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敵は魔王より『地の文』だって?~勇者アーサーの不本意な戦い~  作者: 一枝 唯
第13話 『地の文』が強引にまとめていく

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07 結論をひとつ

【しかし、レナは気づいた。アーサーはずっと帰るつもりでいたのだと。アーサーはずっと距離を保ってきた。それは、彼が「帰る」からだったのだ。】


 距離!? 俺、距離あった!? そりゃレナに変な噂が立たないように、「勇者の女」に見えないようにはしてたよ!?

 え、それってレナを傷つけてた? いや、レナが「アーサー」を恋愛的に好きとかそういう意味ではなく、純粋に友だちとして!


【一方で彼女には、「帰る」場所がない。それが少しだけ、寂しいのかもしれなかった。】


 ……え?

 俺は血の気が引く感じがした。


 レナは……帰る場所がないの?


 ずっと神殿暮らしで修行してたって聞いてる。それは「神殿がレナの居場所だ」ということだと思ってたけど、違うってこと……?


 家族のこととかは、俺と同じで全然話さなくて。彼女のことだけ一方的に聞くのも何だか違うし、俺からも尋ねたりはしなかった。

 神様や神話については楽しそうに話すし、無理に神女をやってるみたいなことはないと思うんだけど……そこは帰りたい場所ではない、の?


「――レナ」

「何?」


 いつもの温度だ。何か感傷的な思いを抱えてる様子なんてない。

 『地の文』の暴走? あいつが勝手なことを言ってるだけなのか? 

 それとも、レナはずっとこうやって……気持ちを隠してた?


「ひとまず誤解のないように伝えるが、癒しの術はもともと人の子の得意とするものだ。むしろ魔族にとっては危険なものとなることは承知では?」


 シュヴァルツが遠慮がちに口を挟んできた。そうだよね! どうも有難うね!


「まあ、火炎術や風術も、人間にとって危険ではあるんだが……魔族が癒される訳じゃないから、やっぱり違うな」


 ジャレットが相違点をまとめた。


「太陽が人間界であるなら、その光が魔界に届き、跳ねた分が月だ。それを正確に拾えるのであれば、むしろ鋭敏な人間だと言えるだろう」


 丁寧にレナの人間証明をしてくれる。やだ、シュヴァルツのこと好きになっちゃう。


「それから気にかけている二神の件だが、『そうした解釈も可能』というだけに過ぎない。動と静、主と従、陽と陰、光と影、そうした対比はいくらでも見つけ出すことができる。『説が立てられる』程度の話を安易に断定することは、私は勧めない」


 何だよ、理性的かよ……。

 ――ほんと、音を立ててなくなっていくよな。魔王と戦う理由が。


「ひとまず、結論をひとつ出そうと思う」


 俺は心を決めた。ひとつね。 


「戦うのは、なし!」


 断言してやった。『地の文』はもしかしたら困る? そんなことないか、むしろバトルやらない方面に振ってたもんな。


【アーサーは改めて宣言した。ここまで話をまとめて、今更戦いになるはずもなかったが。】


 それはそうだけどさ! はっきりさせといた方がいいことってあるでしょ!


 だいたい、どうする? お前の「勇者アーサーの戦い」の、「魔王を倒す物語!」って部分。……まあ、どうにかしなよ。


「いいだろう。ならば剣を抜け」

「おい!?」


 急にシュヴァルツが好戦的になったかと思って俺は突っ込んだが、魔王は相変わらず気怠そうな姿勢のまま、ただ手招きをしている。


「こっちに貸せ。渡した指輪もだ。認証鍵だと言っているだろう。承認してやる」

「……えっと」

「剣はお前自身の、指輪は私の認証に使う」

「えっと、指輪は返すつもりだったけど、渡す理由を聞きたかったんじゃなくて」

「返す必要はない。お前にやった。いまだけ渡せ」

「いや要らないけど……」


【ラクエイがいれば「不敬!」と叫んだだろう。】


「こうなるとお前が剣の力を使わずにここまでやってきたのはよい判断だった。消耗すれば再び力を満たす時間が入り用だったろう」

「はあ……」


 俺は『地の文』の一言にも魔王の解説にも鈍い反応しか返せずにいた。


「何を迷う?」

「それは……」

「帰りたいのだろう?」

「……いま?」


 待って待って待って。まだ決まってない。

 え、あれ?「決まってない」って何? 帰るのやめるかもってこと? 待って、また繰り返しちゃう。

 「魔王を倒す」「帰る」は既定ルートだったはずなのに「倒さなくていい」「帰るも帰らないも自由」ってなって呆然としてる間に、もう決断しろって?


「……アーサー」

「アーサー、後のことは任せな」


 レナが何か言いかけたところにジャレットがかぶせる。善意で。


「これまで最高に楽しかった。俺を仲間にしてくれて本当に有難うな!」

「あ、ああ、こっちこそ。お前の風術にどれだけ助けられたか」


 ジャレットの百パー善意によるまじ「いいヤツ」の台詞に俺は返事をしたが、え、これ、俺帰るの? いま?


「ふむ、そうか。『別れの時間』が要るのだったな」


 俺の困惑を読み取ってシュヴァルツが口を挟んできた。

 それもオカさんに教わった?


「部屋を貸そう。ユウオ、食堂に案内してやれ」


 食堂!? 魔王城の食堂!?


「ジュイム向けのものを出すよう、ハルギにも言っておけ」


 知らん名前がきた。……料理人とか?

 「ジュイム向けじゃない」ものを想像すると怖いんだが。


「お気遣いなく……でも場所だけ借りていいか?」


 俺は嘆息して、時間をもらうことにした。


 いったいどういう展開なの?

 ちゃんと片がつくんだろうな、この話!


[第14話・最終話 『地の文』の考える「終わり」]へつづく


魔王退治は結局ないまま――別れの時間?

果たしてアーサーと、そして『地の文』が決める結末は。


続きが気になっていただけましたら、リアクション、最新エピソード画面下の【☆☆☆☆☆】評価、ブックマーク等から、応援をよろしくお願いいたします。


次回より第14話・最終話


『地の文』の考える「終わり」


お楽しみに!

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