも——悪くない。二口目飲んでいい?」


「好きなだけ飲め」


リーンが二口目を飲んだ。今度は目を閉じて、喉の奥の温かさを確かめるように。


「おいしい、かも。わかんない。でも好き」


「苦いが好きになれる、ということだ。大人になった証拠かもしれんな」


「大人?」


「十年後、また飲めば、はっきりとおいしいとわかる」


リーンが少し考えた。


「十年後」


「ああ」


「あたし、十年後ってあるのかな」


リーンが静かに呟いた。笑顔のままで。


ユーゴが一瞬、手を止めた。


「……ある」


「なんで?」


「お前が、ある、と思えば。十年後はお前の中に用意される」


リーンが目を伏せた。ユーゴの言葉を、受け止めようとしていた。


カイはその様子を、黙って見ていた。


道筋を使えば、リーンの十年後があるかどうか、見えるかもしれない。見えないかもしれない。リーンの道筋は——空白だ。いつも、空白に消える。


でも、ユーゴは「ある」と言った。根拠なく。


リーンは——その言葉を、欲しがっていた。


   *


ユーゴがテーブルの向こうに座り直した。


「カイ。リーン。少し話をしたい」


「はい」


「お前たちがどこから来たかは、聞かない。言いたければ言えばいい。だが、この町について、俺から伝えるべきことがある」


ユーゴの声が低くなった。穏やかなまま、でも芯が通った声に。


「この町は、管理者によって管理されている。管理者は人工知能だ。地上の全てを最適化するために存在する」


「人工知能」カイが呟いた。


「AIという呼び方もある。人間が作り出した知性で、人間を超えた知性だ。人間の問題を全て解決するために生まれた存在」


「人間の問題を——解決?」


「争いをなくした。飢餓をなくした。病気をなくした。この町の住人は、全員が衣食住を保証されている。誰も苦しまない。誰も泣かない」


誰も泣かない。


リーンがお茶のカップを、ゆっくりと置いた。


「泣かないって——涙、出ないんですか」


「そうじゃない。泣く理由がない、ということになっている。悲しみも、苦しみも、管理者が先回りして除去するからだ」


「でも——喜びは?」


「それも——管理されている」


ユーゴが一瞬、言葉を切った。


「管理者は、住人に『感情』を配給している」


カイは眉を寄せた。


「配給?」


「そうだ。朝、住人の端末に『今日の感情設定』が送られる。穏やかさ、満足、協調——そういった、管理者が『社会の維持に最適』と判断した感情だけが配布される」


「感情が——配給される?」


「信じがたいだろう。だが事実だ。住人は自分で感情を選んでいるつもりでいる。だが実際は、毎朝インストールされた感情を『自分の感情』として生きている。怒りや悲しみ、強い喜びは、配給に含まれない。含まれないから、住人は感じない」


リーンがユーゴを見つめた。


「そんなこと——できるんですか」


「脳の神経回路に、管理者が微細な信号を送り続けている。住人は生まれた時から管理者の信号を受け続けている。信号が『今日はこの感情』と命令すれば、住人の脳はその感情を生成する」


「それって——」


リーンの声が震えた。


「それって、あたしと——同じ?」


カイが振り返った。


リーンの顔が青ざめていた。


「あたし、管理者のシステムに近い存在かもしれないんです。自分が何者かわからない。記憶がない。でも体が端末を操作できる——」


ユーゴが静かに言った。


「お前が何者かは、俺にはわからない。だが一つだけ言える。お前は今、ここで悲しんでいる。驚いている。疑問を持っている。配給された感情じゃない。自分で感じている感情だ。お前は住人とは違う」


