06 やめて、怖い!
「ええと、人間の進歩に合わせた学びと、『回収』の手段を変える算段はこれでいいとして」
あと、何か指摘しておくことあったかな? 俺は頭を働かせた。
人間が進歩する。魔族は学ぶ。人間がいくら「生産」しても「消費」してバランスが整うように……あ。
「そうだ、調整はできるようにしてくれ。闇雲に『消費』を強めるだけだと、人間側にでかい災害とかがあって生産力が落ちたとき、均衡が崩れるよな」
自然災害とか、世界的な疫病が発生したりとか……あるからなあ。
「そんなときは『消費』も抑えられるようにしてくれ。でないと共倒れなんだろ?」
「その通りだ」
シュヴァルツは真剣にうなずいてる。やめて、イケメン顔。
「我々は光を好まないが、それでも全く存在しなくなることは望まない。わずかに反射する程度がちょうどよいのでな」
レナが顔をしかめた。ん?
もしかして、戦わなさそうな展開が気に入らない……? 魔王を倒す勇者を支えるのが使命って話だもんな、そうか、どうしよう……。
あの、やっぱ戦う?
もしレナが望むなら、俺は全然やるけど。
「『ふたつの世界は表裏一体』『光を発する存在と受け取る存在』……教義とかぶるのがどうも気にかかるんだけれど……まさか二神というのは二世界のことを表していたりしないかしら……?」
渋い顔でレナが口を開いた。
え!
あ、言われてみればほんとだ!
太陽の「動」、月の「静」。人間界、魔界、とも取れる。え、まじで?
「ああ、そうしたことを聞いたことはある」
あっさりシュヴァルツは答えた。は!?
「ユウオ、どうだ?」
シュヴァルツは、長らく沈黙を保ってる――たぶん、苦じゃない――背後のユウオに突然話題を振った。
「――……」
「聞こえん!」
ユウオの呟きボイスはこれだけ離れると全く聞こえない。シュヴァルツみたいに耳元まで届けたりは……まあ、得意じゃないのかな。
「似てる、思う。ぼくが火炎強い、人間の血」
「おおう」
耳元に届いた。シュヴァルツが軽く指を動かしてる。
やってくれたの? 万能なの? その上、親切なの?
【ユウオの言葉は、彼が炎使いとして優秀である理由が人の血を引いているからだ、と伝えていた。】
あ、そういうことか。確かに、だから派遣されたんだもんな。
ん?……じゃあ、まさか。
「その理屈だと、月神の力を強力に振るえる者は魔物の血を引いているということになるのかしら」
レナが全くフラットに――ショックも怒りも動揺もなさそうに言うので、むしろ俺の心臓がきゅっとした。
ジャレットも不安そうにしてて……と、レナがこっちを見た。
「何て顔してるのよ。仮にそうだったとしても何も変わらないでしょ」
「もちろんだ」
俺は即答した。
それはそう! レナは可愛いしかっこいいし頼りになって可愛い俺の聖女様!
「何があってもレナはレナ。俺の、誰より大事な、仲間だ」
「有難う」
レナはやっぱりフラットに返してきて……すっと目を逸らした? 何? ちょっと恥ずかしい台詞だった? そ、それはそう。
「……鈍感主人公」
ぼそりとジャレット。
「ちっ、ちが!」
違う! レナが俺の言葉に照れて俺がそれに気づかなかったとか、恋心のために「仲間」という表現に少し傷ついたとか、そういうことでは断じてない! だってレナとは、そういうんじゃなくて!
【レナの気持ちはこうだ。】
待って! 解説入る? やめて、怖い!
【彼女は魔王を倒す勇者を支える者として、ここまでやってきた。】
あ……うん、それは俺も思ってて。
【しかし、魔王シュヴァルツと戦い、それを退治するという流れになりそうもないこと、彼女ももはや理解している。】
うん。
【それはかまわない。本質は、魔王による破壊をなくすことであって、退治そのものではない。そのこともまたよく判っている。】
……うん。
【だが――アーサーが「帰る」とは?】
……うん?
【いなくなる。彼女の前から。「この世界」から? 理解はできる。同時に理解できない。人生をずっと共にしたも同然の彼と、もう会えなくなる?】
待って待って!
急にロマンス方面行こうとしてる!? てか、人生は言い過ぎ! 一年弱だよ!?