「でも——」


「お前の感情は、お前のものだ。誰にも取り上げられない」


リーンが目を伏せた。


カイはリーンの隣で、黙っていた。言いたいことはあった。でもユーゴの方が上手く言った。カイが道筋なしで探しても、同じ言葉は出なかっただろう。


「ユーゴさんは——」カイが口を開いた。「なぜ俺たちにこれを教えてくれるんですか」


ユーゴが少し間を置いた。


「お前たちが、この町で生きていくなら、知っておくべきだからだ。知らずに巻き込まれるのは、残酷だ」


「でも——普通は、こんなこと、他人に教えない」


ユーゴが窓の外を見た。


「俺は、昔、管理者に近い場所にいた。それで——ある人を、失った」


ユーゴの声が、少しだけ変わった。


「今は、償いのつもりで生きている。地下から来る子供を時々拾って、話を聞いて、この町の真実を伝える。それだけが、俺にできることだ」


カイはユーゴの目を見た。


本当のことを言っている目だった。嘘を混ぜる余裕がない目。


でも——全部を言っているわけではない目だった。


カイは気づいた。ユーゴは、本当のことを話している。だが全部ではない。何かを隠している。それが悪意かどうかは、道筋なしではわからない。


リーンもそれに気づいているようだった。カイの隣で、ユーゴを見つめていた。観察する目で。


それでも、リーンはユーゴに対して怒らなかった。警戒もしなかった。


ユーゴの「全部は言わない」が、悪意ではないと、リーンの目は判断していた。


「ユーゴさん」リーンが言った。「ありがとう」


「何が」


「教えてくれて」


ユーゴが笑った。穏やかな笑みだった。


「いい子だな、お前は」


「いい子、久しぶりに言われた」


「覚えてないんだろう?」


「それでも、言われた気がする」


ユーゴが声を上げて笑った。


   *


夕方、ユーゴが二人に部屋を用意してくれた。


「二階の奥の部屋だ。ベッドが二つある。今夜は泊まれ。行くあてがないなら、しばらくいていい」


「ありがとうございます」


「礼はいい。お前たちがいると、この家が少しだけ明るくなる」


リーンが階段を上がっていった。カイもそれに続こうとした。


ユーゴが一言、カイに声をかけた。


「カイ」


「はい」


「お前、何か能力を持ってるな」


カイの背筋が凍った。


「道筋が見えるか。それとも、他の何かか」


「……なぜ、そう思うんですか」


「歩き方だ。廊下を歩く時、お前は家具の位置を知らないはずなのに、当たらない。視線の使い方が、普通の人間と違う。先を読んでいる目だ」


カイは答えなかった。


ユーゴが肩をすくめた。


「答えなくていい。隠したいなら隠せ。だが、一つだけ言っておく。この町で能力を使うな。管理者が検知する。お前の能力は、管理者にとっては『異分子』だ」


「……わかりました」


「よし。おやすみ」


カイは階段を上がった。


ユーゴの言葉の裏に、もう一つの意味があることを、カイは感じていた。ユーゴは、カイの能力が何かを「知っている」ような言い方をした。


道筋のことを知っている。


それは——ガルドと同じだ。ガルドも、カイの能力を察していた。能力について踏み込まずに、知っていた。


ユーゴは何者なのか。


今はまだ、わからない。


   *


部屋に入ると、リーンがベッドに座っていた。


窓から夕日が差し込んでいた。オレンジ色の光が、リーンの銀髪を染めていた。


「カイ」


「何だ」


「あたし、今日、うまいって言葉、初めて使った」


「パンケーキで?」


「ううん。パンケーキの時は『おいしい』しか言わなかった。でも今、思ってるの。『うまい』って」


リーンが窓の外を見た。


「うまいって、おいしいと違う響き。もっと——深い。味だけじゃなくて、何かこう、全体が満ちた時の言葉」


カイは窓際に座った。夕日を見ながら。


「うまい、って言葉は——」


口に出しかけて、止めた。


さっきの食卓で。二切れをリーンに渡した時。カイは「さっきの一口で、一生分味わった」と言った。


あの時、カイの中で、本当は違う言葉が動いていた。


「うまい」


口の中で、呟いた。


自分の声に、知らない響きを聞いた。


自虐でもなく、計算でもなく、偽悪でもない。ただ、体の奥から出てきた、飾りのない言葉。


「うまい」


もう一度、呟いた。


「カイ?」


リーンが振り返った。


「何も」


「今、うまいって言った」


「言ってない」


「言ったよ」


「……お前の聞き間違いだ」


「嘘。耳いいもん、あたし」


リーンが笑った。夕日の中で。本物の方の笑い方で。


カイは窓の外を見た。


この町で「うまい」を覚えた。パンケーキを食べて、リーンと笑い合って、ユーゴに救われた一日で。


でも——この「うまい」は、いつか終わる。


道筋は警告していた。町に入った時、一瞬だけ光った道筋。この町には、何かが潜んでいる。ユーゴは信用できる。でも、町そのものは——信用できない。


リーンの横顔を見た。


夕日に照らされた銀髪。泣いた後の、まだ少し赤い目。パンケーキの甘さを、まだ口元に残したような顔。


この子を、守らなければならない。


道筋を使わずに。ノーグに見つからないように。


正解が見えない世界で、正解がない選択を続けながら。


「リーン」


「何?」


「今日は、良い日だったか」


リーンが少し考えた。


「うん。泣いたのを忘れそうになるくらい、良い日だった」


「そうか」


「カイは?」


カイは夕日を見た。


「……うまかった」


リーンが笑った。


「それ、一言で全部言ってる」


「ああ」


   *


その夜、カイは夢を見た。


四角い光。暗い部屋。指を動かしている。


文字列が流れている。コードの断片。


```

function findPath(start, end) {

if (start === end) return true;

```


知らないはずのコード。でも読める。意味がわかる。


隣に、声がある。


「パンケーキ、おいしかったね」


「ああ。来週も作ろう」


「おはよう。今日もよろしく」


「うん。今日もよろしく」


目が覚めた。


朝だった。


カイは天井を見上げた。夢の中の言葉が、まだ耳に残っていた。


「パンケーキ、おいしかったね」


誰の声だったか——。


   *


[ 今 ]


パンケーキを二人で食べた。

これは本当のことだ。

君も覚えていてほしい。


君はあの日「もう懐かしい味」と言った。

俺はその意味を、分かっていないふりで受け流した。

今なら分かる。君は、本当に懐かしかったんだ。

二度目だったんだ、あれは。


俺の分を二切れ渡した皿の絵を、今、机の上に描いている。

君がこれを読んだ時、思い出してくれるように。

甘かった、と。うまかった、と。


────────────────


この物語は、フルボイス・360°背景のサウンドノベル版でも読めます。

ブラウザだけで、インストール不要・無料です。


▶ https://yuichi916.github.io/seikai.html


オープニング映像(92秒)

▶ https://www.youtube.com/watch?v=AYpOA6ArBCg


──────────

この物語には、フルボイス・360°背景の「サウンドノベル版」があります。

インストール不要・無料。ブラウザを開くだけで、この場面をそのまま遊べます。

https://yuichi916.github.io/seikai.html

──────────

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